YouNet 尾北医師会シリーズ(5)・・・(190926掲載)

「大腸がん検診」
ー便潜血についてー
尾北医師会  加藤幸男
 
大腸がん検診では現在、便に血が混じっているか調べる免疫学的便潜血が実施されています。これは、簡単で一度に多数の献体を検査できるとても良いスクリーニングの方法です。
便潜血
便混血の検査には、化学的便潜血と免疫学的便潜血との2種類があります。前者は血液の主成分である赤血球のヘモグロビンのヘム(実際にはヘムを構成する鉄イオン)を検出するもので、これだと血のしたたるビフテキを食べたり、鉄分の多い食物を摂取すると陽性になる疑陽性がよく見られ、また、口から肛門までどこで出血しても陽性になります。一方、後者の免疫学的便潜血は人のヘモグロビンのみに反応し、牛や豚のヘモグロビンには一切反応しないモノクロナール抗体を使用するもので、極めて特異性が高いものです。しかも、胃や十二指腸からの出血では、小腸内で消化酵素によりヘモグロビンが変性分解されるため反応せず、小腸下部や大腸からの出血に反応して陽性になります。この特性を生かして、大腸がんの検診に利用されています。(ただし、残念ながら痔からの出血にも当然反応して陽性になってしまいますが・・・)

大腸がんと大腸ポリープ
大腸がん(写真1)の多くが大腸ポリープ(写真2)から発生します。正常の大腸粘膜が何らかの原因で遺伝子変異を生じると、勝手に増殖して大腸ポリープとなり、だんだん大きくなり、さらに遺伝子変異を生じて、大腸がんになります。大腸ポリープの直径が1cmを超えるような大きさになると、ポリープ内にがんを合併している可能性が高くなるといわれています。この大腸ポリープや大腸がんの粘膜は正常粘膜より弱く、出血しやすいため便の通過により擦れて少しずつ出血して免疫学的便潜血陽性になります。
写真1 写真2

精密検査
従って、検診で免疫学的便潜血陽性になれば、大腸透視や大腸ファイバー等の精密検査が必要となります。そうすることによって、大腸がんも症状のない段階でより早期に発見されて、手術による治療率が高くなりますし、大腸ポリープが見つかれば、その大多数は大腸ファイバーによる内視鏡的切除ができ、大腸がんになる前になくすことができます。以上のように、大腸がん検診の免疫学的便潜血は極めて有用で、かつ簡単ですので、ぜひ受けていただければと思います。

社団法人「尾北医師会」(大口町下小口6丁目)
犬山、江南、大口、扶桑各市町の地域医療を担う医師会員(現在249人)で構成。尾北看護専門学校、尾張北部地域産業保健センター、地域ケア協力センターを設置、人材育成や保健・医療・福祉サービスの地域ケアシステム化を図る。http://www.bihoku.aichi.med.or.jp/index.html

戻 る