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2004年12月のブックガイド

このページはエキサイトブログで2004年12月に掲載した書評・映画評覧で構成されています。
新規の書評は
ここ、シーサーブログの「新・読書記録゛(どくしょきろぐ)」
でお楽しみいただけます。


「千年女優」今敏 監督
「イリュージョン:マジシャン第2幕 」 小学館文庫 松岡 圭祐 (著)
「イノセンス」

 

「千年女優」今敏 監督
30年前に、表舞台から姿を消した伝説の大女優・藤原千代子。インタビューに答えて、自らの生い立ち、そして秘められた恋を話しはじめた彼女だが、その実体験と、出演した映画のシーンがいつしか混ざり合う…。現実と回想が交錯し、千代子の秘められた想いが、インタビュアーとそして我々観客の心を揺さぶる。
戦前、戦後を通じて活躍した女優の一代記に、主演映画のシーンが絡みあう。これもまた「時空を越えた恋物語」だ。
 俺が常々考えることがある。アニメの場合、「これは本当にアニメでなければいけなかったのか」、逆にコミックの実写化の場合、「これは本当に実写にするべきなのか」ということだ。
 「千年女優」はオリジナルストーリーで、観客の思い入れのある原作マンガやアニメがあるわけではない。映像自体も実写とCGでも十分実現できる。しかし、俺の中では、この作品は絶対この「アニメ」しかないのだ。なぜなのか。
 千代子のキャラクターに原因があるのではないか。
 「物語」には、絶対に実在の人間が演じてはいけない「役」があるのだと思う。それを理解せずに安易に実写化して失敗したのが「ルパン三世念力珍作戦」であり、それを十分熟知して、人間をとことん「記号化」し、アクションのきめポーズを静止画で演出して成功したのが「キューティーハニー」だと感じるのだ。
 「千年女優」の千代子は、その立ち居ふるまい、表情、思い、すべて実在の人間が演じたとたんにリアリティーを失ってしまうだろう。そして観客の心に萌す「この恋物語が、そして千代子が、永遠であって欲しい」という思いには、年をとり、成長し、次々と別の役を演じていかなければならない人間の役者には耐えられないのだと思う。
 それほどの強度を備えた物語である。アニメという手法で映画を作るに当たり、「アニメでなければならない」という物語を用意する。当たり前のことではあるが、なかなかできることではない。

千年女優

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「イリュージョン:マジシャン第2幕 」 小学館文庫 松岡 圭祐 (著)
千里眼で以前取り上げた松岡圭祐のもう一つのシリーズ「マジシャン」。
今回の主人公は少年・椎橋彬、唯一の趣味はマジック。どうしようもない両親に絶望した15歳の少年は破綻した家を飛び出し東京へ。"万引きGメン"の活躍を知った少年はマジックの知識で万引きを見破り若き万引きGメンとして脚光を浴びる。そしてその裏で、万引きそのものの才能も開花させる。万引きGメンとして活躍する一方で巧みに防犯カメラを欺く彬。やがて舛城徹警部補と天才マジック少女・里見沙希の追跡が始まる。というのがストーリーだ。
松岡圭祐の作品はいつも楽しめるのだが、今回はあわせて感動までもさせていただいた。まちがいなく彼の最高作品ではないか。
マジックによって人とコミュニケーション(それも犯罪で)するしかない少年。彼を追う枡城がいいキャラになっているのだ。なんとしても少年法が適応される期限内に逮捕してやりたい。少年の育った家庭を知った枡城は、そう考える。
また彬が成長していく過程が、リアルで破綻がない。「千里眼」シリーズで岬美由紀や嵯峨たちが抱える悩みが、ストーリーのための設定でとどまっているのに対し、この彬と沙希と枡城の心は、読者の胸に「そうなんだよな」という共感を呼び覚ます。
何より、社会と大人を信用しない彬の造形は秀逸だ。エキセントリックではあるが、誰もが十代の頃、大なり小なり"そうだったよ"とうなずけるのだ。
さわやかなラストも俺的には高得点。
作者の人間観は根本で「優しい」。そして、今の時代、そういう人生観・人間観が、どれほど貴重なものになっているか考えて欲しい。
作者、松岡圭祐、成長したな。この作品で本当にファンになった。

イリュージョン:マジシャン第...小学館文庫
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「イノセンス」
人々が電脳化された近未来。少女型の愛玩用ロボットが暴走し、人間を殺傷するという事件が頻発する。それを捜査する公安9課の刑事バトーは、自らの脳にハッキングを受けるという妨害を受けながらも、真実に近づいて行く…。というのがストーリーだが、まずは絵に驚かされる。とてつもなく饒舌な描き込みである。それが押井作品独特のペダントリーに満ちたセリフに合っている。というか、絵そのものがもうペダントリー。特に、後半のキムの屋敷など、「おっ、ダリ」とか、「おっ、グレコ」というシーンが続く。ガイノイドは、ご存じベルメールの球体関節だし。
 まっ、若い人たちはアニメがきっかけでもいいから、こういった教養も少しは身につけてくれよな、という教育的な配慮かも(笑)
 なぜ人は「自分に似せて人形を作るのだろう」という問い。作品は、人と機械の関係を通して「命」、「魂」とは何だ、と問いかける。二時間どっぷりと「美しい虚構」の中に浸りきれる。ある意味、麻薬のような作品だ。  DVD、「買い」ですよ。
 あまりの画面の素晴らしさに、思わず心中で「とまれ、おまえは美しい(※注)」と叫んでしまいました。と最後は押井的なペダントリーでまとめてみた(笑)
 ※「ファウスト」(ゲーテ)からの引用ね。
イノセンス スタンダード版

関連リンク
ベルメールはいまさらなので、現代の日本で今一番話題の人形作家「恋月姫」さんのサイト↓
Chateau de Lune
こんな妖艶な人形に取り憑かれて破滅していくという甘美な幻想を抱いたりして。

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