cinema eye

『タイタニック』

鑑賞日98/1/19(劇場)
 総製作費240億円と言われる空前の金食い映画『タイタニック』。しかし、この映画は確かに240億円かけただけのことはあるデラックスかつゴージャスな作品です。もっともゴージャス過ぎて少々胃にもたれるのが難点ですが。

 映画は有名な豪華客船タイタニック号の悲劇を忠実に描いていきます。当時の雰囲気を見事に再現できたのは、やはり金にものを言わせたジェームズ・キャメロン監督のこだわりの成果でしょう。小物ひとつとっても安っぽさが微塵もなく、いかにも当時の上流階級の匂いをまき散らしています。話題のSFXはますます進化して、もはやどこがSFXでどこが模型でどこが実写なのか観客にはわかりません。ただただリアルで迫力ある見事な映像がスクリーンに展開していきます。その映像だけでも十分に見に行く価値のある映画です。

 しかし、この映画の素晴らしさは、映像の魅力だけにとどまっていないところです。『ロミオとジュリエット』に負けない恋愛映画であり、『タワーリング・インフェルノ』に劣らないパニック映画なのです。1本の作品の中に2本分の映画のエッセンスが凝縮して詰め込まれていて、恋愛映画としてもパニック映画としても、過去の名作にひけをとらないだけの仕上がりになっています。前半、主役2人の男女が恋に落ちていく様子のみずみずしさ。後半、沈み行くタイタニック号の、特に船内描写のド迫力。そしてラストのせつなさ。240億円かけた映像に負けないだけの脚本と演出の冴えが観客を魅了します。

 話題のレオナルド・ディカプリオは、美味しい役です。スターとしての華やかさと役者としての演技力をほど良く持っている「レオ様」は、この映画で20代女性の心を捉えて離さないことでしょう。他の役者もみな好演しており、たっぷりと3時間余りを楽しませてくれます。特に脇役のキャシー・ベイツが良いですね。さすがです。

 まさに全てにわたって完璧な映画のようですが、実は問題は完璧を求めた結果、余りにも全てが主張し過ぎているところです。スペクタクルな映像もいいぞ、ロマンチックな恋愛も素敵だぞ、史実はきっちり再現したぞ、役者も魅力的だぞ、SFXも見物だぞ、と全部見どころなので、見終わった後、あまりのボリュームに満腹し過ぎでゲップが出そうです。もう少しエピソードを刈り込んで整理して、2時間半くらいのスッキリした映画にしてくれれば、日本人の胃にもあうんじゃないでしょうか。アメリカ人にはちょうどいいボリュームなのかも知れませんけど。

今回の木戸銭…1600円