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2004年6月のブックガイド

このページはエキサイトブログで2004年6月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
新規の書評は
ここ、シーサーブログの「新・読書記録゛(どくしょきろぐ)」
でお楽しみいただけます。


「六番目の小夜子」(恩田陸・新潮文庫)
「たたり」(シャーリー・ジャクソン)創元推理文庫
「慟哭のリング」葉 青 (読売新聞社)
「キリン 1 (1)」 東本 昌平 ヤングキングコミックス
「さらば青春の光」
「僧正の積木唄」(山田正紀 )本格ミステリ・マスターズ

 

「六番目の小夜子」(恩田陸・新潮文庫)

「場の魔力、場の魅力」

私たちの高校には伝説がある。
三年に一度、卒業生から在校生に継承される「サヨコ」の役。
サヨコには義務がある。サヨコをつとめる者はだれにもそれを悟られてはならない。その年の文化祭での全体講演の劇「サヨコ」のシナリオを書かねばならない。サヨコを勤めることを承諾した印に、一学期の始業式にクラスに赤い花を飾ること。
サヨコが無事に勤められた年は、学校にとってよいことがある。逆に失敗した年はよくないことが起きる。
そして、今年は六番目のサヨコの年でした。

どうです、この設定でもう私はKOされた。「やられた」と思った。読まずにはいられない。
さらに、この年のサヨコは「二人いた」のだ。
校内に伝わる「サヨコ伝説」はなぜ始まったのか?
なぜ続いているのか?

伝説が途絶えようとした年もあった。しかし、それを補強し伝説の継承を助けただれか、何かがいたのでは?私(読者、ちなみに43歳男)は、伝説の謎を追いかける高校生達と一緒に、あの頃に戻っていた。この物語のいとおしさは、帰らぬあの時代の思い出に物語を重ねてしまう私の世代には特に効く。読み進むうち、舞台の教室・廊下・校舎が自分の母校になり、登場人物は同じクラスの連中になった。(ひょっとすると、スティーブン・キングのハイスクールものホラーを読むアメリカのおじさんおばさんもこんな感覚を味わっているのかもしれないなあ)
学校という閉ざされた装置を舞台に、テイストはホラーなれど、作者が描く(しかも上品に、今時なんと貴重なことだろう)のは輝ける「17歳」たちの恋と冒険だ。
だが本当の主人公は作者の筆で緻密に描写される学校という、いわば「時の流れの止まった場」だ。この「場の持つ魔力」こそが、この物語の主題なのであろう。
このテーマは、学校から故郷に装置を移して恩田陸の続く「球形の季節」でさらに鮮明な形を取る。
これもおすすめだ。
恩田女史自らが脚本化を手がけたNHKドラマ「六番目の小夜子」(DVD発売中)も必見だ。微妙に登場人物が変えてある。しかも、美少女てんこもり(笑)

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※この記事は、私の別ページ「1行ブックガイド」「デジタル文芸」から転載したものです。

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「たたり」(シャーリー・ジャクソン)創元推理文庫
幽霊屋敷と噂される〈丘の屋敷〉。心霊学者モンタギュー博士は三人の協力者を呼び集め、調査を開始した。迷宮のように入り組み、彼らの眼前に怪異を繰り広げる〈屋敷〉。そして、一冊の手稿がその秘められた過去を語りはじめるとき、何が起きるのか?
傑作中の傑作である。ヘルハウスものの古典。幽霊屋敷調査に訪れた一行を襲う怪現象。
しかし、読みようによってはすべて登場人物たちの幻覚ともとれる。この曖昧な不安がすごい。
エリーナという不幸な生い立ちのエスパーが主人公だが、この人物の掘り下げがうまい。だまされたと思って買うべし。再読・再再読に堪える家宝のような作品だ。私は毎年1回は読むことにしている。
ホラーの教科書。俺はハヤカワから出ていた「山荘奇談」というタイトル時のものを読んでいる。
映画「ホーンティング」の原作だが、個人的にはロバート・ワイズ監督の「たたり」が一番だな。原作の恐怖感がよく出ていた。
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「慟哭のリング」葉 青 (読売新聞社)
女同士の熾烈な闘い・女子プロレス界における、中日混血児汪紅華の新人からプロ引退までを描く青春小説である。主人公と同期に女子プロレスに入ったキャラクターたちの造型がすばらしい。リアルである。けっして絵空事でない重みがあり、俺は一気に読み終えた覚えがある。
ちなみにこの葉青さん、現在日本に暮らす中国人女流作家で、まるでモデルみたいな美人でもある。
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「キリン 1 (1)」 東本 昌平 ヤングキングコミックス

バイクを描かせれば、この人しかいないというのが東本 昌平。
この「キリン」を読み始めたころは、ちょうど主人公が俺と同じぐらいの世代だった。
単にメカだけでなく、「バイクに乗る」「乗り続ける」という人間のメンタリティーが「そうや、そうなんや」と胸に迫る傑作である。
特に初期4巻で姿を消す主人公キリンを、いつまでも胸にとどめて生きていく脇役たちが立ってくる5巻以降がわくわくするほどである。
二輪をテーマにした多くの作品のようにライダーサイドだけではなく、二輪に魅せられて「こっち側」にやってくる人間の心理もよく描かれている。これを呼んでライダーになった人もかなりいるのではないだろうか。 ちなみに「こっち側」とは「バイクに乗る人」というより「乗り続ける」人、「あっち側」というのは「何であんな危ないものを」とか「汚い」とか「うるさい」という人たち。
バイクだけは、乗って見なければわからない。でも乗った上で、やっぱり車でしょう、という人がいるのも確か。それはやはりその人は、俺たちから見て「あっち側」ということである。「あっち側」でもいっこうにかまわない。
ただ、バイクの恍惚を味わえる自分は、「こっち側」にいられることを神様に感謝するだけである。
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「さらば青春の光」
ザ・フーのアルバム『四重人格』を原作として製作されたフランク・ロッダムの情熱的な作品。ということになっているが、お話はちっとも情熱的ではない。むしろ苦く沈鬱な物語である。
モッズカルチャーやスクーターのかっこよさを期待してみると少し肩透かしかも。
何しろいきなりオープニングの中で、主人公はバイクに乗るロッカーたちから、馬鹿にされ追い抜かれていく。リアルである。
もともとモッズのスクーターは車やバイクを買えない低所得層の若者たちが、憧れの車のパーツでスクーターをデコレーションしたのが始まりだからだ。
それゆえに、俺的には大傑作である。
モッズとしてのカッコよさに命をかけるジミーは、夜毎仲間と遊び歩くことだけが生きがいの若者だ。ブライトンの週末、ロッカーたちと派手な暴動を起こし、憧れの彼女ステフとも愛を交わす。モッズの英雄エースとともに逮捕され、得意満面のジミー。
しかし、日常に戻ると、上司と言い争って会社を辞め、家庭からは追い出される。仕事を辞めて無職になったジミーは、モッズの仲間からは「何を考えているんだ」と相手にされなくなる。ステフからも嫌われる。 祭りの去ったブライトンの町を、一人とぼとぼと歩き回るシーンは苦い。ステフと愛を交わした路地裏のシーンで目頭が熱くなった。
愚かな若者の物語であるが、俺が初めて場末の劇場で見たときが19歳。まさに愚かさの真っ只中だった。 ジミーは、モッズというファッションで演技している自分と、本当の自分との乖離を感じはじめたのだ。周りの連中のように、日常とファッションを適当に使い分けができない愚かしくも不器用なジミーに、当時精神的に孤独だった俺は、自分の姿を重ねていたのだった。
憧れのヒーロー、モッズのエース(スティングがやってるよ)が実は普段はホテルのベルボーイとして、客の荷物運びをしていることを知ったジミーは、エースのスクーターを盗んで、ドーバーの崖を突っ走る。
ラストシーン、スクーターが崖から飛び出し、岩にあたって砕け散った時、俺は映画館の隅でさめざめと泣いていたのだった。

音楽は、オリジナルの「四重人格」のほうがいいよ。俺的には。
個人的には、ああいったスクーターに乗って、おしゃれな町でつっぱらかってみたい気もするね。残念ながら、もうハゲオヤジだけど(笑)
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ザ・フーは大好きで、自分の作品の中でも引用したことがある。
やっぱりほろ苦い物語である。

心獣の詩〜THE SONG OF A MIND-BEAST←官能ホラーだから、未成年の方と女性はご遠慮いただきたいところです。だって恥ずかしいじゃないですか。

追記6月26日
この映画は、少年が思春期というアンバランスな時代と別れを告げる、というか決着をつけていく数日を描いた物語だ。
だからこそ、俺は何度も何度も見返してしまい、何度も何度も考える。
この映画の初見の適正年齢は17から25歳ぐらいではないだろうか。自分の心に決着をつけた人間こそが、この映画の苦さを実感できるのではないかと思えるのだ。
そして46歳(今)になっても、当時(思春期=異性にもてるかどうか、が最大の価値であった時代)の心の揺らぎや、劣等感や疎外感や、そして、結局自分は「一人だ」という自覚にいたるまでの心の軌跡をたどることができるのだ。
また、この映画には、チャーミングな女の子が出てくるが、ヒロインのステフより、みんなから馬鹿にされている「モンキー」という女の子のジミーに対する一途な視線が、いとおしく感じる。ま、それだけ大人になったってことだね、俺も。
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「僧正の積木唄」(山田正紀 )本格ミステリ・マスターズ
「僧正殺人事件」(ヴァン・ダイン)は終わっていなかった-。反日感情が日ごとに高まるニューヨークで、贖罪の山羊に供されんとする日本人を救うため、あの名探偵が立ち上がった! 黄金期本格の香りが21世紀に甦る長編。ということになっている。
あの名探偵とは、金田一耕介である。
本家の中で語られる、一時米国を放浪していた金田一が、パトロン久保銀蔵と出会うきっかけとなったという事件がこれだという設定。うまい。
私には、何を読もうか迷ったときは、この作家のものを読んどけば間違いない、という作家が少数ではあるがいる。その数少ない作家の一人が山田正紀である。「神狩り」とか「弥勒戦争」のころからのファンである。そして一度も裏切られたことがない。
ミステリ作家としての山田正紀が「本格」のそれも「探偵小説」にまい進しているのだから、この作品が過去の作品に対するリスペクトに満ちているのもうなずける。
以下、少しネタバレだが、個人的には、被害者二人が同一人物だった、というのもありかなと感じた。

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