福岡



●カマスの姿ずし(福岡県久留米地方)
カマスの姿ずし

毎年9月の久留米・甲良さんの祭りにつきものの料理。
塩で締めたカマスを酢で締めなおし、すしご飯を抱かせて姿ずしに仕立ててある。尾頭つきの立派なもので、姿かたちが豪勢な割にはカマスの味わいが上品で淡白で、食べる人を飽きさせない。
製法もさほど難しくはなく、ローカル色を売りものにして、もっともっと商品化されてもよさそうなものだが、カマスの値段が高くなったとかで、家庭でも商売家でも、あまり作られなくなっているのは残念きわまりない。

●柿の葉ずし

山あいの家庭で作られる秋のおくんちのごちそう。ちらしずしを握って柿の葉に盛りつけるが、葉で包んで重しをかけることもある。ピンクや緑色のデンプも乗せる。


タイラギちらしずし(大牟田駅弁)



佐賀



●押し抜きずし

玄界灘に面した漁村に伝わる。季節の魚の刺身を上に置く。花見や芝居見物など、遠出の際の弁当にも作られる。型にご飯を入れて突き出すことから「つきずし」ともいう。


長崎



●大村ずし

文明年間、大村純伊が旧領・大村の地を奪回したことを祝い、領民がこのすしで兵をねぎらったという伝説がある。現在でも家庭でよく作られる、長崎の郷土料理の代表格。

大分



●高菜の巻きずし

ノリの代わりにタカナの漬物を使った巻きずしで、山間部の家庭料理として伝存する。ふつうの太巻きの具のほか、梅干しや納豆、ヤマイモなどを芯にしたものもある。


お方ずし


茶台ずし


サバずし



熊本



●ねまりずし

球磨川上流の山間地に残る。正月にあわせて作られる、九州にはめずらしい発酵系のすし。コノシロのほかアユも使うことがある。ユズの実や葉を一緒に漬ける。


●コノシロの姿ずし

天草灘・八代海に面した地方で、正月や祝いごとによく供される。時間のたったものはあぶって食べることがある。本来は姿ずしだが、切り身を混ぜたちらしずしもある。


タイの姿ずし


●吉野ずし(熊本県八代地方)

吉野ずし(おからずし)

名前の由来は不詳。ご飯の代わりにオカラを使った郷土料理である。
オカラは甘酸っぱく味がつけてあり、「すし」というより「卯の花あえ」といった感じもするが、歴としたすしである。
魚は、近海で獲れたコノシロを酢で締めたもので、サッパリとした口当たりが、なんとも心地よい。写真は八代市内で商品化されているもの。

●ときずし

新鮮な魚を醤油炊きし、煮汁ごと酢飯に混ぜてしまうちらしずし。「とき」とか「時」すなわち「旬」のことを指すという。


タイの姿ずし(三角駅弁)


カニずし(三角駅弁)



宮崎



●いおずし〈イワシの姿ずし〉

県北の海岸部では、日向灘で水揚げされる活きのよいイワシ・アジ・サバを使って姿ずしを作る。マイワシの姿ずしが多いが、頭をとってご飯に巻きつけるものもある。


ばらずし



鹿児島



●酒ずし

酢のかわりに「地酒」とよばれる甘い酒を使う。もともとは武士階層の食べ物だったといわれ、錦江湾のタイやシバエビ・イカなど、混ぜる具には贅をこらしている。


●さつますもじ

祝いごとなどで作られ、北薩の春先を彩る。高級な材料は使わず、タケノコやミツバなど季節の野菜やキクラゲを混ぜ、魚気はツケアゲ(サツマアゲ)やカマボコ程度。


沖縄



●大東ずし

大東島だけにみられる沖縄県唯一ともいうべきすし。サワラやマグロをつけ汁に漬けてすしに握る。明治期にサトウキビの作地開発に来た八丈島の人々が伝えたという。