過去の

旬のおすし


今の時季にふさわしいおすしをご紹介しましょう!
月に一度のペースで更新したいと思っていますが…(^_^;)



沖縄の寿司(沖縄県)

《平成14年9月上旬UP》

  
海ぶどうの巻きずし        黒マグロとミーバイの握り寿司

  
イラブチャーの握り寿司     タコス巻き



ほとんど、2ヶ月おきの更新になってます(汗)。
すみません。。。

さて、8月末に、沖縄へ行ってきました!
イラブチャー(ブダイ)やミーバイ(ハタ)など、スシダネの珍しさもさることながら、
沖縄には「寿司屋」がない、ということを知り、オドロキでした。

もちろん、寿司を食べさせる食堂はたくさんありますが、
たいていは、他の和食や麺類も出す。。。
こういう「なんでもあり」なのが、沖縄でいう「割烹」なのだそうです。

みなさん、沖縄で寿司を食べようと思ったら、
「割烹」か居酒屋あたりを探した方がいいですよ!

画像は、ドドンとサービス。4点掲載だぁっ!



南にも 伝わり来しや 江戸握り





謙信寿司(長野県)・うなり寿司(愛知県)

《平成14年7月中旬UP》

  


あっという間に、前回の更新から2ヶ月(汗)。
サボってて、すみませんでした。
お詫びに、今月は2種類をご紹介します。

7月と言えば七夕。七夕と言えば笹。
笹の葉の上に素朴なちらし寿司を置いたのが「謙信寿司」。
長野県飯山市の郷土料理です。
上杉謙信が兵糧に用いたという説からこの名がありますが、
そいつはちょいとマユツバですな。

もうひとつは、愛知の新作「うなり寿司」。
名産「一色ウナギ」(愛知県一色町産・ここ、日本一の養殖ウナギの町)の蒲焼きと
豊川稲荷門前のいなり寿司がドッキング!!
ウナギとイナリで、ウナリね。
一見クドそうな取り合わせですが、なんともまろやか。
(詳しくは、こちらを)
土用の際には、ぜひどうぞ。

さ、いよいよ本格的な夏です!



笹飾り 飾れば近し 夏の声





コイの押し寿司(長野県)
(長野新幹線・佐久平駅弁)


《平成14年5月中旬UP》



♪いぃらぁかぁ〜〜のなぁみぃとぉぉぉ、くぅもぉのぉなぁみぃぃぃぃ〜。
端午の節句は終わっちゃいましたが、まだ5月だ、いいでしょ。。。

というわけで、今月の寿司はコイの寿司です!
コイは名物・佐久の鯉。
八ヶ岳の湧水の中で3年かけて育つ佐久鯉は、
泥臭さがまったくなくて、美味であること、この上なし。

昔は田んぼに放して育てる「水田養鯉」なんて光景がありましたが、
今は、とんと見かけなくなりました。
ともあれ、日本では馴染みの深い魚・鯉ですが、
不思議なことに、コイの寿司となるとゼロ。
それが、なんと、駅弁として登場してくれました。

コイらしからぬ、実に淡白なお味です。

ちなみに、商品名の「恋そめし」は、
小諸義塾で教鞭を執った島崎藤村の詩「初恋」の一説!



五月晴れ 仰ぐ昼飯 コイのすし





花さくらずし(神奈川県)
《平成14年4月上旬UP》



神奈川県逗子市は、桜の街をアピールしています。
「桜の街」にふさわしいお土産を、ということで開発された料理のひとつがこれ。
パッケージを開けると、桜の香りがあたりに広がります。

魚は、淡白な鯛(桜鯛)を使用。
米には赤米を混ぜて桜色をつけるという入念ぶり。
アイディアのみならず、上品さと風雅さでも、天下一品でしょう!

ところで、(どーでもいいことですが)
週刊『漫画ゴラク』に連載の「江戸前の旬」という寿司屋漫画で、
この「花さくらずし」によく似た寿司を登場させ(漫画の方では、握り寿司を桜葉に包んでありました)
そこに居合わせた人が、これを桜餅と勘違いする、というストーリーが仕立ててありました。

話としては面白いのですが、実際には酢や鯛の香りがほんのりと漂い、
目をつむっていても「あ、寿司だ!」とわかるはずですよ。



魚は鯛 花は桜木 メシは寿司!





ハマグリずし(茨城県)
《平成14年3月上旬UP》

  

すみません、サボってました・・・(苦笑)。

もう3月3日も過ぎましたが、
旧暦でお雛祭りをやるところも多いんで、お許しください。
お雛祭りにはつきものの、ハマグリのおすしです。

茨城県の鹿島灘は、全国随一のハマグリの産地!
ところが不思議なことに、ハマグリのすしってのが、伝統的には、なかったんですねぇ。
で、地元のお寿司屋さんが作っちゃいました。

生で握りに、焼きハマを軍艦巻きに、そして煮ハマはちらしずしに!
どれもこれも、ふくよかな味でして、
口の中ではプリプリした身のやり場に困るほどです(笑)。

更新が遅れたお詫びに、画像を2点アップしときます。



ハマグリの すしの香はこぶ 雛の風





ニシンずし(福井県)
《平成14年1月上旬UP》



謹賀新年

石川県の郷土料理・カブラずしは有名ですが、
福井県では大根とニシンを使ったものが多くなります。
庶民的な正月料理なんですね。

同じニシンずしでも、越前よりも若狭の方が大根を大きく切る傾向があります。
どうしてなのか、知りません(笑)。

ところで、ニシンとは「二親」、
つまり、両親敬愛のシンボルだって知ってました?
また、別名は「カド」。
「カドの子」の訛りがカズノコです。



亡き親を 思い出させる ニシンずし





ドジョウずし(愛知県)
《平成13年12月上旬UP》



10月にアップしたつもりでおりましたが、
してなかったですね・・・。 すみません。

愛知県西春日井郡豊山町の秋祭り料理です。
ドジョウをまっすぐに煮るのはずいぶん大変で、
そこは、年の功とでも言いましょうか。

名古屋という大都会に近いのにもかかわらず、
こういう素朴なすしが残っているのは、嬉しいですね。

どうでもいいことですが…
豊山町は、あのイチローの出身地であります。



すしの具に ドジョウは遠く なりにけり





ジャコずし(長野県)
《平成13年9月下旬UP》



ジャコとは雑魚ですね。
長野県佐久平地方の郷土料理です。

このあたりでは「水田養鯉」など、田んぼで鯉や鮒を養殖します。
夏の終わり、田んぼの水を抜くと、たくさんの魚が獲れます。
商売モノにならない幼魚やドジョウなどの雑魚を、
甘辛く煮て押しずしの具としたのがこのすしです。

今は水田そのものが減り、
田んぼで魚を飼うことも少なくなりました。
それとともに、このすしの味も忘れられがちになっています。
独特のほろ苦さは、ちょっと大人の味でしょうか…。



雑魚を煮る 香りに染まる 秋祭り





八丈 島ずし(東京都)
《平成13年8月上旬UP》



周年通じて作られますが、「旬」で「はちじょう」…。
くだらないシャレです、はい・・・。

このすしの特徴は2つ。
ひとつはすしダネとなる切り身を醤油にくぐらせてから握ること。
もうひとつは、ワサビ代わりに練りカラシを使うことです。
タネとなる魚はトビウオをはじめカジキなどの白身魚が多いようですね。

画面に見られる、黒い見慣れないすしは、海苔ずし。
握ったすしご飯に海苔の佃煮が塗ってあります。
これくらいなら、自宅でも手軽に作れそうです。

刺身と海苔の佃煮と練りカラシで、
あなたも八丈の味を再現してみてはいかがですか?



八丈に 名だたるものぞ 島のすし





田子ずし(静岡県)
《平成13年6月下旬UP》



とくにこの季節のものというわけではありませんが、
庭先のミョウガの葉っぱが青々しているのを見て、
このすしを思い出しました。

静岡県の西伊豆の郷土料理で、
田子とはそこにある地名です。

何と言ってもめずらしいのは、このすし、サンドウィッチ状態でしょ?
フツウの箱ずしなら、ご飯の上に具を貼るところを、
さらにご飯の層を重ねて、「どっちから見てもご飯」になってます。
なぜこうなったかわかりませんけど、
まぁ、こういうおすしも目先が変わってていいですよね。

具は、通常の五目ずしのタネ。
外側についているのは、ヤマミョウガの葉っぱです。



ミョウガ葉が 思い起こさす 田子のすし





手こねずし(三重県)
《平成13年5月中旬UP》



目に青葉の季節です。
山ほととぎす 初ガツオ…。
今回は、カツオのおすしとして名高い、手こねずしです。

三重県志摩地方では、漁師さんたちの料理として、このすしが伝わっています。
新鮮なカツオを薄い刺身にして醤油にザッとくぐらせ、すし飯に混ぜ、
あとは手でこねるため、この名前があるといいます。
しゃもじを使うのも、もどかしかったのでしょうね、
いかにも雄々しい漁師さんを思い浮かべさせます。

今では、三重県の郷土料理としてずいぶん有名になったこのすし。
実は、カツオに限らず、どんな魚ででも作るそうですよ。
私なぞは、夕べの残りの刺身を使って、しばしばこのすしを作っています。



目に青葉 山ほととぎす 手こねずし





さつますもじ(鹿児島県)
《平成13年3月上旬UP》



3月です。ひなまつりです。
ひなまつりにちらしずしを食べる習慣は、さほど古いものではありませんが、
やさしい色合いは、女の子の節句にふさわしいですね。

ところで、鹿児島ではこんなちらしずし(ばらずし)があります。
こが焼きや薩摩揚げを混ぜ込むのは、いかにも鹿児島らしいです。
容器は薩摩藩の御用にもなったキンチクという竹で編んだザルです。
細かな網目で、水もほとんど漏らさないスグレモノですよ。

「すもじ」とは宮中ことばで「すし」のこと。
薩摩藩では、幕府の隠密に情報を悟られないよう、独自のことばを作りました。
この「すもじ」も、そんな薩摩ことばのひとつです。



春風に 桃の香添えて ひなのすし





シロハタずし(鳥取県)
《平成13年2月上旬UP》



シロハタとはハタハタのこと。
ハタハタのすしは、秋田のハタハタずしが有名ですが、
鳥取でもすしにして食べます。

鳥取市賀露(かろ)は名だたる漁港。
シロハタずしは漁民のおかみさん料理です。
ご飯代わりに酢味をつけたオカラを用い、
姿ずしのように仕立ててから、数日間寝かせます。

秋田のハタハタはずいぶん不漁になっていますが、
こちらでは、まだまだ水揚げはあるようです。
甘ずっぱいオカラと柔らかなハタハタの絶妙の味は、やみつきになりますよ。



シロハタが オカラに泳ぐ 冬のすし





ねまりずし(熊本県)
《平成13年1月上旬UP》



21世紀最初のおすしは、熊本のねまりずしです〜!

「ねまる」とは「腐る」の意味。
ですから「腐ってるすし」って意味ですが、
実際にはそうではないことは言うまでもありません。
お正月のために、九州は熊本・八代地方の内陸部で作られる発酵ずしです。

かつては、清流・球磨川のアユで作られたものですが、
現在はアユが獲れず、もっぱらコノシロだとか。
ともあれ、糀の効いた魚は、なんとも風味がよろしい。

はい、この画像は、貴重なアユのすしです(微笑)。



初春は 妻の雑煮と アユのすし





アユずし(岐阜県)
《平成12年12月中旬UP》



冬場にアユずしとは意外に思われるかも知れませんね。
でも、岐阜のアユずし作りは、年末の風物詩です。
秋の落ちアユを塩漬けし、毎年、12月初〜中旬にご飯に漬け込みます。
食べ頃は、漬けてひと月頃。
お正月料理です。

岐阜市に6軒ある、鵜匠さんのお宅で伝承されています。
ごく親しい人へのお歳暮やお年始に使われます。
私も、ある鵜匠さんから、毎年、数尾ずつ頂戴しています。



アユずしで 今年も暮れる お付き合い





しばずし(広島県)
《平成12年11月上旬UP》



因島の郷土料理です。
タイ・キス・チヌ・タコ…、獲れた魚を何でも使う発酵ずしです。
黒っぽく見えるのはタデの葉っぱで、
食べるとピリッとした食感がいいですね。

このすしは、糀を併用すると言う点では新しい形態の発酵ずしなのですが、
魚種にこだわらないというのは、ある意味「原始的」にも見えます。
ある学者は、「日本最古の形態のすし」と言いましたが、
はたして、どうなのでしょうか・・・




しばずしの 味にひかれて 里帰り





サンマずし(三重県・和歌山県)
《平成12年9月下旬UP》



紀伊半島の熊野灘は、全国屈指のサンマの漁場。
夏から秋にかけてここに水揚げされるサンマは、
脂がつき始める前で、サッパリとした味わい。
すしダネにはピッタリです。

この地方にはサンマの発酵ずしというのもあり、
それは匂いが強くて、初心者にはお勧めしかねますが、
写真にあるのは酢を使った早ずし。
誰にでも好まれる味なのではないかと思います。

一緒に盛り込まれているのは、昆布の巻きずし。
サンマずしとともに、熊野地方の名物です。




銀鱗の 色もまぶしや サンマずし




カマスずし
(佐賀県)
《平成12年9月下旬UP》



9月9日は、昔でいう「おくんち」。
今では「秋祭り」の別称になっているようですね。

佐賀の秋祭りでよく作られたのが、このカマスずし。
なんでも、もともとは米をカマス(ワラの袋)に入れたことが発祥だとか…。
もちろん、今のカマスずしは、海魚のカマスを使った姿ずしです。

焼き魚などではおなじみのカマス。
白身の、軽い味わいですね。
すしダネとしても、上品な仕上がりになっています。

昨年からスキューバダイビングを始めた私。
「くれぐれも、カマスには気をつけてくださいね」と言われるほどどう猛な魚だそうです。
幸か不幸か、私のダイブ経験では、
未だ、このすしダネに出会ったことはありません。




秋祭り カマスのすしと 客の声





サバちらしずし(岐阜県)
《平成12年8月上旬UP》



酢サバの切り身を使った、お盆の料理です。
桶やカメの中に、ご飯と酢サバを交互に層にして重ね、
味をなじませた後、ザックリと混ぜて盛りつけます。

生ぐさ物を嫌うはずのお盆に、こういうすしを作るのは、
「衆生の飯」を意味する「生飯」の読みが「サバ」であることから。
つまりは「語呂合わせ」ですね。
お盆にサバ料理を食べる、という風習は、各地で見られます。

夏の暑さで少々バテ気味の時、
サッパリとした酢の味は、疲れを吹き飛ばしてくれそうです。




盆きたり 仏の前で サバのすし





ホオ葉ずし(岐阜県)
《平成12年7月上旬UP》



やわらかなホオの青葉で巻き付けたちらしずしです。

岐阜県を代表する「郷土ずし」ですが、実は2種類あって、
飛騨地方では、写真のように「混ぜずし」をはさみますが、
恵那・中津川など東美濃地方では、白飯の上に具を散らします。
どちらが「正当」というわけでもなく、それぞれにファンを持っています。

青いホオ葉は秋まで手に入りますが、早めの夏の青葉はやわらかく、
特有の青い香りがすしの味を引き立ててくれます。




乗せてよし 混ぜてまたよし ホオ葉ずし





アユずし(奈良県)
《平成12年6月上旬UP》



青葉が目に鮮やかな季節になってきました。
青葉と言えば清流を連想させ、
清流と言えば、アユでしょう。
今回は、アユのおすしです。

アユずしは全国各地にありますが、
写真は奈良県吉野地方のアユずしです。
(季節的には、もう少し小ぶりのアユずしなのですが、上に書いたような事情にて…)
浅く酢で締めたアユは、ほんのりとほろ苦さを残し、
それがまた、野趣味を出しています。
吉野のアユずしは、かつて将軍・御所御用の「釣瓶ずし」というのがありましたが、
今はその伝承も途絶えています。
その昔の発酵ずしは、今ではこうした早ずしへと生まれ変わりました。



若鮎を 愛でてまた注ぐ 青葉酒





カツオのはらもずし(千葉県)
《平成12年5月上旬UP》



目に青葉 山ほととぎす 初ガツオ
カツオが本当に美味しいのは、秋の戻りガツオだそうですが、
やっぱり、カツオはこの時季の風物詩であることは間違いないでしょう。

ハラモとは、カツオの脇腹の脂身の部分。
ちょっとしつこくて、下手をすると捨てられる運命のところですが、
そのハラモをそぎ切りにして酢飯に乗せ、笹で包んで箱に詰め、
数日間寝かせて味をなじませたのがこのすし。
千葉県勝浦地方に伝わる郷土料理で、
関東地方にはめずらしい、発酵(半発酵)ずしです。



江戸っ子に 思いを馳せる カツオずし





カンカンずし(香川県)
《平成12年4月中旬UP》



そろそろ、春の祭り囃子が聞こえてくる頃ですね。
祭りと言えば、すしはつきもの。
だから、この時期は、1年を通しての「すしの旬」でもあります。

数ある「旬のすし」から選んだのは、香川県のカンカンずし。
大川郡志度町鴨部(かべ)地区に伝わる箱ずしです。
押しをかけるために木枠にはめ込み、
カンカンとクサビを打って締め付けるのでこの名があります。
上に乗せるのは瀬戸内の魚。
中でもサワラは有名です。
サワラは鰆。その字のとおり、春の魚です。



クサビ打つ 音が呼んでる 春祭り


こんなページもあります。
カンカンずしの紹介ページ



まつりずし(岡山県)
《平成12年3月下旬UP》



春です! 春です! お花見です!
花見といえば、ちらしずし!
各地・各家庭で、さまざまなちらしずしが作られます。
日本の家庭で最もなじみ深いすしのひとつでしょう。

日本で最も豪華なちらしずしといえば、岡山の「まつりずし」
瀬戸内の海の幸、中国山麓の野の幸、そして美味しい備前米。
華麗な味のシンフォニーは、「すし一升、金一両」とさえ言われます。

幕藩時代、領主・池田光政の「一汁一菜」(おかずは一品目)令に対抗して、
「おかずがひとつしかダメなら、ご飯を豪華にしてやれ」と、このすしが生まれたとか。
もちろんこれは俗説で、池田光政の時代、こうしたちらしずしは、まだありませんでした。
なお、「まつりずし」というのは岡山駅弁会社の登録商標で、
一般には「ばらずし」と呼ばれることが多かったのですが、
今は、その登録商標の方が有名になってしまい、地元でもけっこう通用しています。



岡山の 土地の恵みの まつりずし


こんなページもあります。
通信販売です
岡山県観光連盟のページ
東京で、まつりずしを食べたい人に!



イワシのおからずし(富山県・石川県)
《平成12年3月中旬UP》



このすしの旬は、本当はもう少し早いのですが、
3月は、このすしの「食べ納め」と言うことでご紹介します。

最大の特徴は、ご飯ではなくオカラを使うことで、
米の乏しい地方では、しばしば見られたものです。
イワシは、日本海の荒波で揉まれて、しっかり身が締まっており、
重厚で、それでいてクセの少ない仕上がりになっています。

冬の嵐とともに、このすしの旬がやって来るためか、
富山県の氷見地方では「吹雪ずし」の別名もあります。
写真は、石川県輪島市の魚屋で買ったもの。
酒の肴に最適です!


春近し オカラのすしの 食い納め





太巻きずし(千葉県)
《平成12年2月中旬UP》



この太巻きずしが「2月の食べ物」というわけではありませんが、
2月と言えば節分。節分と言えば巻きずし。
ということで、これをご紹介しました。

節分に、無病息災を願って、恵方に向かって太巻きずしを丸かぶりするという習慣は、
どうやら関西の花柳界のものだったようです(篠田統『すしの本』より)。
本来は、お新香を芯にした細巻きだったようですが、
今では太巻きを豪快にかぶりつくのが好まれています。

さて、写真に掲げた太巻きずしは、全国で最も手間がかけられる千葉県山武地方のものです。
すし職人が作ったものじゃありません。
ごく普通の家庭の主婦たちがこうした細工ずしを作るのです。
かの秋篠宮妃紀子様も、ここで研修を受けられたとか…。
毎年新たなデザインも考案されて、山武地方の太巻きずしは、年々にぎやかになっています。


鬼めにも 分けてやりたや 福のすし


ハタハタ姿ずし(秋田県)
《平成12年1月下旬UP》



秋田の皆さん、お待たせいたしました!
御地ご自慢の味・ハタハタずしの登場です!


秋田の正月は、何はなくともハタハタのすし!
人参や海藻とともにハタハタをご飯・糀に漬け込み、発酵させたもので、
甘く酸っぱい独特の風味があります。
ブリコ(卵)は、なんとも透明感のあるさわやかな味わいです。

江戸初期の文献『毛吹草』にも「出羽名産」として記された名物ながら、
最近では乱獲からか、地場のハタハタがめっきり減ってしまい、しっかり「高級魚」。
数年前には「禁漁」の憂き目を見ましたが、近年ようやく漁も再開。
ただ、写真のような姿ずしは、まだまだ値段が高く、
一般には頭を落としたハタハタずしがよく食べられています。

ナマのほか、ちょっとあぶってもオツな味になります。

全国的に、「発酵ずし」が若者層から敬遠される傾向にある中、
秋田では、あらっちのような大学生(注:出会い当時)がハタハタずしを好んで食べると聞いて、
たいへん驚いた記憶があります。
それほどまでに秋田ではハタハタずしが、ドッカリと根づいているんですねぇ。〈日比野 記〉



ハタハタの すしにつられて 酒が過ぎ


山間部の皿鉢ずし(高知県)
《平成11年12月下旬UP》



「皿鉢料理」とは、簡単に言えば「大皿に盛りつけた料理」というような意味です。
目の前の海から取れたばかりの新鮮な魚を刺身にして盛りつけたものは、
豪快な土佐っ子の自慢料理のひとつでしょう。
サバの姿ずし・アジの姿ずし・タチウオの押しずしなど、
すしを主体に盛り合わせた「すし皿鉢」というのもあります。

ところが、海から少し離れた山あいの村でも、
やっぱり「すし皿鉢」がありました。
タケノコ・シイタケ・ミョウガ・リュウキュウ(ハスイモ)・こんにゃく…。
魚っ気といえば、渓流魚のアメゴ(アマゴ)の姿ずし。
実に質素きわまりない材料で、海辺の「すし皿鉢」に比べると地味ではありますが、
食卓に据えられた大皿は、「お見事!」のひとことに尽きます。
土佐の山あいでは、こんな皿鉢を大晦日に準備して、
手作りのすしをつまみ、お酒を呑みながら、
行く年を偲び、来る年に思いを馳せるのです。


盛られたる すしを肴に 大晦日

写真のすしは、安芸郡北川村のもの。
同地のすし作りの様子は、平成12年1月1日放送の
TBS系「日本全国3大美味徹底探求スペシャル(仮題)」にて紹介されます。



縄巻きずし(和歌山県)
《平成11年12月上旬UP》



紀州・田辺の珍味で、かつては田辺藩の殿様御用の名品でした。
ご飯を使わず、代わりにヤマイモをふかしつぶしたものをすしにしたもの。
魚は、高級品はサゴシ(サワラ)、普通はサバで、
棒ずし状に仕立てた後に、細縄でキリキリと締め付け、約半月ほど置きます。
ポッとカビが浮いてきたら、中身は食べ頃。
お酒にもお茶にも合う、まさに絶品です。

田辺出身の、かの博物学者・南方熊楠もこのすしを絶賛し、
「縄巻きの とくる心や 梅の花」と詠んでいます。
この歌からもわかるように、冬場の味覚です。

これほどの名品ながら、今や非常に入手が困難。
殿様献上のために幕末からこのすしを作り続けているというお宅は
今は田辺の地を離れ、大阪に住んでおられます。
「(縄巻きずしは)注文があれば作る」ということなので、
お試しになりたい方は、こちらまでご連絡ください。


熊楠と 同じ心で 縄を解き


(い)ずし(青森県)
《平成11年11月下旬UP》



寒さが厳しくなり
今年の残りも、指折り数えられるようになってきました。
各地で正月準備が進んでいます。

青森県の弘前地方では、ネマガリタケが入ったサケの飯(い)ずしが
正月料理には欠かせません。
同じようなすしは、北海道でも秋田県・新潟県でも見られますが、
ネマガリタケのすしは、この地方独特の味覚でしょう。
そろそろ、このすしの漬け時です。

最近では商品化もされて、広く日本中に知られるようになりましたが、
津軽では、昔ながらの家庭料理として、
多くの人に愛されています。
甘酸っぱいサケの身が、不思議な郷愁をかきたててくれます。


故郷(くに)からの 飯ずしの便りで 暮れを知り


紅葉柿の葉ずし(奈良県・和歌山県・大阪府)
《平成11年11月上旬UP》



寒くなってきましたね。
紅葉も、そろそろ見頃の峠を過ぎてゆきそうです。

奈良の柿の葉ずしは、青々とした柿の葉で包むイメージがありますが、
中にはそうではない場合もあります。
奈良・和歌山・大阪の府県が接する地方では、
赤く色づいた柿の葉を使うのです。

もちろん、時季は晩秋!
渋い深みのある紅の葉っぱは、
深まりゆく秋の風情を雄弁に物語ってくれます。

中身は、ひとくちサイズのサバずしです。


ゆく秋や 紅いべべ着た すし食いて