■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

交響曲 第13番 ヘ長調

K112

 1年以上にもわたる第1回イタリア旅行は、モーツァルトの芸術上での成長に大きな影響を与えた。イタリア・オペラとの直接の接触、サンマルティーニ、ボッケリーニ(1743-1805)らの器楽作品からの影響、さらにマルティーニによる作曲の基礎である対位法を徹底的に教えこまれたのである。そして故郷ザルツブルクヘの短い帰還の後、再び1771年8月13日に、モーツァルト父子はイタリアヘの旅に立つ。今回は、マリア・テレジアの子息フェルディナンド大公の結婚式のための作曲の依頼を受けてのものであり、その作品は2幕のセレナータ「アルバのアスカーニョ」であった。10月17日に行われた初演は大成功であったが、その直後の10月から11月にかけて、2曲の交響曲(K96[K111b]とK112)が作曲されている。両者とも4楽章構成であるが、各楽章の構造は単純であり、特別の新しさはみられない。K96の「ハ長調交響曲」にはイタリア・オペラの影響が強くうかがえる。特に第1、第2楽章にはブッファの精神が再び現れてきているように思われる。それに対して、この「第13番交響曲」は、ソナタ形式によるアレグロ、簡略化されたソナタ形式(三部分形式)のアンダンテ、メヌエット、ロンド形式のモルト・アレグロという典型的な4楽章構造をとっており、全体にイタリア的色彩からは遠ざかり、ドイツの影響、特にヨーゼフ・ハイドンからの影響が大きいとみられている。楽器編成にも新しさはないが、管楽器が弦の伴奏、あるいは補強的役割から解放され、自立的な役割をもたせられている。例えば、アレグロ楽章の第2主題はオーボエとヴィオラのグループにより歌い始められ、2小節遅れてヴァイオリンが顔を出すというように対置されている。このような管弦楽法は、ド・ヴィゼヴァとド・サン=フォアによればハイドンの影響であるとされているが、アーベルト(1871-1927)は、ハイドンのものからはかなり隔っており、むしろ速い楽章の始まりにおけるソロとトゥッティの効果がハイドンから取られたものであると述べている。さらに、アンダンテ楽章はシュターミツを想起させるものであり、また、この交響曲はなるほど主題法と管弦楽法に関しては、幾分イタリアの趣味が認められるが、決してドイツの土台をぬぐい去ってはいないと述べている。
作曲の経過 モーツァルトは少年時代に3回にわたってイタリア旅行をしたが、この交響曲は2回目の旅行(1771年8月−12月)の際にミラノで作曲された。自筆楽譜の表題には、「シンフォニーア 1771年11月2日 ミラノにて、騎士アマデーオ・ヴォルフガンゴ・モーツァルトによる」と書かれている。
初演 初演の場所および目的は不明であるが、1771年の暮にはザルツブルクで演奏されている。
基本資料の所在 自筆楽譜はニューヨーク、ハイネマン財団所歳。
出版 旧モーツァルト全集第8篇、第13番。
演奏時間 14分。
楽器編成 オーボエ2、ホルン2、ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス。

第1楽章 (アレグロ) へ長調 4分の3拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ 変ロ長調4分の2拍子。
第3楽章 メヌエット ヘ長調 4分の3拍子。
第4楽章 モルト・アレグロ ヘ長調 8分の3拍子。主要主題が3回反復され、その間に2つの副主題が平行短調で現れるロンド形式である。