OREGON No.27 971110
 今日は、尊厳死について。
 こちらオレゴンに来てからやたら目に付くのが「Yes on 51」と書かれた看板です。(この文書に同封した画像を参考)これは、「MEASURE51(法案51)に賛成しよう!」というものです。このことについて思うことを書いてみましょう。
 これを語るには、まず「MEASURE16」の話からしなければなりません。これは、4〜5年前に尊厳死を認めるようにダイインをした数名の医者の行動から始まっているそうです。「どうやっても治療不可な病気で死にゆく人には、尊厳死を認めるべきだ」「患者の身内にしてみても、看護体制、金銭的な面での苦労が大きい」と言うのが賛成派の主張でした。また、反対派は「尊厳死を認める事は、命を助けるべき医者の殺人を認めることになり、矛盾しているではないか!」ということでした。こんな風に始まった「MEASURE16」の議論について、1994年に「尊厳死を認める」という内容の「MEASURE16」の投票が行われました。その結果、僅差ではありましたが「MEASURE16認める」と言うことに決まりました。ただし、治療が不可能で死ぬしかない病であること、数名の医者の診断が必要なこと・・・などのこまかい条項も含まれました。そして、今になって、やはり尊厳死には問題があるということで「尊厳死を認めない」という内容の「MEASURE51」が提出されました。「Yes on 51」とは「MEASURE16」に反対し、尊厳死を認めないということなのです。
 投票についてのここオレゴンの人の様子ですが、投票用紙は郵送の形を取っているので、日本の選挙のような感じはありません。私がわからなかっただけかもしれませんが、あまり話題になっていたようには感じませんでした。改めて聞くと、賛成派の人は、「この前やったばかりの投票を、どうしてまたやらなければならないのか。」と必ず言います。それに続いて「死は個人にやってくるものであるから、個人の希望を優先させるべき。」という答えが帰ってきます。これに対して反対派の人たち(カトリック教会が中心らしい)にいわせると「やっと見直してもらえる。自殺を認めてはならない。」ということになります。
 こちらの新聞記事を見ると、やたら「SUICIDE LOW」という表現が目立ちます。新聞社側からしても、「自殺」という受け止め方をしているようです。3年前に選挙をして法律上は成立したのですが、何やら裁判になっていて事実上は施行されていないことも、自殺や悪用の色が残っているからでしょう。しかし、オレゴン州の人たちの60%は、この法律を受け入れたがっているのも事実です。さらに、アメリカ中の州がここオレゴンの様子(なりゆき?)をみているようです。
 内容が政治的な物で難しく、十分に取材ができませんでしたので、次に新聞記事と尊厳死(安楽死?)のホームページアドレスを載せておきます。興味のある方は、来る日本の尊厳死論争に向けて、自分の目で確かめてみてください。なお、このレポートを書くに当たって、大垣市教育研究所の加藤祥吾先生と浅野和哉先生、明宝村小川小学校の古田晃裕先生に協力していただきました。ありがとうございました。

○1997年11月6日(木)付け「岐阜新聞より」
[ロスアンゼルス5日共同]
 米オレゴン州からの報道によると、1994年の州住民投票で成立した、末期患者への医師の自殺ほう助を認める「安楽死法」に ついて、有権者の判断を問い直す事実上の再投票が4日行われ「賛成」があらた めて多数を制した。
 新州法は「死ぬ権利」と絡んだ米国初の試みとして注目を集め、三年前、52%対48%の小差で可決された。
 しかし、阻止派が乱用 の恐れなどを挙げ、法廷闘争に持ち込んだため施行は宙に浮いたまま。今年六月、州議会で反対派提案の再投票実施が決まった。
 同法を巡る裁判は、第 一審の連邦地裁が「歯止めが不十分」との違憲判断を示し、執行停止を命じた が、二審のサンフランシスコ連邦高裁は今年二月、停止命令の決定を見直すよう 地裁へ差し戻し、最高裁もこれを支持する判断を先に下している。

○オレゴンの新聞記事より
MEASURE 51
Referred to the people by the legislative assembly
<Measure51> Repeals allowing terminally ill adults to obtain lethal
<prescription>
 <Result of “YES”vote>
 “YES”vote repeals law allowing terminally ill adults to obtain physician's prescription for lethal drugs.
 <Result of “NO”vote>
 “NO”vote retains law allowing terminally ill adults to obtain physician's prescription for lethal drugs.
<Summary>
Repeals Measure 16, adopted by voters in 1994.That law: Allows terminally ill adult Oregon residents voluntary informed choice to obtain physician's prescription for lethal drugs when physicians predict patient's death within 6 month. Requires 15-day waiting period ;2 oral, 1written request;second physician's opinion;counseling for patients with impaired judgment from depression; Gives health care providers immunity from civil, criminal liability for good faith compliance. Permits person choice whether to notify next of kin. Allows health care providers to refuse to participate.
<Estimate of financial impact>
No financial effect on state or local government expenditures or revenues.

○HomePageAdress
http://aulos.mainichi.co.jp/indigo/ikiru/index.html http://www.y-min.or.jp/ml/terminal-care/199706/msg00000.htmlhttp://www.inv.co.jp/~moonsult/death.html http://po.cnet.or.jp/j/je0vyj/bioethics/euthanasia.html

OREGONレポートのメインページへ