■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

ディヴェルティメント ニ長調

K136(125a)

 モーツァルトの機会音楽は、その成立の時期から考えて、およそ5つの時期に分けることができるが、そのうち、1771年の末から1774年の暮までの3年間をすなわち彼の15歳から18歳までを第2期といってさしつかえない。この時期はモーツァルトが第2回目のイタリア旅行からもどって、しばらくの間故郷ザルツブルクに落ちつき、作曲に耽った時であり、そして引き続いて第3回のイタリア旅行を企てた時代でもあった。イタリアで受けとったさまざまな影響、あるいはザルツブルクの音楽の感化がモーツァルトを動かしていたことは確かで、機会音楽の面でもこの時期は彼にとって、いわば豊かな実験的時期ともいえるものであった。
 こういった時期のさなかである1772年の初め、モーツァルトは、続けて3曲のディヴェルティメントを作曲した。それがこのニ長調K136(125a)の作品を始めとして、他に変ロ長調K137(125b)およびへ長調K138(125c)の3曲である。ところでこの3曲の楽器編成はヴァイオリン2、ヴィオラ1、およびチェロ1にコントラバス1という、弦楽の五重奏の編成であり、当時の他のディヴェルティメントとは管を用いていないこと、あるいは楽章数(3楽章)、の点で異なっている。ディヴェルティメントと自筆譜の標題にはうたわれているケッヒェル=アインシュタインのカタログ(第3版)によると、少なくともニ長調とへ長調の作品は、管楽器を使用しないイタリア式序曲といったほうが適当であるとしているが、各楽器の扱い方、アーティキュレーションなどから判断して独奏的な性格がむしろ強いといえよう。一般にこの頃の楽曲の名称はなんら確定したものではなかった。特に2人のハイドン、ヨーゼフとミヒャエルの作品では、四重奏曲にディヴェルティメントという名称が与えられていたし、なかんずくミヒャエルではほとんどすべての室内楽曲がディヴェルティメントあるいはノットゥルノといわれたのであった。
 このニ長調をはじめとする3曲は形式の点でミヒャエルのノットゥルノに近いものであるが、他方発想の点ではイタリアの序曲や四重奏曲との関係も、はっきり窺えるといった作品である。第1ヴァイオリンが主導的な役割を演じている点や展開部の書法など、モーツァルトがザルツブルクのミヒャエルに学ぶところがあったのは明らかである。また、この曲はモーツァルトが先立って書いた4手のための「ピアノ・ソナタ」ニ長調K38(123a)と多くの点で共通したものをもっていることが指摘されている。
作曲の時期 前述のように1772年のはじめの数ヶ月と考えられるが、1月から2月の間と推定している。最近の自筆稿研究(W・プラート)では、ザルツブルクで作曲された。
基本資料の所在 南ドイツのさる個人所有。
演奏時間 約12分。
楽器編成 ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。

第1楽章 アレグロ 変ホ長調 アレグロ ニ長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ ト長調 4分の3拍子。イタリア的な楽章で、深いものではないが、よくまとまっている。
第3楽章 プレスト ニ長調 4分の2拍子。プレストのロンド的なリズムで一貫している。いわばミヒャエル・ハイドン的な楽章といえよう。