■モーツァルト作品解説■    [HOME]   [年代別目次]

交響曲 ト長調 「新ランバッハ」

K.-

 現在、上部オーストリアのランバッハにあるベネディクト派の修道院には、いずれもト長調をとるモーツァルト父子の交響曲の筆写譜が保管されている。この2つの筆写譜には、同じ写譜家の手で、一方には「ヴォルフガング・モーツァルト氏作曲」、もう一方には「レオポルト・モーツァルト氏作曲」と書かれ、さらに別の手でそれぞれに「1769年1月4日、作者より贈呈〉と記されている。これらは1920年代の初めに発見されたのであるが、前者は、発見と同時にウィーンの音楽学者ウィルヘルム・フィッシャーによって分析的な研究が行われた結果、表紙の記載どおりにモーツァルトの真作であると結論されたのであった。これがいわゆる「ランバッハ交響曲」KAnh221(K45a)である。ところが、フィッシャーの結論は、のちにドイツの音楽学者アンナ・アマーリエ・アーベルトによってくつがえされることになったのである。A・A・アーベルトは、綿密な様式批判的研究によって両者を比較検討した結果、フィッシャーがモーツァルトの真作とした「ランバッハ交響曲」は父親レオポルトの作品であり、父親の作品と考えられていた方がモーツァルトの作品である、との結論に到達したのであった。そして、表紙の記載は写譜家のミスによるものであろうと判断したのである。A・Aラーベルトがこのような結論を下すに至った要因は、だいたい次のようなことであった。すなわち「ランバッハ交響曲」は、第1楽章にみられるバスによる第1主題の呈示法や、第2および第3楽章の第1主題にみられる、息の短い断片的な部分をつなぎ合せるといった主題の作り方、あるいはまた展開部の書法、さらにはメヌエット楽章を欠く3楽章構成など、構成および形式面で、第2回ウィーン旅行の時の交響曲とはかなり異なっており、全体的にみて、モーツァルトの作品にしては余りに単調でありすぎること。それに対してもう一方の交響曲は、第3楽章にメヌエットを置いた4楽章構成である上に、例えば第1楽章の第1主題にみられるような歌謡的で流麗た旋律線、あるいは展開部にみられる大胆な転調と長さの拡大、さらにまた各楽章間にみられる主題的統一など、「ランバッハ交響曲」よりもはるかに質の高いものとなっており、父親レオポルトの他の交響曲と比べてみても、彼の作品にしては余りに創意あふれる作品であることであった。
 以来、A・A・アーベルトの説は一応受け入れられ、彼女によってモーツァルトの作品であると訂正された交響曲は、一般に「新ランバッハ交響曲」と呼ばれるようになったのである(ケッヒェル目録の最新版にはまだ含まれていない)。しかしながら、2つの交響曲には自筆譜が残されていないため、資料的な面では、いずれの説が正しいかは断定できないといったのが現状である。
作曲の時期 明確な作曲年はわかっていないが、作曲技法および形式構成に関して、交響曲「第8番」K48と非常に類似していることから、「第8番」と同じころ、おそらくは1768年の終り頃に作曲されたものであろうと思われる。
出版 ナーゲル、ムジーク・アルヒーフ217(A・A・アーベルト編)。
演奏時間 約15分。
楽器編成 オーボエ2、ホルン2、弦5部。

第1楽章 アレグロ ト長調 4分の4拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ・ウン・ポーコ・アレグレット ハ長調 4分の2拍子。二部形式。
第3楽章 メヌエット ト長調 4分の3拍子。トリオを伴う。トリオのあとメヌエットにダ・カーポする3部形式。
第4楽章 アレグロ ト長調 8分の12拍子。「第8番」と同様、ソナタ形式に近い二部形式で書かれた、軽快なフィナーレとなっている。