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2005年7月・8月・11月の
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このページはシーサーブログで2005年7月・8月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
新規の書評は
ここ、シーサーブログの「新・読書記録゛(どくしょきろぐ)」
でお楽しみいただけます。


「「大江戸庶民事情 江戸のまかない」」
「紫式部物語―その恋と生涯」
「阿修羅城の瞳」



 

「「大江戸庶民事情 江戸のまかない」」
江戸時代は、のどかだった。俺たちは、戦後、社会主義的な歴史観を持った教員達に間違った江戸時代観を植え付けられていたのだった。先月に引き続き、大江戸ものを読んでいるが、目から鱗が落ちる思いだ。
江戸時代は武士階級に支配され、農民は搾取され、町人は貧乏で、いつでも一揆などの階級闘争が起きる寸前の前近代だ、というのが、俺たちが学校で習ったこと。ところが、この本を読むと、そうではないことが明らかになる。また、同時に、武士階級も商人階級もそろって連を作って楽しんでいた狂歌が、どうして社会の授業では「武家支配の抑圧に対する人民の抵抗手段」になってしまうのか。
なかでも初めて知ったのが、江戸の上水。時期的にはロンドンの水道と同時期だが、その規模と管理など、世界で最初にして最大の事業である。パリよりも早い。市民の識字率なども含めて、江戸時代に、明治維新以降の近代化の礎はすべて完了していたということがよくわかった。

目次

●江戸という時代
江戸との出会い
教科書の江戸時代
元禄という時代
香港と江戸
江戸を見る
外国崇拝大国
江戸の中の近代
●江戸の楽しみ
江戸のファッション
江戸庶民のおかず
江戸のうなぎ屋
遊芸にかけた江戸庶民
江戸の出版事情
拳の話
●江戸の暮らし
江戸川柳と結婚
江戸の農地
木戸の話
無から有は生じない
小判と猫のエネルギー
昔のつくり酒屋
『上水記』を読む――江戸の飲み水事情
●言葉と江戸
西郷銅像の碑文
受け身形にこだわる

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「紫式部物語―その恋と生涯」
驚くべき事に、著者は外国人、ライザ・ダルビー女史。
これがまた、素晴らしく源氏の世界を描いている。
孫娘が発見した紫式部の回想記のスタイルで、彼女がいかに源氏の物語を書き始め、そしてそれが評判を呼んで中宮彰子のおそばに仕えるようになったかが描かれる。
世界最古と言われる源氏物語が、一人の若い女性の宮中に対するあこがれから生まれ、やがて、それが作者の成長と共に、当時の女性の恋愛観、人生観、恋する喜び苦しみをタペストリーのように織り込んだ大叙事詩へと変わっていく。
特に感心したのが、ライザさんの美的センス。
中宮に皇子が生まれ禁色となる描写。女官たちが白無垢の制約の中で、折り目や重ね合わせでそれぞれおしゃれをする。その白い着物と女官の黒い髪とのコントラストで、宮中が雪景色の朝のようになる。
このあたり、紫式部日記を元にしてはいるが、祝いの儀式、華麗な宮廷行事の様子が克明に描かれ、同時にそうした華やかさに同化できない自己の内面が鋭く凝視されている。
ライザさん、あんたの脳は立派に日本人だよ。
なんと、彼女は16歳で英訳の源氏に魅了され、日本を研究。大学時代には来日して「市菊」という名前で芸者までやったという。 そして、着物の研究で博士号を取得している。
最近は、今年の年末に公開予定の「サユリ」という映画のスタッフになっているという。
物語の最後には、未公開だった、という設定で、宇治十帖の最後に「稲妻」という最終章が与えられている。これはライザ女史の創作だが、素晴らしい結末になっている。
日本人必読。
そして、この素晴らしい作品を書いてくれた作者と訳者に心からお礼をいいたい。

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「阿修羅城の瞳」
 「けれん」とは、歌舞伎用語で、宙乗り(役者が仕掛けによって空中浮揚する)や早替り(1人の役者が瞬時にして他の役・扮装に替わる)など、見た目本位の奇抜な演出のことを言う。さしずめ、SFXを駆使した映画などは「けれん」そのものであろう。 この映画「阿修羅城の瞳」は、まさにその「けれん味」を存分に味わってくれ、という作品。
 「阿修羅目覚める時、逆しまの天空に不落の城浮かび、現し世は魔界に還る――。」、江戸の夜に跋扈する鬼と闇の奉行鬼御門 の戦いを背景に、もと鬼御門の歌舞伎役者・病葉出門(わくらばいずも)と女盗賊つばきの恋と阿修羅の秘密が交錯する。
 冒頭いきなりタイトルバックで展開される闇の奉行鬼御門と鬼たちの戦闘は、異国趣味の夜の町で、「ブレイド」を思わせるテンポで、観客の心をわしづかみにする。
 ブレイドに似ているように感じるのは、物語に対するスタンスもしかり。映画全体が「クール」なのだ。狂言回しとして登場する戯作者鶴谷南北。恋にやつれて鬼と化すつばきと出門、阿修羅の力を求めて鬼となる邪空。そして、南北はドラマトゥルギーに身を捧げて戯作の鬼と化す・・・。なんとも「かっこいいストーリー」ではないか。
 そして、俺たちを夢中にさせるのは、染五郎と宮沢りえの美しさよ。この二人の美しさが、もう一つの「けれん」になっている。特に宮沢りえの美しさに、俺は打ちのめされた。宮沢りえ演じる椿の可憐で意地らしく強いことよ。こんな女に殺されてみたいものである。
 ここまで胸躍る邦画は久しぶり。
 菅野よう子の音楽もよい。無国籍アジアンテイストで、映画の妖艶な恋とアクションにぴったりはまっている。むしろこの作品の魅力の半分は、この音楽が支えている。


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