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弦楽四重奏曲 第13番 ニ短調

K173

 〈ウィーン四重奏曲〉の第6曲。後年の傑作K421と同じくニ短調で書かれており、初期四重奏曲中ただ1曲の短調作品として、またモーツァルトの個性が統一的な表現に達している作品として、一連の四重奏曲のなかでも最も高く評価されている。アーベルトは、この作品の優れた特質を、調性と関連づけて次のように説明している。「ニ短調の四重奏曲は、この『ドン・ジョヴァンニ』の調の性格のすべてを発揮している。すなわち、憂鬱、宿命論的な忍従、闘争的で陰鬱なかたくなさを」。
 このようなパトス的作品が書かれた背景としては、1770年の前後数年間、ウィーンを中心に展開された音楽上の〈シュトゥルム・ウント・ドランク〉の影響がまずあげられるが、〈ミラノ四重奏曲〉のいくつかの緩徐楽章、とくに第5曲K159のト短調のアレグロが示しているように、少年期を脱して青年期に入ったモーツァルトの内面に、そうした表現への要求が高まっていたことも忘れてはならないだろう。
作曲年代 1773年9月、ウィーンにて。自筆譜には月日が記入されていないが、K172と同じ理由で9月と推定される。
基本資料の所在 自筆譜はベルリン国立図書館所蔵。ほかに第4楽章の草稿がロンドンの大英図書館に残されている。
出版 〔初版〕1792年、ウィーンのアルタリア社より(ただし、第3、第4楽章を省き、K155のフィナーレを転用した3楽章作品として)。〔全集〕旧モーツァルト全集第14篇、第13番。新モーツァルト全集第8篇、第20作品群、第1部門、第1巻。
演奏時間 約16分。

第1楽章 アレグロ・マ・モルト・モデラート(レオポルトによる) ニ短調 2分の2拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ・グラツィオーソ ニ長調 4分の2拍子。
第3楽章 メヌエット ニ短調 4分の3拍子。
第4楽章 アレグロ ニ短調 4分の4拍子。半音下行の主題によるフーガ・フィナーレ。