cinema eye

『バーティカル・リミット』

鑑賞日02/1/1(ビデオ)
 雪のヒマラヤ山脈を舞台にした山岳アクション映画。どうしてそんなにしてまで雪山に登りたいのか、門外漢には謎が深まるばかりの作品です。

 ストーリーは、若き女性登山家アニーが仲間3人とともに、ヒマラヤ山中で遭難。兄ピーターは5人の協力者を得て、爆破用のニトログリセリンを背負い救出に向かいます。しかし、悪天候や過酷な地形に苦しめられ、救出は困難を極めます。しかもアニーは肺水腫にかかり、残された時間は少なくなるばかり、という災害パニックものです。

 見どころは、なんと言っても壮大なロケとSFXを駆使した雪山の映像。多分昔の技術ではとてもなし得なかったような光景をふんだんに見ることができます。アクション作品ながら脚本もしっかりとしていて、手に汗握るシーンも多く、後半になるにつれてどんどん映画に引き込まれていきます。

 単純に娯楽作品として見た場合、それなりに評価できる仕上がりなのですが、引っかかるのは、ハリウッド映画ならではの能天気なラスト。結局妹は救出されるのですが、他の2人は死にますし、救出に向かった兄以外の5人のうち4人も死んでしまいます。つまり3人を救助しに6人が出かけて、1人を助けただけで救助隊も4人が死んでしまうわけです。これは最悪の結果と言ってもいいでしょう。

 ところが主人公の兄妹はお互いに助かって良かった良かったとニッコリ笑ってエンディングなのです。「自分たちだけ助かれば、他は犠牲になっても平気なのか!」と突っ込みたくなるようなシーンです。なにせ妹を助けたいだけのために、無理矢理連れていかれた連中がみんな死んでしまったのですから、もう少し二人は責任を感じても良いはずです。

 しかも許し難いのは、助かった連中は全て金髪碧眼の典型的白人。死ぬのはイスラム教徒だったりインディアン(ネイティブ・アメリカン)だったりと、明らかに人種的差別があるのです。いくら手に汗握る娯楽作品とは言え、これでは後味が悪くてかないません。大きな減点です。

  今回の木戸銭…900円