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デジブンお薦めの小説ガイド
この本を読むべし!


このページは随時更新していきます。またすでに評価の固まった古典などは
対象にしていません。
評価基準はあくまで私自身の趣味です。ただしすべて自腹で買った本を評価。
純粋に商品としての価値を問う!無駄な買い物はさせません。


(本屋)・・・・本屋へ急げ、買って悔いなし
(図書館)・・・図書館で借りましょう。きっと待たずに借りられます(笑)
(光陰)・・・・光陰矢のごとし、短い人生ほかにすることがあるはず。
(本屋)「山荘奇談」シャーリー・ジャクソン(早川文庫)
      傑作中の傑作なり。ヘルハウスものの古典。幽霊屋敷調査に訪れた
      一行を襲う怪現象。しかし、読みようによってはすべて登場人物た
      ちの幻覚ともとれる。この曖昧な不安がすごい。エリーナという不
      幸な生い立ちのエスパーが主人公だが、この人物の掘り下げがうま
      い。だまされたと思って買うべし。再読・再再読に堪える家宝のよ
      うな作品だ。私は毎年1回は読むことにしている。ホラーの教科書。
  
(図書館)「ボルネオホテル」景山民夫(角川文庫)
      ホラーの定石を遵守したある意味で教科書のような作品。面白い教
      科書て滅多にないでしょ。この物語はたった1行で語れる。
      「嵐の夜、幽霊ホテルに閉じこめられた人々、危機一髪、人々を闇
      から救ったのは、障害児の無垢な心だった」以上。
      ホテルに宿泊する登場人物がさりげなく紹介されるシーンで、「こ
      れは忠告を聞かずに一人で助かろうとして死ぬやつ、この夫婦は多
      分お互いを助けようとして、読者の涙を誘いながら二人とも死ぬは
      ず」という読者の予想を忠実に守ってくれる(笑)
      出版当時、「日本初の本格的ゴシックロマン」とかいううたい文句
      だったと思うが、まさに角川商法ここに極まるといったところ。
      本来(光陰)に分類したいところだが、ホラー小説を書こうという
      人には反面教師として貴重かもしれないと考えて(図書館)に昇格。
      景山さんの冒険小説は大好きなんですがねえ。

(本屋) 「七百年の薔薇(上・下)」ルイス・ガネット ハヤカワノベルス
      舞台は現代のアメリカ西海岸。主人公は長い歴史を持つスプーア一
      族の長子である。両親の離婚後、会ったこともない父から遺産相続
      のため三ヶ月、所有する城で暮らすべしという手紙がくるところが
      物語の発端である。物語は登場人物の手紙・日記・宿題などの書簡
      のみで構成されている。それ自体は別に珍しくもないが、登場人物
      たちの同性愛的な問題などが鍵になっていて「その気」のない小生
      も少し「どきどき」してしまった。セピア色の薔薇の力で過去を幻
      視しする謎の父親、その目的は本当に遺産を相続させるためだけな
      のか?
      薔薇の力、不死、少年とくるとこれは往年の名作「ポーの一族」じ
      ゃんというあなた、鋭いよ。でも萩尾望都さんの方が古いから、ひ
      ょっとしてインスパイアされたのはルイス・ガネットか。むしろ両
      作品に共通の発想のもととなった、西欧のオカルティックな知識に、
      当時の萩尾女史が精通していたというところだろう。ガネットにと
      ってこの「七百年の薔薇」が処女作だというから肉食人種はすごい
      なあ。
      そうそう、本の命、装幀もすばらしく、この本は買いですね。僕は
      図書館で借りちゃったんですが、本屋で状態のいいのがあったら迷
      わず買います。

(本屋)   「バーチャル・チルドレン」野本隆 出版芸術社1500円
      大作でも傑作でもないが、力量あふれる小品がそろっている。買っ
      て損はしませんね。特に「隠れ家」「川の側の家」はうっすら背筋
      が寒くなる。僕の好きな、日常と紙一重の恐怖、また子供の頃の不
      思議な記憶が今思うとぞっとするようなことだったという感覚。好
      きだなあ。詳しい内容はここには書きません。本屋で一話立ち読み
      して下さい。きっとレジに持ってくことになりますよ。

(本屋) 「ホワイトアウト」真保裕一 新潮社(フォーカスの件があるから図
       書館で借りよう、くく、つらい)
      日本一の貯水量を誇るダムがテロリストに占拠された!しかも豪雪
      期で、唯一の道である隧道は爆破されている。この極限状態で、偶
      然テロリスト占拠の瞬間から逃げることのできた非番のダム運転員
      が、たった一人でテロリストと戦う!
      まるで「ダイハード」です。作者はまずダイハードがやりたくて、
      この物語の舞台・人物を設定していったと思う。それがよいのだ。
      それこそが日本のエンターテイメントに求められるプロの技なのだ。
      アニメのディレクター出身の作者だけある(ほめているのだ)。
      こんな具合に活字の世界に優秀な才能が帰ってきてほしいと痛感。
      超おすすめ作品です。だれか映画化してくれ。

(本屋) 「野獣の書・三部作・・・孤児 虜囚 野獣」ロバート・ストールマン
      ハヤカワ文庫(昭和58年)
      高い知性と変身能力をもつ”野獣”・・・。彼は人間に変身して生き
      る。最初は少年、そして青年、やがて彼は自分と同じ野獣とも出会う。
      彼の正体は? また彼が変身する人間は彼が自由に選ぶわけではなく、
      あらかじめ決まっているようでもある。
      どうです、すごく魅力的な設定でしょ。私のページの「心獣の歌」に
      ちょっと似てるでしょ。かなりインスパイアされたんです。この作品
      で、SF小説でここまで時代と人間をテーマにできる(しかも、ある
      意味、私小説のように赤裸々に、なおかつ面白くエキサイティングに!)
            ということがわかり衝撃でした。獣の目というフィルターを通して、
      作者は男の三つの年代の自分が描きたかったのではないだろうか。
      詳しい内容は紹介しない。是非読んでほしい。書店に並んでいるかど
      うかは不明。絶版の可能性もある。だから見つけたら即購入!



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