鼻腔(鼻の穴)の中には、吸気を加湿し温めさらに除菌する目的でいくつかのロール状の棚があり、冷たい外気が鼻咽腔を通過して中咽頭に到達するころには温度が約30゜C、湿度80〜90%になっています。

口呼吸によって口腔、中咽頭、下咽頭、喉咽腔、気管などに、細菌の多い乾燥した冷たい空気が通過することになり、歯肉や扁桃、ノドなどの粘膜が腫れを起こします。ノドの近くにある口蓋扁桃や咽頭扁桃(アデノイド)肥大があると口呼吸の傾向はますます強くなってしまいます。

呼吸を楽にするために、下アゴを前に出し姿勢は猫背になります。本来、上アゴの内側におさまるべき舌はダラッとした緊張感のない状態になり、また上アゴの歯列自体も狭くなっている場合が多く、舌はますますダラッとなりやすくなります(図6)。

図6

アデノイド肥大がある方です。口の周りの筋肉をうまく使えないために、頬の筋肉が異常に緊張し、上アゴの歯列は左右から押されて小さくなり、舌のおさまるスペースが充分ではありません。口元にも不自然な筋肉の緊張がみられ、かなり無理をして口を閉じている様子がうかがえます。
また、顔の前方への発育が充分ではありません。矯正装置で上アゴの歯列を広げて、舌が自然に上アゴの中におさまるようにMFT(舌のトレーニング)を行うことで、顔の前方への発育をうながします。そうしないと、顔は下にさがりながら発育してしまいます。

この状態で引き起こされる変化は

1.
物を飲む(嚥下)ときに、舌を上アゴの内側におさめることができずに、歯と歯の間にはさんだり、下アゴを押したりといったデタラメな動作をとります。

嚥下の回数は一日に600〜2000回ですから、舌の力や、口の回りの筋肉の間違った使い方によって間延びした、いわゆるアデノイド顔貌になっていきます。これを助長するのが口呼吸です。
一分間に10回呼吸すると、一日で14400回の呼吸をすることになります。口で呼吸することで、一日に14400回、やはり口の回りの筋肉の間違った使い方をするからです。

口の回りの筋肉の間違った使い方によって、発育期のお子さんの正常な上アゴ、下アゴの成長は期待できません。

**実験**

発育期のサルの鼻の穴をぬい合せてふさいでしまい、口で呼吸させるようにし、顔の成長を調べた実験があります。
口で呼吸する発育期のサルはすべて受け口になってしまいました。人間とサルでは成長のパターンが違うので、人間はすべての方が受け口になるわけではありませんが、口で呼吸することで正常な顔の発育が台なしになってしまうことは、この実験でおわかりいただけると思います。
顔の発育は遺伝だけではなく、環境の影響を受けやすいのです。

2.
物を噛むときに、舌を上手に使えないので片側噛みの癖がつきやすい。つまり、うまく咀しゃくできない。片側噛みの癖がつくと噛む側の筋肉が緊張し、首を左右どちらかに曲げたりするため小さなお子さんでも肩がこったりします(図6)。 やがて、下アゴは横へズレていきやすくなります。こうなると、アゴの関節を痛めたり、首の骨が微妙にズレたりします。

このような小さい頃の歪みに由来する異常な力が、将来の顎関節症につながることも少しずつわかってきました。アゴの関節は3歳で、すでに大人の約70%ができあがっているのです。アゴの関節を痛めただけで、噛み方が恐ろしいほど下手になります。姿勢を正して噛んでいれば首の骨も自然と整ってくるのですが、片側噛みの癖にくわえて正しい嚥下ができなければ、首の骨の自然整復も期待できません(図7)。

図7

(山田 博:機能的視点からみた小児の咬合管理、乳歯列期の咬合管理の実際、ザ・クインテッセンス、15巻、3号、1996年、3月から引用)

首のすわり:忘れてならないことは姿勢を正しくして食べることです。噛むための筋肉は、頭の位置が正しく保たれていることで最大限に発揮されます。頭の位置を正しく保つためには、噛むための筋肉とバランスをとるために頭の後ろの筋肉の働きが重要です。首がすわって、前後、左右のバランスがとれていれば、舌をふくめた顔の筋肉も働きやすくなってきます。
いいかえれば、姿勢を正して噛んでいれば首の骨も自然と整ってくるのですが、片側噛みの癖にくわえて正しい嚥下(飲み込むこと)ができなければ、首の骨の自然整復も期待できません。正しい嚥下(飲み込むこと)はMFT(舌のトレーニング)を行うことでおぼえていきます。

3.
就寝中にイビキをかき、ひどい場合には一時的に呼吸が止まるOSAS(閉塞性睡眠時無呼吸症候群)になることもあります。

4.
口呼吸のため口やノドの粘膜が乾燥し刺激性咳嗽を起こし、これらのことから睡眠が浅くなり傾眠になり、頭痛・頭重感・注意力散漫・記憶力減退など、鼻性注意不能症という状態になる場合もあります。


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