■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

モテト「踊れ、喜べ、幸いな魂よ」

K165(158a)

 オベラ・セリア「ルチオ・シッラ」上演のために、三たび訪れたイタリアのミラノ滞在中に作曲、初演されたもの。「ルチオ・シッラ」のチェチーリオ役をつとめたカストラート歌手、ヴェナンツィオ・ラウッツィーニを独唱者に想定して書かれたため、作曲の際にモーツァルトの念頭にあったのは、そのラウッツィーニの声のサイズなのであり、それに合わせて仕立てられた一種の機会音楽ともみなされる。計3回、およそ22ヵ月にわたってイタリア各地に滞在中、モーツァルトはオーストリアに比してかなり「非教会性」を鮮明にした世俗寄りのオペラ風な教会音楽をまのあたりにしていた。この曲の場合も、宗教的なのはラテン語のテクストのみで、全体は声の華やかな動きをきわだたせ、オペラ的な趣をそなえているが、外形上からすれば、ふたつのアリアとふたつのレチタティーヴォよりなり、アレルヤで終るという当時のモテトの定義(クヴァンツ「フルート奏法」、荒川恒子訳、286ページ)にもとるものではない(ただしここではレチタティーヴォはひとつ)。しかし、短くあくまで推移的な役割にとどまっているレチタティーヴォを無視すれば急・緩・急となるその楽章の組立ては、当時のオペラのシンフォニアあるいは交響曲、さらには声のためのコンチェルトとしての性格をいっそう強く印象づけている。
作曲の時期 1773年1月16日以前、ミラノ。
初演 1773年1月17日、ミラノのテアチノ教会にて。
基本資料の所在 〔自筆譜〕ベルリン国立図書館。〔全集〕新モーツァルト全集第1篇、第3巻。
演奏時間 約17分。
編成 独唱ソプラノ。オーボエ2、ホルン2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、オルガン。

第1楽章 アレグロ ヘ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ イ長調 4分の3拍子。
第3楽章 アレグロ ヘ長調 4分の2拍子。独立してもしばしば歌われる名高い「アレルヤ」である。
〔歌詞大意〕踊れ、歓呼せよ、幸いなる魂よ。天も応えてともに歌う(第1楽章)。雲も嵐も暗き夜も去って、陽は輝き暁が訪れた。恐れず起きよ、喜ばしき者よ(レチタティーヴォ)。純潔の玉冠たる汝よ、われらに平安と望みを与えよ(第2楽章)。アレルヤ(第3楽章)。