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2004年7月のブックガイド

このページはエキサイトブログで2004年7月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
新規の書評は
ここ、シーサーブログの「新・読書記録゛(どくしょきろぐ)」
でお楽しみいただけます。


「短編小説のレシピ」(阿刀田高)集英社新書
「幻詩狩り」(川又 千秋) 中公文庫
「幻象機械」(山田 正紀)
CASSHERN(キャシャーン)
「のど自慢 」
30ポイントで読み解く「ローマ帝国衰亡史」(金森 誠也) PHP文庫

 

「短編小説のレシピ」(阿刀田高)集英社新書
八百編もの短編小説を生み出してきた阿刀田高がみずから解説・案内する、短編小説の醍醐味だ。短編小説は短い だけに、あらゆる技法を駆使した作品にならざるを得ない。ただし、第一歩で読者をつかむと、短いだけに、実験 的なこと冒険的なことが許される。これが面白い。
短編小説は、ある意味、スポーツの観戦とも似ている。野球のルールを知らないと、野球の試合はまったく面白く ない。実は、読者の大半は、短編小説に張り巡らされた技巧や仕掛け(これは、ミステリーやエンターテイメントに 限ったことではない)を知らず(というか意識せず)に読んでいる。意識させないのが作家の力量だからこれは当然な のだが、これを意識して読むと、短編小説は、もっと楽しめるのである。
本書では、小説作りの源泉と技をも教えてくれる。とアマゾンのレビューは書いてあるが、個人的には、ストーリ ーの技術的なことよりも、ストーリーの発想のきっかけや、その表現を選択した意味などの細かい点が、「うんう ん」とうなずける。実際に小説を書いている者のはしくれとして、そういった「感覚」で知っていたことを「意識 的」に説明できるというところに、阿刀田高氏は本当に短編形式をよく極めているなあ、好きなんだなあ、という ことが伝わってくる。
印象的な言葉を引用しよう。
「よい小説は、全部を書ききらずにおいて、読者の参加を待つところがある」
これは、第七章の志賀直哉で語られている。簡単に言えば、その心情すら描写されない脇役の一人に視点や焦点を 移し、別の作品が発想できうる、という作品の力のことである。
だからこそ、そういった作品は右から左に忘れ去られることなく、短くてもしっかりと読者の心の中に残るのであ ろう。
向田邦子、芥川龍之介、松本清張、中島敦、新田次郎、志賀直哉、夏目漱石、ロアルド・ダール、エドガー・アラ ン・ポーなど十人の作家の、名作やユニークな作品を具体例として選んで特徴を解説し、短編の構造と技法に迫っ ている。
個人的には、技巧を凝らした面白い短編を無性に書きたくなってしまった。当然、ここで語られていることを知れ ば、短編をより楽しく読むことができる。作家たちが凝らす小説技巧を「うまいなあ」とか「なるほど」と味わう ことができると、短編小説は三倍は面白くなる。

以下目次
第1章 短編小説はおいしいぞ
第2章 向田邦子『鮒』そして、その他の短編
第3章 芥川龍之介『トロッコ』『さまよえる猶太人』そして、その他の短編
第4章 松本清張『黒地の絵』そして、その他の短編
第5章 中島敦『文字禍』『狐憑』そして、その他の短編
第6章 新田次郎『寒戸の婆』そして、その他の短編
第7章 志賀直哉『赤西蠣太』そして、その他の短編
第8章 R・ダール『天国への登り道』そして、その他の短編
第9章 E・A・ポー『メエルシュトレエムの底』そして、その他の短編
第10章 夏目漱石『夢十夜』そして、その他の短編
第11章 阿刀田高『隣の女』そして、その他の短編

短編小説 のレシピ集英社新書←アマゾンへGo!

私も短編小説を書くのは好きだ。こんな作品があるのでお暇な方はお読みいただきたい。ちゃんと技巧も凝らして あります(←ちゃっかり自作の宣伝・笑)↓
「毛布の下」(栗林 元)

また、作家安西啓氏の下記コラムも創作者には有意義である。
ショートショート創作講座
この記事は文芸社のホームページにある。

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「幻詩狩り」(川又 千秋) 中公文庫
1984、日本SF大賞を受賞した作品である。
1948年、パリ。シュルレアリスムの旗手、アンドレ・ブルトンは、一人の詩人を待っていた。フー・メイという名 の詩人は、かつてその作品でブルトンに衝撃を与えた。彼は、言葉によってブルトンの眼前に「異界」を現出させ 、また「鏡」を作り上げて見せたのだ。フー・メイ最後の作品「時の黄金」は、シュルレアリストたちの間に静か に広がっていき、彼らを次々と破局へ導く。時をへて日本の出版社が「時の黄金」を再発見する。そして・・・。
言語SFの傑作である。当初は、より正確に事実を伝えるための手段であった原始の「言葉」が、やがて世界を記述 するのではなく世界を作り上げ変貌させていくのである。個人的には「SFってここまでやれるのか」と感銘した作 品である。
「言葉」により、人間は、数や名前から、より複雑で抽象的な概念や情緒を考え伝えることができるようになった 。私見ではあるが、人類最古の発明品である「言語」は、色も形も質量もないが、ある意味「幻象機械」なのでは ないだろうか。
幻詩狩り 中公文庫←アマゾンへGo!

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「幻象機械」(山田 正紀)
日本人に特異的な右脳と左脳の機能差がある。言語脳(左脳)、非言語脳(右脳)の機能分担が、西欧人ほど厳密では ないのだ。例えばコウロギの鳴き声を左脳で聞く。そして秋の情感を感じる。一方、西欧人はこれを右脳で聞き、 単なるノイズとして処理する。
日本文化のワビサビなどは、日本人の脳機能の特殊さが生み出したものなのだ。
その研究から、無中枢コンピュータを構想する大学助手谷口が父の遺品に石川啄木の未発表小説を発見したとき、 我々日本人の脳に刻印されていた禁忌の謎が次第に明らかに…。日本人の"正体"に気づいてしまった啄木の、そし て彼の運命は。
山田正紀的なアプローチの作品である。啄木の未発表小説と谷口の物語が交互に繰り返される。虚構内虚構を楽し む構成で、これは当時活字や映画や演劇などで大いに流行った手法である。この物語では幻象機械は「イリュージ ョンプロジェクター」と呼ばれている。
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CASSHERN(キャシャーン)
見ました。
よかったよ。映画というより映像詩だ。でも満足している。
CG使いすぎとか、アクションが少ないとかの文句をつける人たちもいるようだが、特撮オタクでない方なら満足で きると思う。※これは特オタの人を馬鹿にしているわけではないので誤解のないよう。かくいう私も特オタの一人 ですから(笑)
「これは反戦だ」と、諸手をあげて賛美する方たちも多いですが、それもちょっと違うような気がする。
むしろこの映像の背後に横たわるのは、「和をもって尊し」とする、仏教的な、すごく東アジア的な思想であろう 。
生きていくことによって、必ず何かや誰かを傷つける、それが人間の業である。だから、正邪を「裁く」前に、ま ずお互いを、「許しあう」ところから考えていかないか、ということ。
2004年の現在では、単純な善悪の戦いだと、本当にオトギ話になってしまう。憎しみが憎しみを生む、そんな戦争 は中東の歴史を見ればうんざりするほどあるではないか。憎しみの連鎖を絶つ、ということの難しさ。
だが、いくら理想を唱えても、強大な力を背景にして、自分の利益のために、他者を踏みにじるような行為が一向 になくならないのもまた事実。それこそが人間の業なのである。
この映画の一番のメッセージは、その業のもつ悲しさを俺たちの前に提示することなのかもしれない。
だからこそ、娯楽映画としてのカタルシスを求めた観客からはブーイングを受けるわけである。
原作アニメとはまったくの別物と考えて評価しよう。ただし、原作の中に潜在していた各種の要素(父と子の確執、 とか)は非常に大切に残されている。
当時アニメを見ていた子供たちも、こんなに考える大人になったのである。アニメにとっても原作冥利に尽きるの ではないだろうか。
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「のど自慢 」
室井滋、ハウンドドッグの大友康平、竹中直人など個性派俳優出演のコメディ映画。国民的番組「のど自慢」の晴 れ舞台に立つまでのたった3日間を井筒監督が描く。
売れない演歌歌手・赤城麗子の造型が秀逸。
さえない営業の日々に倦みつかれているのだが、最後はやはり歌によって救済されるのだ。
「歌・歌うこと」を通して、さまざまな人々の人生の瞬間を、三日間に集約して描いた傑作コメディーである。
俺は、昔からその時々に「今の俺のテーマソングは※※だ」という曲がある。そして、実は多くの人にそれがある んだよ、という映画である。
多くの人が、人生の切実なものを歌に託している。
ラストのタイトルロールで、登場人物たち全員が歌う「上を向いて歩こう」が流れたとき、ちょっぴり涙腺が緩む かも。何度も何度も見直せる、いい映画です。
登場人物に一人も悪いやつがいない。誰も死なない。誰もがハッピーエンド。いまどきこんな気持ちのいい、しか もエンターテイメントの枠を踏み外さずに楽しませてくれる映画を撮るのは井筒和幸ぐらいしかいないだろうな。 井筒監督はピンク映画「いけいけマイトガイ性春の悶々」(1975)の頃から光ってたもんなあ。
ちなみに、今までの俺のテーマソングの中で一番暗いのは、うつ病の頃の「天国への階段」かな。

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30ポイントで読み解く「ローマ帝国衰亡史」(金森 誠也) PHP文庫
1776年に発刊され、たちまち稀代の名著と評されたギボンの不朽の傑作『ローマ帝国衰亡史』。
本書は、帝国の絶頂期から滅亡へといたる『ローマ帝国衰亡史』の骨子と、そこには描かれていないがローマ帝国 史を語るには避けられない建国期から帝政の黎明期へといたる発展途上の時代の動きを、あわせて30ポイントにま とめて解説。

目次
[1]最初のローマ帝国はどれほど大きかったのか
[2]地中海の覇者カルタゴとの戦争はどうしておきたのか
[3]ローマは天才戦略家ハンニバルと、どう戦ったのか
[4]どうしてアフリカを手中にできたのか
[5]なぜ周辺民族や奴隷の反乱が多かったのか
[6]カエサルはどのようにガリア征服を成功させたか
[7]クレオパトラは、なぜカエサルを選んだのか
[8]カエサルは、なぜ暗殺されたのか ほか

ギボンの書かなかった、共和制ローマの建国からポエニ戦争までもカバーされているので助かる。
帝政ローマといっても、皇帝は民衆の人気に支えられ、いわば役職・機関であるということがわかる。アジアの皇 帝とは一味違うのだ。だから解放奴隷の息子から皇帝になるものもいるし。
またローマが東西に分かれた後、東ローマ(ビザンチン)帝国の公用語がラテン語からギリシア語に変わる、という 一言で、東ローマ帝国はもうイタリアではないということが分かる。高校の教科書もこういう勘所をつかんだ記述 なら面白いのになあ。
実に面白い。解説本といっても馬鹿にできないなあ。

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