我が家の花木(その5)
(Camera; FUJI FinePix 500)

☆クチナシ(梔子)

kuchinashi 暖地にはえるアカネ科の常緑低木。
 花や実を観賞するため庭木とする。
 花は美しく香りがよいので、花飾や香水とし、三杯酢にして食べたり、乾かして茶の香りをつける。
 実は古来、黄色染料とされ、布をクチナシ染とし、無毒なので栗飯などに入れたり、きんとん、たくあん、クワイを染める。
 高さ1〜5m。葉は対生、ときに3輪生、葉身は長い楕円形。托葉は片側が斜めに裂けている。花は6数性、葉腋に1花ずつつき、6〜7月に咲く。
 花冠は白色、後に黄変し、直径5〜8cm。子房は下位で2室。柱頭は棍棒状。果実は楕円体で6稜があり、六つの萼裂片に続く。
 熟すと赤黄色となる。将棋盤や碁盤の脚はクチナシの実をかたどり〈口無し〉を示すという。
 静岡県以西から琉球、台湾、中国中南部、ベトナムに分布する。八重咲き品をヤエクチナシとよぶ。近年よく植えられる大輪の八重咲き品はオオヤエクチナシで、アメリカで改良された。
 全体小型のものをコクチナシ、その八重咲きをヤエコクチナシという。

[薬用] クチナシやコクチナシなどの果実を漢方で山梔子(さんしし)とよぶ。イリドイド配糖体ガルデノサイド<、カロチノイド配糖体クロシンを含む。他の生薬と配合して、消炎、止血、解熱、鎮静薬として、眼科、耳鼻咽喉科の炎症や化膿、黄疸、膀胱炎、月経過多、不正子宮出血などに用いる。打撲傷には単独であるいは卵白や他の生薬と配合して外用する。

[染色] クチナシの果実は、中国の漢代から消炎・止血の薬効が知られていたが、熱水で匙じた黄色液は染料としても用いられた。色素成分はクロセチン。日本でも古くから利用され、《肥前国風土記》にその名がある。また《古今和歌集》巻十九に〈みみなしの山のくちなし得てしかな思ひの色のしたぞめにせむ〉の歌があり、大和の耳成山は一名くちなし山といった。くちなしの実を得て,黄色に下染めして、緋色を得ようとの意である。《延喜式》は〈梔子〉を用いる染色に、〈紅花〉との交染による〈深支子〉と〈浅支子〉をあげている。また食用染料ともなり、瀬戸乃染飯や豊後染飯が今にのこる。


(平凡社「世界大百科事典」より)



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