[薬用] クチナシやコクチナシなどの果実を漢方で山梔子(さんしし)とよぶ。イリドイド配糖体ガルデノサイド<、カロチノイド配糖体クロシンを含む。他の生薬と配合して、消炎、止血、解熱、鎮静薬として、眼科、耳鼻咽喉科の炎症や化膿、黄疸、膀胱炎、月経過多、不正子宮出血などに用いる。打撲傷には単独であるいは卵白や他の生薬と配合して外用する。
[染色] クチナシの果実は、中国の漢代から消炎・止血の薬効が知られていたが、熱水で匙じた黄色液は染料としても用いられた。色素成分はクロセチン。日本でも古くから利用され、《肥前国風土記》にその名がある。また《古今和歌集》巻十九に〈みみなしの山のくちなし得てしかな思ひの色のしたぞめにせむ〉の歌があり、大和の耳成山は一名くちなし山といった。くちなしの実を得て,黄色に下染めして、緋色を得ようとの意である。《延喜式》は〈梔子〉を用いる染色に、〈紅花〉との交染による〈深支子〉と〈浅支子〉をあげている。また食用染料ともなり、瀬戸乃染飯や豊後染飯が今にのこる。