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2005年1月のブックガイド

このページはシーサーブログで2005年1月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
新規の書評は
ここ、シーサーブログの「新・読書記録゛(どくしょきろぐ)」
でお楽しみいただけます。


「はだしのゲン」中沢 啓治
「満州帝国」がよくわかる本
「ペルソナ」榊原史保美 双葉社
「カウンセラー」松岡圭祐 小学館
「カブキの日 」 新潮文庫 小林 恭二 (著) 「プレイ-獲物-(上)」ハヤカワ・ノヴェルズ マイクル クライトン

 

「はだしのゲン」中沢 啓治

年末31日から正月3日まで、胃腸カゼでダウンしていた。
その間に、10巻一気読みしたのが「はだしのゲン」。
ちょうど俺の中学1から2年という、漫画空白時代にジャンプに連載されていた作品で、実は通して読むのはこれが初めて。何度か手に取る機会はあったのだが、文部省やPTAや左翼系の団体などが推薦していたりすると、作品イメージにいらぬフィルターがかかってしまい、なかなか読むには至らなかったのである。
で、これが、すごく良かったのである。まず、青春物語として正当派である。また戦争に対する視点が、決して被害者一辺倒でないところも好感が持てた。
俺の小中時代の社会などでは、太平洋戦争や日中戦争は一部の軍部の過ちで、国民の大多数は被害者です、というような論調でまとめられており、日本は唯一の被爆国ということで締めくくられていた。子供(中学生ね、そのころから三一書房とか読んでいた、いやな子供です・笑)心にも、原爆を日本国の戦争犯罪の「免罪符」にしているなと感じたものである。
が、「はだゲン」では、戦争熱に浮かされた国民や、朝鮮人に対する差別などがきっちり描かれ、原爆を落としたアメリカに対する恨みや怒りと同様の比重で、戦時に疑問を持つゲンの父親を非国民として差別する区長のような小ボスや特高、天皇などへも怒りの矛先を向けている。むしろ、そういった日本人のいやらしさを直視したところに、この作品の優れた部分があるように思える。
二児の父(俺です)として、一番の涙は、末の妹、知子(乳児)が死ぬところである。子供に罪はないよな。そんな弱い者が死んでいく戦争に大儀も糞もあるものか。
ゲンは、大切な仲間や肉親を原爆症で失っていく。ゲンたち自身も、いつ襲ってくるかわからない原爆症におびえているのだ。それでも前向きに生きていくゲンたちを、読者はいつしか応援しているのである。
ということで、まだ手に取ったことのない人は、必読ですな。なんたって、ストーリーが面白い。 教育関係の方で頭の固い人の中には、少数ではあるが、下品、とか、恨み節、とか、左翼などという人もいますが、そんな部分は、このマンガのほんの一側面にすぎず、決してこの作品の価値を損なうものではない。
ゲンは、俺や、あなたや、君と同じ庶民なのだ。そして、戦時に一番最初に傷つき死んでいくのもまた庶民なのである。
〔コミック版〕はだしのゲン...
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「満州帝国」がよくわかる本
昭和7年、日本が中国東北に移民500万人構想で築いた巨大国家、満州帝国。その誕生の背景から崩壊までの経緯を20ポイントで解説している。
よくまとまっていて面白い。
アマゾンのレビューには「戦後自虐史観」なんて書く人がいるだろうなと思っていたら、やっぱりいたよ(笑)
この本の、まず評価するべきは、日中戦争への突入が「一部軍部の暴発」というような責任逃れな解説をしていないところだ。
日露戦争で9万人近くの血を流した日本国民の、列強へ仲間入りしたい、列強に取られる前に取る、という大きな願望があったからこそ起きたことだということ。いわば、日本人のルサンチマンが引き起こした戦争だ。関東軍はこの国民の願望をうまく利用したわけ。
思えば、俺の小学生時代(昭和40年代)、社会の授業で教えられた戦争は、太平洋戦争ばかりで、しかも空襲・玉砕・原爆、あたかも戦犯で裁かれた以外の日本人は、みな哀れな戦争犠牲者です、という内容であった。こういった内容に対する反発が、「戦後自虐史観」と言われる極端な教育を生み出したのだろうと推測するがいかがであろうか。
また、「戦後自虐史観」に反発する評論家や学者が、「南京大虐殺」に対して、プロパガンダだ、本当はもっと少ない、という説を、「鬼の首でも取ったように」展開するシーンをテレビなどで見ると、少し悲しくなる。30万人も数百人も、虐殺には変わりない。ベトナムのソンミ村は数十人であれだけの大騒ぎだったのに。
ここで思い出すのが、コメディ映画「弾丸特急ジェット・バス」に出てきたギャグ。雪に閉じこめられたロッキー山脈で遭難したバスを運転していた主人公が、仲間から、「こいつは生き残るために、死んだ乗客を三人食った」と言われて、激怒する。「俺が食ったのは、右足だけ、それも一本だ」(笑)
「プロパガンダだ、本当はもっと少ない」という言葉に似ていない? 諸外国は、そんな冷笑で日本を見ているのだと思うが、どうだろうか。

「満州帝国」がよくわかる本...PHP文庫
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「ペルソナ」榊原史保美 双葉社
能舞台の跡地で発見された死体は、奇妙な面(おもて)をつけていたた。歴史の闇に葬られた幻の能、封印された宗教民画、失われた秘面。すべての謎が、滋賀県湖北の禁忌の里につながっていた。野望に憑かれた男たち、怨念に呑まれた女たち―かりそめの生を呪いながら輪廻を彷徨う幾多の魂に、果たして神は、仮面の下の真実の貌を顕すのか?壮大なドラマの中に人間存在の根源を描破する、気鋭渾身の書き下ろし長編。ということになっている。
なかなか楽しめる長編です。というか、ストーリーと登場人物の軽妙なセリフ回しに、ぐいぐいと引きつけられる。伝奇的な装いで、宗教のパワーゲームを描いた異色作だ。なにより、ダイナミックなストーリー展開が面白い。女性作家ならではだと思わせるのは、登場人物たちの愛憎関係。ちょっぴりホモセクシャル(それもすごくJune的な奴)。
会話がうまい作家だが、惜しむらくは、物語を登場人物の会話で説明しているところが、ままあること。ま、普通に読む分にはあまり気にならないけど。
ペルソナ
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「カウンセラー」松岡圭祐 小学館
独自の音楽療法で高い評価を得ていた女性教諭の家族を惨劇が襲った。罰せられることのない犯罪少年に激しく憎悪を燃やすうち、彼女のなかに冷酷な「もうひとりの自分」が宿りはじめて…。臨床心理士・嵯峨敏也の活躍を描く。
これは感心した。岬美由紀のスーパーアクションではない松岡圭祐。イリュージョンと同じように、ありうる事件で現代を書いている。地に足がついている。そして、なにより嬉しいのは、憎しみからは何も生まれない。正義の名を借りても、憎しみからは憎しみしか生まれないということをしっかりと伝えてくれることだ。
いや、これは本当によかった。なにより面白いし。
カウンセラー

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カブキの日 新潮文庫 小林 恭二 (著)
98年に第11回三島由紀夫賞受賞。
21世紀のカブキ界に君臨するのは、果して誰か―世界が注目するなか華麗な「顔見世」が琵琶湖畔の巨大な船舞台・世界座で幕を開ける。だが、その水面下では、守旧派の名女形と改革派の人気立役者が、凄絶な勢力争いを繰り広げていた。美少女・蕪は、謎の手紙に誘われる形で騒動に巻き込まれ、世界座舞台裏の怨念渦巻く大迷宮に迷い込む。というのがアマゾンの紹介だ。
絢爛豪華な物語である。近代日本で、カブキが娯楽の王者として君臨する、架空の世界を舞台に、物語は、世界座の「顔見世」の進行と、近代カブキの発展史(架空の)が交互に語られる。さらにその興行の舞台裏で、少女蕪と若衆の月彦は、禁断の世界座楽屋を彷徨う。いったい何のために、そして二人は顔見世でどんな役割を帯びているのだろうか。
カブキ・藝、を題材に、作者は芸術と人間、芸能と人間の根元に迫って見せる。
なんともスリリングで面白い。また、少女蕪と若衆の月彦がいいキャラクターなのだ。そして、驚きと謎に満ちた世界座の迷宮・楽屋・・・。
「千と千尋〜」とか「千年女優」のクオリティーでアニメにしてもらうと、すごい作品になると思うよ。プロデューサー諸子、いかがですかな。
カブキの日新潮文庫
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「プレイ-獲物-(上)」ハヤカワ・ノヴェルズ マイクル クライトン
ネバダ砂漠で、1つの実験が失敗した。研究所からは、一群のナノ粒子(分子レベルのマイクロ・ロボット)が流出。ナノ粒子の一群は、自活し、自らを複製する。知性もあり、学習能力も備わっている。つまり、事実上生きているのだ。そして、その行動は「捕食者」としての役割がプログラミングされている。一群は急速に進化し、1時間ごとに世代を経て凶暴化していく。
最新の研究をセンセーショナルにフィクションに取り入れるクライトンならではの作品である。
ナノテクノロジー、コンピュータープログラム、そしてナノマシンを製造するバイオテクノロジー生産ライン。
道具立ては最新だが、登場人物たちは、典型的な現代社会の縮図になっている。
ま、それだけストーリーのおもしろさは保証済みだ。夕食を挟んで四時間ほどで読み終えてしまった。
昔懐かしい、生物パニックものを、最新理論で作ってみましたという作品である。一昔前はSFプロパー(グレッグ・ベアとか)のテーマであったナノテクが、ベストセラー小説のバックボーンに使われるようになったのである。21世紀だなあ。
プレイ-獲物-(上)ハヤカワ・ノヴェルズノヴェルズ マイクル クライトン
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