YouNet 尾北医師会シリーズ(2)・・・(190523掲載)

「子どものアトピー性皮膚炎の治療」
尾北医師会 宮 口 英 樹
 
アトピー性皮膚炎(以下AD)は(1)かゆみがあること(2)ADに特徴的な湿疹とその分布があること(3)慢性・反復性に経過すること、以上の3項目を満たせばADと診断されます。近年、気管支喘息、高血圧をはじめ、種々の疾患の標準治療ともいうべき治療のガイドラインがつくられ、これに沿った治療が行われるようになってきています。ADにも治療のガイドラインがつくられ、(1)原因・悪化因子の検索と対策(2)スキンケア(3)薬物療法が3本柱となっています。薬物治療は主にステロイド外用剤(以下ステ剤)が使用されます。ステ剤による治療を希望されない患者さんがみえますが、ステ剤は世界中でADの標準治療として広く使用されており、ステロイド内服薬と異なり全身には作用しないため、適切に使用すれば内服治療のような重い副作用は認められません。また、患者さん、あるいはその両親は、すぐに治ってしまう魔法のような薬を希望されることがありますが、現時点では直ちに治癒させる薬はできていません。診断基準にあるように治療により直ちに治ってしまう湿疹は、ADとは言わないわけですから。
●清潔に保ち脂分を…
子どもさんのADは成長にともない治癒あるいは軽快する場合が多いため、ガイドラインの治療目標は完治を目指すのではなく、湿疹をある程度まで軽快させてADに特徴的な強いかゆみなどを取りのぞき、普通の子どもさんと同じような日常生活が送れることに置かれています。ADの皮膚はカサカサと乾燥しているのが特徴で、正常な人は皮膚の表面の角質層に脂分と水分が十分蓄えられていますが、ADの皮膚はこの脂分と水分が減少しているため、皮膚は乾燥し、ひび割れができ、外から色々な物質が入ってきてかゆみの原因となります。ステ剤はこの荒れた状態を正常な皮膚に近い状態まで改善する働きがあります。正常に近づいた状態でも、ADの患者さんは角質層の脂分が少ないため、皮膚を清潔に保ちつつ脂分を常に補充し続けることが必要で、これがスキンケアです。
●根気よくスキンケアを!
ADの治療で大切なことは、適切な強さのステ剤を使用して早期に正常な皮膚に近い状態とし、軽快後も不足している脂分の代わりとなる保湿剤を使用し続けることです。良くならない人の多くは、ステ剤の強さ、塗る回数などの使用法が適切でないため正常に近い皮膚の状態まで至っていないか、軽快後も保湿剤など使用せず、スキンケアを怠っている場合が多いようです。また、ADは時々湿疹が悪化する場合がありますので、そのような時は再び短期間ステ剤を使用します。このような間欠的な使用法であれば、心配する副作用はほとんどおきません。ステ剤の顔、首での使用は局所的副作用が体、手足より生じやすいため、長期間の使用はできません。また重度のADでは、ステ剤を比較的多く使用することとなります。このような場合には新しく開発されたタクロリムス軟こうを使用すると良い場合があります。一度先生に相談されると良いでしょう。

社団法人「尾北医師会」(大口町下小口6丁目)
犬山、江南、大口、扶桑各市町の地域医療を担う医師会員(現在249人)で構成。尾北看護専門学校、尾張北部地域産業保健センター、地域ケア協力センターを設置、人材育成や保健・医療・福祉サービスの地域ケアシステム化を図る。http://www.bihoku.aichi.med.or.jp/index.html

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