幹事クリタのコーカイ日誌1999

 
 11月11日 ● 名古屋のインド映画。

 10年近く前だったでしょうか、インド映画を名古屋でロケしたという話が名古屋地区で話題になったことがありました。名古屋のインド料理屋のオーナーが金を出したとか、その出演料を浮かすために弟が主演だとか言う噂が飛び交って、なんだかバカバカしい笑い話ネタとして少し流布して消えてしまいました。

 名古屋を舞台にした映画というと、邦画では『アイコ16歳』、ハリウッド映画で『ミスター・ベースボール』があります。片や名古屋出身在住の作家堀田あけみ原作でバリバリの名古屋弁映画、片や中日ドラゴンズに外国人選手が入団して活躍する野球映画と、どちらも名古屋でなければできない映画でした。

 しかしこのインド映画の話題は、なぜわざわざ取り立てて特徴もない地味で目立たない名古屋なんかで(と地元民は思っています。ただし同じことを他所の人間に言われたらむかつきます)撮るんだろう、という疑問と、そもそも「インド映画」とはなんだ、という根本的な疑問を当時は抱えていたがために笑い話レベルで終わってしまいました。

 ところがあの『ムトゥ踊るマハラジャ』のヒット以来、突如としてインド映画は日本でブームになり、新しい映画興行界の鉱脈として注目されるようになりました。そこで掘り起こされたのが、この「日本で撮ったインド映画」だったのです。ここからは朝日新聞10日夕刊の記事を参照しているのですが、この名古屋ロケした映画とは『ボンベイtoナゴヤ』というタイトルだそうで、噂通り本当に製作は名古屋のインド料理店を経営するインド人で、その弟が主演しているそうです。

 1991年に名古屋の栄や名駅、明治村などでロケを行ったとか。日本では結局未公開ながら、名鉄パノラマカーの先頭で唐突に歌い踊るシーンもあるということで、これはいかにもインド映画らしい珍妙さが期待できそうです。この8年前の映画が、今回東京国際ファンタスティック映画祭に招待されたために、今になって脚光を浴びたということのようです。20日からは名古屋でも「凱旋上映」されるということです。

 名古屋人はもともと自分たちを卑下自慢するようなところがあり、ちょっとひねくれた名古屋論・名古屋人論が大好きです。東京から名古屋駅に降り立ってタクシーに乗ると、必ず運転手は「お客さん東京からかね?名古屋はつまらんところだでかんわぁ。夜もはやぁしよ、ちぃっともオシャレじゃあらへんで。オリンピックには逃げられるし万博だっていろいろ揉めとってよぉ、どうなるかわからせんに。こんなんだで秀吉も家康も名古屋を出てってまうんだわ」なんて、訳のわからない名古屋の悪口を聞かされます。ところが調子に乗って相槌を打って名古屋をバカにしたりすると、いつの間にか機嫌が悪くなった運転手に、回り道されてべらぼうな料金を請求されたりするから要注意です。

 そんなひねくれた郷土愛を持つ名古屋人に、果たしてこのインド映画はどこまで受けるのか、ちょっと興味が沸きます。多分自分のよく知っている場所が出てくるだけで喜ぶのではないかと思いますけどね。ただケチで有名な名古屋人のことですから「8年も前の映画にたっかい金払えるわけないがね。ビデオになってからでええわ」と言いそうな気がします。僕もビデオでいいや、とすでに思っていますから。

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