cinema eye

『卒業旅行 ニホンからきました』

鑑賞日94/9/10(ビデオ)
 監督・金子修介、脚本・一色伸幸、といういま日本映画を引っ張る気鋭コンビのコメディ映画です。特に一色伸幸は『病院へ行こう』とか『僕らはみんな生きている』などで笑わせながら日本の現状を鋭くシニカルに描く脚本家で、その毒気はこの作品でも十分に出ています。

 ストーリーは、あまり冴えない大学生の織田裕二クンが卒業旅行に東南アジアの某国に行くところから始まります。そこで現地の怪しい日本人芸能プロモーター鹿賀丈史に騙され、日本から来た新人歌手「一発太郎」としてデビューさせらてしまう、という話です。

 面白いのは、要は日本のものならなんでも有り難がる現地の人々に対して、デタラメな商売をする織田・鹿賀コンビはそのまま日本で流行している外国(特にアメリカ)のタレントや文化の裏返しなわけで、あんなデタラメなものを有り難がってという笑いの毒は、実は日本人そのものに向けられる毒であるわけです。無批判に他の文化を迎え入れることの愚かさばかばかしさを、社会派映画ではなくコメディとして、また青春ラブストーリーとして見せてしまっているところにこの映画の魅力があります。

 まあとは言え、他の一色作品と比べると、ちょっと平凡かなという感じは否めませんね。キャストも地味だし。面白さも中くらいかな、という感じでした。

今回の木戸銭…900円