DISCLAIMER:
「ベルサイユのばら」の著作権は、池田理代子先生および、池田理代子プロダクションにあります。
この作品は作者が個人の楽しみのために書いたもので、営利目的はありません。

Author: miki

Email: miki@he.mirai.ne.jp

Date: 12/25/99

Category: OAを語るアンヌ・マリーお姉様

Spoiler:饗庭 孝夫著 「フランス四季暦」 〜秋から冬へ〜 1990年 東京書籍

Authors note:
この作品は「BETH'S ROOM」の1999年のクリスマス企画に載せていただくために書いたものです。
BETH様、転載を快く御許可頂きありがとうございました。 多少、アンヌ・マリーとアンドレの会話に
加筆修正を加えてあります。個人で楽しむ以外の無断転載・再配布は、ご遠慮願います。
エテ・ド・ラ・サン・マルタンとは仏語の慣用句で聖マルタン祭り11月11日頃の小春日和を指します。

 
Ete de la Saint Martin
エテ・ド・ラ・サン・マルタン
小春日和
 

 11月1日は諸聖人への祈りを捧げるトゥーサン(万聖節)であるが、翌日が「死者の日」 のため、 墓地に

詣でる人が多い。私はオスカルとアンドレを伴い、ジャルジェ家のシャペルと呼ばれる墓へ行くことにした。

文字通り小さいながらも礼拝堂の形をし、扉を開ければ、聖母のステンドグラスが秋のやわらかな日差しに

輝いている。 オスカルも熱心に何かを祈っていた。

まわりのマロニエは黄葉し、トゥーサンと墓参の花である菊や百合や薔薇 が美しさを競っていた。

そして、花々に劣らず美しい末妹の横顔を見ながら話しかけた。

「今日は穏やかな日ね。文字通りエテ・ド・ラ・サン・マルタンだわね。オスカル」

「そうですね、姉上。でも肌寒くはありませんか?」

「大丈夫よ。あなたこそ大丈夫かしら、何だか寒そうよ。」

「大丈夫ですよ、薄着には慣れていますし、身体も鍛えてありますから。」

美しい末の妹はいつも紳士のように、私を気遣っている。

結婚話を断った本心を聞いて欲 しいと母から手紙がきたのは、つい先日のことだった。

歳が離れているせいか、私にとっては、もう既に30歳も過ぎようとするこの妹が、

まるで実の娘のように思えるのだった。

墓参に誘ったのは口実だったのだが、彼女の視線が以前とは違い、常にアンドレを追っていることに

気がついた途端、彼女の心の奥にあるものに気づいてしまった。


 屋敷に戻り、暖かい暖炉の前でお茶を飲み、彼女と久しぶりにゆっくり話をした。

「今日はありがとう、オスカル。無理に付き合わせてすまなかったわね。」

「よろしいのですよ。たまにはのんびりしたいですからね。最近は世の中がせわしなくて…」

「世の中だけでなく、あなたのまわりも慌ただしかったようね。」

「まあ、今年の秋はいろいろありましたから…」

「あなたとアンドレは相変わらず仲が良いのね。二人が並んで歩いているのを見ていたら、

秋の枯葉にかがやく林の中を恋人達が木漏陽(こもれび)をうけながら散策しているようだったわ。

楽団にモーツァルトのクラリネット五重奏曲でも演奏させたかったわね。」

彼女は、すこし困惑したように私の言葉に抗議した。

「姉上、男装の私とアンドレでは、恋人には見えませんよ。彼に失礼ですよ。」

「まあ、なぜ!?お似合いの二人なのに…」

彼女は私がからかっていると思ったようだ。

服装の問題ではない、彼と彼女の気持ちの問題なのだ。

今日の二人を見ていたら、私には本当に恋人同士に見えたのだ。

愛しくてたまらないと優しくオスカルを気遣うアンドレの瞳、それに応えるような妹のしぐさ…。

宮殿や兵舎や屋敷で垣間見せる、いつもの厳しい表情ではないただの女性としての表情を見れば、

彼女の幸福が誰の側にあるのかは、自ずとわかろうと言うものだ。

「アンドレは私にとって兄であり、弟であり、時には父であり、幼馴染の親友であり、

アンドレにとって私は姉であり、妹であり、母であり、やはり幼馴染の親友なのです。つまり…」

「ほほほ、オスカル…それをこそ恋人というのですよ。あなたは本当に…まだまだ少女のままなのね。」

(これはお父様だけでなく、アンドレにも責任があるわね。二人ともあなたを大人の女性に

しないつもりかしら?)私は心の中で思わず呟いた。

「いいかげんにして下さい。…姉上、今日はお戯れが過ぎますよ。

それに私はもう30歳もとうに過ぎた大人です。いいかげん、子供扱いは止めてください。」

少し拗ねたように唇を尖らせる妹は、実年齢よりは数段若く見え、その心も身体も

まだまだ少女のままだということを私に告げた。


 11日の「聖マルタンの祝日」にはいつもの習慣どおり、栗を詰めた鵞鳥とワインを

味わう食卓が用意された。

久しぶりに実家でこの日を過ごした。しかし、昔と違いこの屋敷には子供の明るい声がなかった。

使用人にも今は小さな子はいなかった。大人だけの静かな食卓だった。

年老いた両親がオスカルに結婚話を勧めた理由が察せられた。家族の皆が寂しいのだ。

今度の降誕祭は、子供や孫を連れてきて、賑やかにしなくては寂しすぎる。


 翌朝、オスカルとアンドレと私の三人で朝早く遠乗りに出かけることにした。

久しぶり に実家の馬に乗る。

娘のようにワクワクして、早起きしてしまったので、早めに自分から珍しく厩に出かけた。

オスカルも早起きしたらしく、私の前の方を歩いていた。

厩に行くとアン ドレが待っていたらしく二人の声が聞こえた。

私は物陰から二人の様子を盗み見た。

「おはよう、オスカル。よく眠れたか?」

「おはよう、アンドレ」

彼女はすっと彼に近寄り、慣れたしぐさで、優しく彼の唇に朝の挨拶のくちづけをした。

彼も平気でそれを受け、さらに軽く彼女を抱きしめた。

(あら、いつもと違うわ。)と、私には不思議だった。

昔は二人とも、そんな朝の挨拶はしなかった。

「眠れるはずないだろう。姉上にばれているのだから…。」

彼の腕の中で、彼女は不満げに囁いていた。

「うん、そうか?でも、それは考え過ぎじゃないのか?」

心配するなと言いたげに、彼が優しく応えた。

「おまえはのんきなヤツだな。」

「おまえが心配性なんだよ、オスカル」

彼女が拗ねて彼の腕を強くつかんだ途端、彼は痛がった。

「いた…」

「あ、すまない。アンドレ、強すぎたか?まだ、傷が完全に治ってないのか?大丈夫か?」

彼女は心配げに彼の顔をのぞき込んだ。

「大丈夫、心配ないよ。それにこの傷のおかげで、おまえに愛の告白をしてもらったのだから、

感謝しなくちゃな。オスカル」

彼はわざとふざけたように、人差し指で彼女の鼻の頭をつついた。

彼女は多分照れたように、彼の胸に顔を埋めたのだろう。

(そういう訳だったのね。)私はすべてを納得した。

二人の馬車が以前襲われて、彼が酷いけがをしたことは、母の手紙に書いてあり知っていた。

私は静かに厩から遠ざかり、さも、今しがた来たばかりのように、 「おはよう、誰かいる?」 と

厩の外で大声をあげ、挨拶しながら二人の側に寄っていった。

それから、三人で遠乗りを楽しんだ。


 夕方、アンドレが私の帰宅のための馬車の用意が出来たことを告げに来た時、

彼を引きとめ話かけた。

「アンドレ、今日はご苦労様でした。これからも、オスカルのことをよろしく頼むわね。」

「はい、かしこまりました。アンヌ・マリー様」

彼はいつも通り礼儀正しく応えた。

「今度の降誕祭とオスカルの誕生日には、アンドレにも贈り物を用意するわね。

楽しみにしていてね。」

「私に贈り物をいただけるのですか?嬉しいお話ですが、なぜでございますか?」

「理由も贈り物もその時のお楽しみよ。」

アンドレの美しい黒い瞳が不思議そうな問いかけを私に発していたが、返事は、私の楽しそうな顔を

彼の瞳に映すのに留めておいた。

 しばらくして、降誕祭がやってきた。久しぶりに実家で迎える。

教会へミサに出かけ、 屋敷にかえり、レヴェイヨン(真夜中の食宴)をした。

食後の計画を胸に抱いている私は、 食事の味がよくわからなかった。

私の娘と孫達に父と母の相手を頼んで、食後にオスカルを捕まえ、私の部屋へ連れてきた。

「オスカル、あなたに贈り物があるのよ。これを見て…」

私は得意げに侍女に命じ、部屋一杯に、ばあやが何年もかけて作っておいた

何種類ものローブの箱を開けさせた。

「あなたはどれが好きかしら?少し型は古いけれどローブ・ヴォラント型、ポロネーズ型、

シルカシェンヌ型、それとも、軍服に似ているからカラコ型ジャケット付きがいいかしら?

ねえ、オスカル、聞いていますか?」

「姉上、これは何の騒ぎですか!?私はローブなど着ませんよ。」

「あら、だめよ。アンドレに降誕祭には贈り物をすると約束したのですもの。」

「ど、どうして、私のローブ姿がアンドレへの贈り物になるのですか!?」

「たまには彼だって、恋人の美しいローブ姿を見たいと思うでしょう。

さあ、もう時間がないのだから、議論はお終いよ。」

私が侍女達に目配せすると、まもなくオスカルの侍女たちも加わり、

皆で彼女を取り囲み、さっそく着せ付けにかかった。

最初は抵抗していた彼女もしばらくすると諦めて、大人しくされるがままになっていた。

その最中に母が騒ぎを聞きつけ、部屋へ入ってきた。

「まあ、これは何の騒ぎなの?」

「母上、助けて下さい。姉上や侍女達におもちゃにされているのです。」

「あら、私も入れて頂戴。内緒なんてだめよ、アンヌ・マリー、オスカルは私の娘なのよ。

美しい娘を着飾らせるのは、母たる者の楽しみよ。それくらい我慢しなさい、オスカル。

どのローブが似合うかしら?もう決めたのですか?」

「母上までそのような…」

私と母はまるで娘を着飾らせて楽しむ祖母と母親のような会話をしながら、二人で侍女を

指示しながら彼女を美しいローブ姿に仕上げていった。

髪を結い、爪を磨き、お化粧もさせた。

「やはり、このブルーと金茶の縞柄のカラコ型ジャケットにしましょう、リボンも付いている割に

軍服みたいなものだし、オスカルの凛とした雰囲気にあうわね。

スカートは、絹地にキルティングを施したこれにしましょう。これなら、寒くはないわね。

模様もすてきでしょう。あとは…」

二人でローブ選びを楽しんでいると、廊下で見張らせていた侍女が、

父の侍従が母を捜していると聞きつけてきた。

「お母様、申し訳ありませんが、お父様のお相手をお願いしますね。

こんなところを見つかったら大変ですから。」

「残念だわ。でも、しょうがないわね。曾孫達が眠ってしまっては、お父様も手持ちぶさたなのね。

私は邪魔をさせないようにする係りだわね。」

母が退出するとまもなくオスカルの用意も整ったようだ。


 私は侍女達を下がらせ、椅子に座っている美しいローブ姿の彼女の顔をのぞき込みながら、

私の長年の思いを告白した。

「私はね、オスカル…あなたに長い間申し訳ないと思っていたのよ。

長男相続を定めたサリカ法の支配するこの国では、女子の誕生は望まれないことだわ。

特に最初の子にはね。私さえ男に生まれていたら、あなたが男として育てられる必要はなかったでしょう。

人並み以上に美しいあなたが、男性に立ち混じって軍隊で働くなどということもなかったでしょう。

私だけじゃないは、あなた以外の姉妹が皆そう思っているわ。

自分さえ男に生まれれば、 あなただけに必要以上の苦労をかけることはなかったとね。

私たちはそれぞれに結婚し、子も産まれ、女性としてごく普通の幸せを得られたわ。

でも、あなたは美しい身を軍服に包み、この混乱した世に軍隊に身を置いている。

しかも、折角の良い条件の結婚話さえ断ってしまった。

父上と母上だけではなく、私たちもあなたのことが心配だったのよ。

でも、先月トゥーサンの墓参に出かけてあなたとアンドレの仲のよいところを見てピンときたのよ。

あなたの幸せは彼が側にいてくれることね。

だから、このローブは私からあなたへの贈り物よ。」

(そして、アンドレもね。)私は心の中でそっと呟いた。

オスカルは私の話を聞くと一筋の涙を流した。

「あら、あら、折角の美人が台無しよ。」

「…姉上…、ご心配をおかけしました。でも、私には…この生き方が合っているのです。

もう後悔はいたしませんから、大丈夫ですよ。 でも、今夜だけはただの女性として、

このローブ姿を楽しませていただきます。ありがとうございます。」

そう言うと、背の高い彼女は私の額に優しく口づけした。私は彼女の頬に口づけを返した。

彼女の幸せを願いながら…。

暫くして、彼女が落ち着くと自室へ連れていった。

そして、侍女にアンドレを、私の部屋に来るように呼びに行かせた。

「ふふ、オスカル、アンドレが驚いて、喜ぶ顔が目に浮かぶわ。

でも、邪魔者は退散するわね。」

彼女は、長椅子の上ではにかみながら、私に柔らかな笑顔を向けた。

そこで、私は彼女の部屋を出た。

 私は自室で待たせていたアンドレを、頭のてっぺんから足の先まで見回した。

いつもと変わらず優しい瞳の彼だった。私の態度が変だと思ったらしく、彼は私に質問してきた。

「私の姿が何かおかしいですか?アンヌ・マリー様」

「ふふふ、何でもないわ、アンドレ、お待たせしたわね。

私達…姉妹からの贈り物を受け取ってね、自慢の妹よ。」

「何のことでございますか?」

「いいえ、何でもないわ。独り言よ。オスカルが呼んでいたわ。あとで行ってやって。

あ、ちょっと待って…その前に私からお願いがあるのだけれど。

愛しい私達の弟に、是非ノエルの祝福のくちづけをさせて欲しいのだけれど…」

「…喜んでお受け致します。こんな美しい方のくちづけなんて滅多に受けられませんから。」

背の高い彼は、私に向かい屈むようして、頬を差し出した。

私は彼の右の頬にくちづけして、傷ついた目を優しく撫でた。

「アンドレ…私達姉妹は、皆あなたにとても感謝しているわ。私達は、末の妹にこの時代を

生きる女性としては、過酷とも思える人生を送らせることになってしまったわ。

でも、あなたが長年、影のように彼女を支えてくれていたから、あの子は耐えられたのではないかと

思えるのよ。でも、そのせいで、あなたは、片目まで失う事になったわ。

それを知っていてもなお、 これは私達姉妹のとても勝手なお願いだけれど…

これからもあの子のそばにいてやって、支えてやって欲しいのよ。

そして、軍人でもなく、貴族の娘でもない、ただの女性としての幸せも与えてやって欲しいの。

あなたの男性としての深い愛情を、存分にあの子に注ぎこんで、その優しい瞳で

いつも包みこんでやって欲しいのよ。あの子がこの先も自分の信念を貫けるように…。

死の瞬間に、軍人としてだけでなく、女性としても十分幸せだったと思えるほどに、

あの子を愛してやって欲しいの。これは、私達姉妹の心の底からのお願いなの。

それが、あなたの人生の自由を縛り、男としての平凡な結婚の幸せを壊すことになるのは、

十分に承知しているわ。でも、でも…」

私は、涙が止まらなくなり、言葉に詰まってしまった。

彼は私の言葉に驚きを隠せないようで、慎重に言葉を選びながら答えた。

「アンヌ・マリー様…私ごときを、長年、本当の弟のように可愛がってくださった皆様には、

感謝してもしきれません。 それだけでなく、私の身分違いのオスカル様への愛を…

咎められることはあっても、決して許されることのない愛情を、お許し頂くだけで、十分私は幸せです。

私の生涯をかけて、オスカル様を愛し抜きます。私の死の瞬間までおそばにお仕え致します。

本当に何も…身分も、財産も、権力さえ持たない私にできることはそれだけでございますから。

こんな私の愛情しか…オスカル様に捧げることのできないことをお許し下さいませ。」

「…アンドレ、あの子に今一番必要なのは、あなたなのよ。

ふふふ…オスカルが、慣れない姿でそろそろ待ちくたびれているわね。

早く部屋へ行ってやってくださいな。」

「オスカル様が慣れない姿?…一体どんな姿でございますか?」

「…内緒よ。行けばわかるわ。楽しみにしていて…今夜のあなたの仕事はもうお終いよ。

いえ、違うわ。今夜の仕事はね…慣れない姿でいるオスカルの相手をしてやることよ、わかった?

これは私の…ジャルジェ家の長姉の命令よ。」

なにやら楽しげに隠しごとをしている私の様子を訝しげに思いながらも、彼は、私の微笑みながらの、

命令を素直にお受けいたしましょうとでもいうように、静かに応えた。

「…では、お言葉に甘えて…いえ、アンヌ・マリー様のご命令に直ぐに従います。

では、 失礼いたします。」


 彼が部屋から静かに退出すると、私は思わず目頭を抑えずにはいられなかった。

大貴族の娘であり、妻でありながら、無力なのは私とて同じなのだ。

愛し合う二人に、こんな二人の時間しか贈り物として渡せない。

社会の慣習を無視して、身分違いの二人に正式な結婚をさせることさえできない。

私も大貴族に連なるとはいえ、宮廷貴族の体面を保つのにせいいっぱいで、借金も重ねている。

貴族の位など、お金さえ工面できればいくらでも手に入る。 宮中の役職さえ、金次第だ。

昔に比べれば、財産目当てで、大ブルジョアの娘や息子と結婚する貴族の数は増える一方だ。

私、或いは私達姉妹にもっと財産と権力さえあれば、アンドレにオスカルの夫としての最低の地位と

財産くらい用意することもできない話ではないはずなのに…。

「王妃様に取り入ったポリニャク夫人の10分の1くらいは…した方がよかったかしら?」

思わず自嘲ぎみに囁いてみた。でも、私達姉妹の性格で、そんなことができるはずもない。

私達貴族の女は、いくらサロン等で褒めそやされていても、結局のところ、家の存続のために

後継ぎを生み、家の繁栄のために権力者に取り入る道具でしかないのだ。

「無力な私を・・・私達、姉妹を許してね。オスカル、アンドレ…」


  次の日、二人を出来るだけ邪魔させないように、朝からオスカルの侍女達を遠ざけた。

しかし、二人が遠乗りへ出かけたと聞いたあとで、オスカルの部屋へ入り、

そっと彼女の寝台へ寄っていった。

羽枕の緑のリネンのカバーに、ひとすじの美しい金髪と黒髪が絡み合っているのを見つけ、

私は満足げに微笑んだ。

どんな形にしろ、オスカルが、いや、二人が幸せなら私達は満足だ。

外の季節は冬だが、二人はやっと愛が実り、豊饒の秋を迎えたばかりだ。

「主よ、哀れみたまえ…、二人の愛はまだ始まったばかりです。」

二人の人生の小春日和が、たとえ一日でも長いことを私は願わずにはいられなかった。

FIN 
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