ケナフ全茎の活用とさらなる利用拡大の可能性への考察
私は昨年(平成10年)、神奈川県伊勢原市串橋の農場、約400坪においてケナフ の栽培を試みました。その経験がこれから栽培を実施しようとする人たちの何がしかの 参考になればと思い、考察をまとめて見ました。
まず、私がケナフの栽培に着手した動機は、現在の環境問題とりわけ地球温暖化に対する 解決策の一助になればとの思いに他なりません。 丁度、第二次世二界大戦が終わった頃から化学合成的に生産された生産物が衣食住全体を 支配し始めて、今ではほとんどの生活資材が化学合成的に作られています。 それが、直接に市民の健康阻害(アトビー、シックハウス症候群などなど)を引き起こ しているのみならず、その廃棄時にはダイオキシンの発生等を招来して環境汚染の元凶 になっていることを考えると持続可能な未来を子孫に残すためには、どうしてもパイオ マス資源の活用が急務であるとの思いからでした。 平成10年度の収穫量は本数にして1,500本、現在はその大半を栃木のパルプ工場 にて製紙しております。 また、神奈川大学の釜野教授との提携で各地で無薬剤処理方式 の紙漉きの勉強会を実施して来ております。 それらの経験の中からケナフ各部位の利用については次のような事が考えられます。
A)葉の部分  新葉の時の食味はやや酸味のある比較的、好感の持てる食味を有するので、十分なる 毒性検査を行ってケナフ茶や肥料としての活用が考えられます。
B)靭皮部分  この部分は繊維としての応用また、紙の材料として活用出来る。それからその強靭さ からプラスティックに替りうる素材として某大手プラスティック・メーカーにサンプル 提供して活用法を材究中です。
C)木質部  ケナフの核の部分は木質形状である種の結着材(無害の物)で集積材とチップ化した 状態でハードボード状の試験ビースを神奈川県総合技術研究所の強力のもとで完成する ことに成功しました。
D)樹根部分  根の部分は比較的簡単に掘り起こすことが出来ますので、B)C)と同様な使い方ま たは、炭化しての応用が可能です。
E)各方面との連携状況  神奈川大学との連携関係ははじめからでしたが、いくつかの自治体との連携関係は徐 々に広がりつつあります。平塚市には有形無形のご協力をいただき、五月の同市主催の ケナフのイベントには当方で開発したものを展示する機会を作っていただきました。
以上、簡単に列記しましたが、その開発は漸く端緒についたはかりで、むしろこれから と言う部分が多いのです。それだけに多くの可能性を秘めていると申せましょう。 かかる情勢をふまえて今年は昨年の4倍約6,000本を作付けしました。今は、環 境クラッシュを回避するべく全力を傾注すべきでしょう。私も非力ながらその一翼をに なわせて頂きたいと思っております。
最後に、これからテナフ普及について解決したい点を列記します。
イ)小口生産方式の機械の開発 当方では今回、関係各位のご援助もあり、曲がりなりにも収穫したナナフの利用の目算 をたてることが出来ましたが、各地で個人、市民団体または学校等で栽培を実施され収 穫したケナフを独自に利用を考える場合に少なからず困難を覚えることでしょう。 そこで、小口生産方式でパルプ化する機械の開発がこれからのケナフ普及に不可欠であ ろうと思います。大量生産方式になる前は蒸解(煮てとかす)と叫解(叩いて繊維をつ ぶす)機械があったのですが、残念ながらすでに廃棄されており、やはり新規に作った 方が早いと言う結論でその雛形は西島町の試験所などにあり、交渉いかんでは譲渡も可 能では無いかと思われます。
ロ)より高度の技術開発 前記の爆砕法の技術は国連人学のヤーヴィス・グラビティス教授がノーハウに許しく、 また岐阜入学に実験レベルの爆砕機があり、現在、人を介して実際にどのような効果が 期待出来るかを試験依頼中です。 今の所、実験レベル以上の事は出来ませんが、近い将来に取り組む課題と致します。
ハ)靭皮(表面の皮の下の部分)と木質部の分離利用 靭皮は紙及び繊維をとるのに適当ですが、中心部にある木質部は他の利用面を考える方 が適当と思われます。フランスでは産業用大麻を建装材に使うことが既に実用段階に入 り、防音、断熱、不燃の住宅が出来ています。ケナフの木質部は大麻以上に適当と思わ れ、関西のLFL研究所の阿部博士の所有する技術(シリカハード)を使用しての試験 ピースは耐燃性も優れ健装材として使う大きな可能性を見ることが出来ます。 又、神奈川総合技術研究所の協力で木質部を粉砕チップ化して多糖体の或食品添加物 を固着材料に使って集成材とハードポード状の物を試作したところ、なかなか良い試作 品が出来あがりました。この方面利用開発は今、一押しの段階です。
二)環境教育の−環としての紙漉きインストラクターの養成 現在、神奈川入学と共同で展開している紙漉きの勉強会をさらに広範に広げてゆく為に は、たくさんのインストラクターの養成が望まれるところです。 現在、常設の紙漉きの実演が常備出来る市民エコ・ファクトリーの創設を今年度の秋口 に向けて準備中で、そこではいつでも実演が出来る場所にして参りたいと存じます。 そしてそれらのインストラクターの方が環境教育の具体的な担い手として活躍してくれ る事を期待します。
ホ)堆肥の高度生産の問題 昨年のケナフ栽培に使用した堆肥は牛糞と椎茸の廃菌床で作った物でした。 まったくの手作業でもかなり優秀な堆肥づくりに成功したと思っております。 この方式に攪拌機等の若干の設備を加えることで生ゴミや牛・豚糞あるいは人糞汚泥と ケナフのチップを混ぜる事でこのチップにバイクテリアの優秀な床になる事が判り、高 度生産型の堆肥づくりに新たな道を開き得ると思います。
へ)1年を振り返って 昨年年ケナフの栽培に取りかかってから一年有余、ケナフを全く判らない所からの出発で した。此処まで来られたのは、主として(有)環境技術情報センター中村氏の適切な アドバイスそしてご協力あっての事と感謝しております。 又、行政としては平塚市、海老名市に大変ご協力戴きました。特に平塚市の場合は輸送 面の協力や市主催のイベント等にも参加させて戴きました。平塚市は今後ともケナフ関係 情報のハブ・ステーション的役割を担って下さるそうで、これからの普及に太い柱に なって戴けるでしょう。 更に、神奈川大学は理工学部の釜野教授を中心に永年にわたっての基礎研究を進めてお りまして、学術的な意味でのご指導を戴いております。 私としては主としてケナフの栽培と利用用途の拡大に取り組んで参ります。 神奈川県央のこれらの動きが全国的波及して環境問題、特に2酸化炭素の削減に役立つ 事を切望しております。 (平賀国雄)<fwix0689@mb.infoweb.ne.jp>