このページはシーサーブログで2005年5月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
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「PARASITE DOLLS 劇場版」
『アニマトリックス』『キル・ビル』の制作スタッフが贈る劇場SFアクションアニメ。2034年、“ブーマ”と呼ばれる人造の亜人と人間が共存する東京で、ブーマの犯罪に立ち向かう高機動対テロチーム「A.D.POLICE」の特殊組織“ブランチ”の活躍を描く。
キャラも演出もとことんクールに「背伸び」している。その点が、ちょっと鼻につく。でも慣れると気持ちよくなる。
絵柄は嫌いじゃない。というのも、私が漫画家になりたかった三十年前ほど昔には、もっとこんな絵柄のコミックスが日本でも出ないかなと思っていたのである。そして、その数年後から、大友とか、板橋しゅうほうとか、俺の好きな絵柄が増えてきたわけ。
さて、人工知能やロボットと人間の関係を描いたSFは星の数ほどあるのだが、その大半は次の2パターンかその組み合わせである。
・効率や能率を第一義にした機械としてのロボットや知能(全体主義とか非情な組織なんかの暗喩が多い)と人間の関係を描いて、人間の「心」にスポットを当てる。
・ロボットや知能を、「嘘をつかない」「自己犠牲」という側面から捉え、「究極の善人」として人と対比して描いて、人間の心にスポットを当てる。
この作品は、まさに後者。人間に奉仕して人間を守るプーマ。その擬似的な感情を描いて、受け手である人間の心に少しだけ迫っている。こういった感情は日本人独特のものかもしれない。日本の一般民生用の市販ロボットが、愛玩用のアイボであったことと比べ、アメリカでのそれは、「掃除機ロボ・ルンバ」であったし。
二つ目のエピソードに出てくる、イブという娼婦ブーマがなかなか魅力的だった。「人形」に潜在するエロティックな魅力をストレートに表現するとこうなるのであろう。
このシリーズを通して見たくなった。
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「大江戸ものしり図鑑―ひと目で八百八町の暮らしがわかる>」
江戸時代の庶民を中心とした時代様相と生活環境を、絵画資料を主軸に展開させ、在りし日の姿を眼前に再現する。江戸時代には日常茶飯であったが、現在は廃れてしまった事柄を中心に取り上げている。94年刊を改装したもの。日本は文明国だと思いましたよ。
面白かったのは、絵が多くてしかも江戸の庶民のユーモア感覚が抜群なこと。
例えば、江戸は慢性的に女性が少ない都市なので、吉原が発達したとか、さらに女性の力が強くて、階級が下々になるほど「かかあ天下」であったとかの話の最後に、当時の川柳が、「間男をせぬを女房恩に着せ」とか添えてある。
また、だらしない格好で寝そべって話しかける父を、一切無視している母と娘たちのひな祭りの画には、「ひな祭り旦那どこぞへ行きなさい」の句。
思わずニヤリとしながら、ご先祖に思いをはせてしまった。いや、日本人は面白いよ。
時代小説ファンは必携。
目次
カラー図版 江戸の華
第1部 町と名所
・世界一の大都市
・江戸八百八町
・江戸名所
第2部 社会と住民
・行政と司法
・顧客商売
・士農工商
・暮らしの基準
第3部 住居と生活
・住宅と家財
・衣服と流行
・外出具
・結髪と化粧
・食べ物と嗜好品
第4部 慣習と人生
・年中行事
・信仰と迷信
・人生行路
第5部 文化と趣味
・町人文化
・遊びと趣味
・物見遊山
第6部 芸能と娯楽
・江戸歌舞伎
・大衆娯楽
・別世界吉原
・市中の性風俗
第7部 変貌
・災害と異変
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