■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

セレナーデ 第5番 ニ長調

K204(213a)

 この作品はヴァイオリン協奏曲の年である1775年の夏に〈フィナール・ムジーク〉(K185(167a)参照)として作曲された。モーツァルトは1773年から76年まで毎夏、ひとつのセレナーデを作曲しているが、これらはちょうど〈フィナール・ムジーク〉を演奏する時期、すなわち大学の学年末と一致している。この作品は哲学部の論理学の学位取得祭のために書かれたものと考えられる。K203(189b)と同様、ヴァイオリン・ソロを加えたコンチェルタントな要素の強い作品である。なおこの傾向は翌年のバロック協奏曲風のセレナーデにおいてさらに強められることになる。当時の目録の中にはこの作品を「シンフォニア」として記載してあるものもあり、モーツァルト自身も父宛の手紙の中で「次のシンフォニアを出来るだけ早く送って下さい」と述べて第1楽章冒頭を書き加えている。したがって室内でのシンフォニア用に縮小される場合は第1、5、6、7楽章が抜粋されたであろう。
作曲の時期 1775年8月5日。行進曲については同年8月ということだけがわかっている。
初演 不明。1775年8月9日の練習が伝えられている。
基本資料の所在 「セレナーデ」はスイス、個人所蔵。「行進曲」はパリ、フランス研究所図書館。いずれも自筆譜。
出版 新モーツァルト全集第4篇、第12作品群、第3巻。
演奏時間 39分。
楽器編成 K203(189b)に同じ

 セレナーデはメヌエット2つの7楽章構成、第2、第3楽章が属調、第5楽章が下属調、それに第4楽章メヌエットのトリオが属調であることをも合せると、ヴァイオリン・ソロが加わる楽章は属調をとっていることになる。このヴァイオリン・ソロと属調との関係は、K185(167a)、K203(189b)のメディアンテ調とのそれと同じであり、いずれも協奏曲として抜粋されている。
第1楽章 アレグロ・アッサイ ニ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ・モデラート イ長調 4分の3拍子。
第3楽章 アレグロ イ長調 2分の2拍子。行進曲風の勇壮な楽章。
第4楽章 メヌエット ニ長調、トリオ イ長調 4分の3拍子。
第5楽章 アンダンテ ト長調 4分の2拍子。この楽章の主題は「交響曲」K95(73n)のそれと類似していることが指摘される。
第6楽章 メヌエット ニ長調、トリオ ト長調 4分の3拍子。
第7楽章 アンダンティーノ・グラツィオーソ ニ長調 4分の2拍子。アレグロ ニ長調 8分の3拍子。優雅な物腰のアンダンティーノ部分と活発な早い三拍子のアレグロ部分が交替しながら、全体としては三部分形式をとる。