cinema eye

『スーパーの女』

鑑賞日97/5/8(ビデオ)
 伊丹十三監督お得意の業界モノ(?)映画。食品スーパーマーケットを舞台に繰り広げられる蘊蓄コメディ映画です。主演はいつもの宮本信子。共演に津川雅彦、伊東四郎、三宅裕司ら芸達者を揃えて面白可笑しくスーパーの内幕を見せてくれます。

 津川雅彦は落ち目のスーパーの経営者。伊東四郎率いる安売り競合店に買収されかかっている。そこに津川の幼なじみの主婦・宮本信子が現れる。津川は宮本のスーパーに対する慧眼ぶりを買って、自分のスーパーに雇い店の建て直しを図る。

 とまあそういうストーリーでして、これは伊丹映画得意の『シェーン』のパターンです。あこぎな牧場主と落ち目の牧場主。そこに登場する正義の助っ人。『タンポポ』でラーメン屋を舞台に西部劇を作った伊丹監督が今度は舞台をスーパーマーケットに変えて登場したわけです。

 面白いのはこの西部劇パターンの換骨奪胎ぶりと、スーパーのディテールにとことんこだわった蘊蓄ぶり。この映画を見た後にスーパーへ行くと、思わずあちこちキョロキョロしてしまうほど、細かなところまで取材が行き届いています。

 逆に所詮西部劇のパロディなので、ストーリーでドキドキハラハラということはありません。結末の決まったお定まりパターンへ向けて物語は破綻なくまっしぐら。それが悪いとは一概に言えませんが、もう少し映画としては裏切りも欲しかった気がします。まあ暇つぶしに見るなら、なかなか面白い映画です。

今回の木戸銭…900円