I. オランダ郊外を自転車で走る
詳報
1997年9月20日

注意:ここに示された情報は1994年5月時点のものです。
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1. オランダに着く

 電車を乗り継いで5月12日11時頃アムステルダム中央駅に着く。ブルージュから 二人でBF2380(\7,640)。そのまま、駅前のツーリスト・インフォーメーションに行き、宿の確保と地図の入手をする。

プリンセン運河とアンネの家
標識は「停船禁止」?
 混んでいてなかなか列が前に進まない。それぞれの旅行者が自分の気に入る宿が見付かるまで交渉を続けているためである。前の3人連れの女性は、窓口の女性が示してくれるホテルを「ここは高い」「ここは遠い」などと次々と断り続け、かれこれ30分も粘っている。腹は減るし、腹は立つし、自分の番になったら、希望料金と地域を言い、示された宿をすぐにOKとしてしまう。宿は「ツインでFL150(150ギルダー)以下」、と言ったらぴったりFL150 = \8600を紹介される。高いと思ったが、並んでいた時間と後ろの列を思えば、交渉する元気がない。観光用の地図は無料で日本語のもある。詳しい地図をFL3.5(\202)で買う。ついでに市電地下鉄の回数券7.5回分 DFL11(\640)も買う。
 実はインフォメーションのホテル紹介の列に並ぶ前に、ホテルリストを元にいくつか電話をかけてみたが、部屋がないと断られたので、諦めてインフォーメーションの列に並んだのであった。今までの街と違い、ここは日本のようにホテルが取りにくい、と思った。電話カードは駅の窓口でFL10 = \580で販売している。
 インフォーメーションでは「スリに注意」の放送が数カ国語(多分)で流され続けている。「アムスはやばいな」という不安がよぎる。

運河クルーズ乗場

 このままホテルに行きチェックインし、この日は徒歩で街を散策する。昼食は面倒くさくなって、街頭でリンゴ2個アイスクリーム1個(計DL3.50 = \203)で済ます。最近出版された「完全版・アンネの日記」の記憶が新しいままにアンネの隠れ家を見学(二人でDFL16 =\925)したり、運河クルーズ(二人でDFL22 =\1,270)でおのぼりさんをして過ごす。運河クルーズでは黒のレースの透けるパンツを履いた目立ちたがり屋の美人客が船の屋根でポーズ取って連れの男に写真を撮らせていた。(私の前の老人も写真を撮っていた。)船に乗っている間に、インフォーメーションで立っていた事による疲れを、癒す事ができた。

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2. 自転車を借りる


マックバイク
 翌朝、ホテルで貸し自転車屋を尋ねたら「マックバイクMacBike」という店を紹介してくれる。カレー劇場隣のホテルから徒歩10分、レンブラントの家の北側地域にこの店がある。
 料金は1台1日FL10 = \580。自転車破壊盗難保険がFL5= \290、夕方6時までに返却とのこと。ここで、「キューケンホフ公園まで行きたい」と言ったら、坊主頭の2m位の巨人店員が「普通は行きに1日、帰りに1日の二日コースだから日帰りは無理」と言う。しかし鉄道で帰ってくることもできるし、明日の午前中までに返せば50%割増料金で良い、とも言う。だから、行くことにする。1/15万の北部ホラント州の道路地図を買う(FL7 = \405)。
 ここでは、自転車の鍵のかけ方についてくどく説明を受ける。曰く必ず2個鍵を掛けること、ワイヤーロックは必ず建物や柱、自転車係留枠に掛けること。

 MacBikeの前にな、なんと大きなダイヤモンド工場Gassan社がある。配偶者が「買わないから見ていこう」と言う。自転車を外に止めて、受け付けに行くと、国籍を尋ねられる。なぜかと思ったら、日本人の説明員がでてきて説明をしてくれる。非常に警戒が厳重で、作業はガラスの向こう側で行い、サンプルを見るときは小さな個室に入り電話連絡でエアーシュートからサンプルの入った筒を取り寄せる。サンプルのある間は個室は開かない。結局ここで何千ギルダーかの買い物をしてしまう(手持ち現金が無いので、カードで)。完成品はホテルに届けてくれるそうだが、我々のホテルは「知らない」らしく、翌日ここに取りに来ることにする。この工場の来客ロビーは豪華、無料飲食ビュフェ付き。

ダイヤモンド研磨職人
 アムステルダムは、アントワープに続くダイヤモンド産業の盛んな所という。そういえば、昔アントワープでダイヤモンド博物館を見た覚えがある。そこには卵位の大きさのダイヤモンドのレプリカがあった。
 ここをでたらもう11時過ぎ。あわててハーレムめざし出発する。

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3. アムステルダムからハーレム


アムステルダム中央駅とストリートオルガン
 アムステルダム中央駅付近からS100道路がハーレムに続いている。まず中央駅を目指す。駅前では、ストリートオルガンが演奏をしている。同じ場所で翌日はフォルクローレ・グループが演奏をしていた、何日か前にブリュッセルのグランプラスで演奏していたのと同じ人達だった。
 駅の西側で、高架と運河に阻まれて少し道を見失った。その時ちょうど男女の警官がいたので、地図を示して、ここはどこWhere are we?を尋ねたら、男性警官が「ここWe are here」と地面を指さす。女性が笑いながら地図上で示してくれて、無事S100に出る道がわかる。
 S100はしばらくは両側を運河にはさまれている。北側運河のさらに北側にハーレムへの鉄道線路がある。道路と南側運河にはさまれて自転車道がある。駅から3Kmあたりの街の中に風車がある。S100はアムステルダム環状高速道路A10と交差すると国道N5となる。さらに3Kmほどの所の住宅地にまた風車がある。この異国情緒がたまらなく素敵だ。
 N5と環状運河Ringvaartが出会うあたりから、N5は高速道路A5となり高架になる。自転車道は環状運河の北側にある。A5とA9とのインターチェンジあたりで自転車道は環状運河を離れる。運河南側の道を走りたいが、渡る橋がない。諦めて、右側を走る。
 北海運河と環状運河を結ぶ運河が幾つかある。しばらく行くとその一つに出あう。ついつられて、その運河の西沿いに南へ曲がってしまう、これが道を失う原因となる。その道が無くなってしまい、住宅地をうろうろする。何人かの人にハーレムのセントラム(中央)は何処かを尋ねるが、教えられた通りに走っても、なかなか場所を特定できる所に出ない。持っている地図も小縮尺(1/15万)のため、細部はわからない。西に走り続けて、スパールネSpaarne運河に出会う。その辺でハーレム駅の場所を尋ねて、やっと自分の位置がつかめる。
 ハーレムのグローテ・マルクト(大市場)広場から駅の方に向かう。広場の北の道を自転車で北上していると、前からパトカーが来る。パトカーが横に止まり、「この道は一方通行だから反対に行け」という。日本では一方通行の場合、大抵「軽車両は除く」とか「自動車・原付」等の制限標識がついているので、自転車は除外される。しかし、ここで標識を見るとなんの限定もされてない、つまり自転車も一方通行適用ということだ。仕方が無いので、歩道を走り始めたら、件の警官が「歩道は自転車で走ってはいけない、押して歩きなさい」と言う。結局、その通りを抜けるまで、ハーレムの石畳歩道 200mの散歩を楽しむ。


ハーレム駅前
 ハーレム駅前のインフォーメーションに行く。マックバイクで買った1/15万の地図では道が判りにくいので、ここで是非詳しい地図を入手したい。1/5万地図(FL6 = \342)を買う。カウンターの横で地図を広げて、コースを検討し、不明な点をカウンターの女性に尋ねるが、あまりよく知らない様だ。もちろん、郊外の運河の何処に自転車の通れる橋があるかを知らなくても、街の観光案内所の係はつとまるだろう。でも、ここで確認できなかった為に、やがては、地図上で運河と道路が交差しているにもかかわらず橋がなく、遠回りを余儀なくされる事になる。
 インフォーメーションを出て、駅前のファーストフードの店で、ポテトフライ2人分と野菜サラダ2人分を買って(マヨネーズとケチャップの追加料金込みでFL7.50 = \434)、昼食とする。もう2時を過ぎている。
 ここまで2時間以上かかる。地図上の距離で25Km程度しか走って無いが、実際には、道を探したりしたため右往左往して、もう少し長い距離を走っている。

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4. ハーレムからリッセ

 駅前から再びスパールネ運河に戻る。運河の東岸を2Km南に進むと運河沿いの公園に出る。この辺りの運河東岸はヨットハーバーになっている。その先に風車があり、風車の南には運河の東側に300m四方ほどのウインドサーフィンの池がある。そのすぐ南に運河を渡る橋がある。この先のスパールネ運河脇道の終点と環状運河と交わるところの道の記述が、地図上では曖昧で、橋の有無が不明であった。念のためにここで運河を渡る。これは正解であったことが帰りに判る。
 橋を西に渡ってヘ-ムステーデHeemstedeの街に出る。この先、地図上で細い道が何となくたらたらと曲がりくねって続いている道を選んで走る。地図にこのように書かれている道は、自動車時代以前の幹線道路である事が多い。そんな道は古い町並みや街道沿いの並木等のある、気持ちの良い道である可能性が高い。日本でも、そうであることが多い。思惑通り、落ち着いた町並みや公園、古城、風車が次々と現れて来る。
 ベネブロックBennebroekの街を過ぎると、残念ながら旧道は国道N208に吸収されてしまう。ここまで、スパールネ運河の橋から7Kmくらい。


チューリップ畑
 国道を2Kmほど南下すると、ヒレゴムHillegomの街になる。国道の東側に一筋入るとインフォーメーションや古城がある、らしい。国道を走り続け、運河を渡るとエルスブロックElsbroekの街になる。運河の先500mで右に小さな道へと曲がると、一面のチューリップ畑になる。
 この辺りのチューリップ畑は球根を育てるのが目的らしい。つまり、花が咲いて色形を確認したら、すぐに花を摘んで栄養を球根に集中させるらしい。だから、青々とした畑の所々に花が咲いた一角がある、という事になる。花が咲いているところも、病気や色違いのチェックが済んだらすぐに花を摘まれてしまう運命にある。

チューリップ畑
 チューリップ畑の中の田舎道をまっすぐ行くと、4Kmほどでキューケンホフ公園にでる。道の左側が公園で右側が広い駐車場になっている。この公園の南西500mほどにキューケンホフという名の古城がある、多分この城の名前が公園の名前となったのであろう。
 公園のチケット売場のおばさんに自転車を停める場所を尋ねるが、Bikeという言葉を理解してもらえない。 Bicycle(バイシクル)とかCycleと言い換えても解らないようだ。そしたら、近くにいた人が「バイサイクル」と言ってくれた。おばさんがやっと理解して、「向かい側の駐車場の所に自転車置き場がある」と教えてくれた。そうか、オランダでは「バイサイクル」と言うのか。ほとんど英語が通じるのに、外来語化した言葉がかえって通じにくいのだ。
 ここまで、地図上で通算45Km。 時刻は午後3時過ぎ。

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5. キューケンホフ公園

  公園の駐輪場に自転車を停め、この有名な王立公園に入場する(一人FL15 = \870)。自転車駐車料は無料だが、自動車はFL3 = \170。ここは3月24日から5月23日(94年)までの2ヶ月間しか開いてない、チューリップのための国立公園である。チューリップ以外の花もある。開館時間は8:00から19:30まで。
 7,000,000株の花だけでなく、木立の緑も美しい。ここで午後5時近くまで過ごす。


キューケンホフ公園

キューケンホフ公園
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6. キューケンホフからアムステルダム


農夫が二人、作業をしている
 公園を5時に出る。公園のすぐ北のチューリップ畑ではピンクの花が咲いている。キューケンホフ公園の風車を背景に、農夫が二人、ピンクの中で作業をしている。あまりのエキゾチックさに、自転車を停めて写真を撮っていたら、自動車がとまり、降りてきた外国人(おいおい、我々が外国人だ!!)が写真を撮り始めた。
 ライデンとアムステルダムをつなぐ環状運河Ringvaartがリッセの東を通っている。来た道を1Km戻り、右に曲がり、さらに1.5Kmで国道N208を横切る。そこから600mで環状運河に出る。地図ではその道が運河を横切っているのに、橋がない。よく見ると、地図には橋の記号が書いてない。道は対岸にある。
 N208まで戻り、国道をエルスブロックの町まで走る。そこで右折してN207国道に入り、ヒレゴムでやっと橋を渡り環状運河の道にでる。ここからは運河の土手を北北東に走る。右側は5mくらい低い所に畑、左側は道路50cm下に水面、つまり全くの天井運河だ。この道路は対向各1車線の道路だが、自動車はほとんど走らないので、自転車は安心して走ることができる。自動車が追い越して行くときは、かなり減速してくれる。

 橋から4km辺りの右側に集落がある。そこは、自動車がスピードを出せないように、道路にでこでこが作られている。つまり、数mおきに進行方向に直角に高さ数cmの段差を作ってある。その集落の中の一軒で、庭で作業しているおばあさんが、木靴を履いていた。
 さらに進むと、左側つまり運河にハウスボートが何十軒も並んでいる。ここは道路がさらにスピードを出せないようになっている。道路片側を柵でセンターラインまで遮ってある。数十m先で、今度は反対車線を遮ってある。その先も同様にして、その船の集落を過ぎるまで、車はゆっくりとジグザグ運転をせざるを得ない。きっと、道路と水面がほぼ同じ高さだから、住民に対する騒音を防止するためにそのようにしてあるのだろう。

環状運河の風車
 ヘレゴムの橋から7Kmでスパールネ運河が左から環状運河に交わる。ハーレムから運河東岸を南下する道は対岸に見えるが、やはり橋がない。そこから1Kmの所に風車がある。風車の先は、運河の左側が幅500m長さ1500mに広がり、ヨットやウインドサーフィンが出きるようになっている。
 そこから両側に集落を見ながら500mで風車が左岸にある。運河はその辺りで真北に向きを変える。2.5Km走りA205高速道路をくぐり、さらに500m走ると、運河は東に向きを変え、アムステルダムの方向に向かう。この辺りの集落はニューベブルッフ(新しい橋)という名前なのに、どこにも橋がない。そこから2KmでA9高速道路をくぐり、さらに1KmでツバネンブルクZwanenburgの町になる。町に沿って2Kmで橋を渡り運河の左岸に渡る。運河はここから南に曲がっていくので、ここで渡らないと6Kmも南に行くはめになる。ここまでの通算走行距離約75Km。

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7. アムステルダムに帰って

 行きに走ったN5沿いの自転車道を再び走る。疲れてきたのでカフェにでも入ろうかと思うが、この町には橋のたもとに在ったのをやり過ごしてしまったので、カフェが見付からない。しばらく走った次の集落は、もうアムステルダムの西の端だ。カフェを見つけたが、いかにも場末風で、客もいないので入る気がしない。

プリンセン運河と西教会
 環状高速A10を過ぎた辺りで、斜めに右に曲がり、町の中に入る。どこを走ったかよくわからないまま、何となく、屋形船が多数係留されたプリンセン運河の西教会近くに出る。カフェを見つけたので自転車を運河の柵に縛り付けて、外のテーブルに座る。地図で道を確認したりしながら待つが、店員が出てこない。店内には数人の男性客とウエートレス一人がいるが、呼びかけても合図しても、出てこない。そのうち他の客が来たら、応対しているので、「これが話に聞く人種差別か」と思い、しらける。その気で見ると、店員も客もすさんだ感じに見えてくる。夫婦で顔を見合わせて、「出ようか!!」。

 プリンセン運河をライツェ運河まで走り、ライツェ広場のハーゲンダッツでアイスクリームを一つ買う、FL3.75 = \217と、高価だ。夕方のライツェ広場はものすごい混みようで、自転車で走れないほど。
 ライツェ広場からジンゲル運河に出て、運河沿いに国立美術館、ハイネッケンの工場の前を通ってアムステル川に出たら、川を北に400mでホテルに着く。ちょうど夜の8時だ。しかし、まだ昼間の明るさである。
 フロントに頼んでホテルのガレージに自転車を入れてもらう。ガレージの中は車が置いて無く、ピカピカのハーレーが一台だけ。ホテルの廊下の壁にハーレーの絵が多いわけだ。通算走行距離約88Km。

 夕食はレンブラント広場のイタリアン・レストランに徒歩で行く。ピザFL13、スパゲッティFL12、サラダFL5、ビール2杯で合計FL36 = \2,080。アムステルダムにはオランダ料理店が見あたらない。見つかるのはイタリア料理、中華料理、インドネシア料理など。物の本によると、オランダ料理はいわゆる家庭料理で、わざわざレストランを作らないようだ。

 翌朝、自転車をマックバイクへ返しに行く。結局、レンタル料は1.5日×2台+保険50%+TAXで、FL43.5 = \2,516.5となる。
 マックバイクの前の道路で、ガッサンダイヤモンド工場の説明してくれた人とばったり会う。自転車を返したあとで、ダイヤモンドを受け取りに行く。その後、ゴッホ美術館へ路面電車で行く。


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