cinema eye

『スライディング・ドア』

鑑賞日98/11/25(劇場)
 人間、あの時もしも、ということが多々あります。しかしそれはいくら考えても仕方ないこと。しかし映画ならその「もしも」を見せることができます。この『スライディング・ドア』は、地下鉄の閉まるドアに滑り込むことができたかできなかったか、というほんのちょっとした人生の分かれ道で全く違うルートをたどってしまう女性の運命を描くファンタジックラブストーリーです。

 ヘレンは広告会社をクビになり、落胆しながら家路を急ぎます。ホームに入ってきた地下鉄に乗り損なったヘレン。しかし、もし彼女がそのドアに滑り込むことができたら。映画はここから2人のヘレンのその後を交互に追いかけていきます。

 見ていない人にネタをばらすようなことは書きたくないので、具体的なストーリーの紹介は避けますが、実に洒落ていて素敵な恋物語です。一種のパラレルワールドを2人のヘレンが交錯していく演出のうまさ。交互に登場するヘレンを観客に混同させないように怪我をさせたり髪を切ったりさせて、うまく印象を変えていきます。実際には映画2本ぶんを同じ出演者で撮っているようなものですから、細かいところで違和感がないように、かなり気をつかっていることでしょう。

 有名な俳優も出てきませんが、とても映画らしい遊び心とアイデアがある作品に仕上がっていて、なかなかお薦めだと思います。強いて言えば、もう少し全体に明るいコメディタッチの話にして欲しかったかなぁ。ちょっと主人公には辛いことが多すぎて見ていて忍びない気もしました。ま、これは僕の個人的趣味ですけどね。

今回の木戸銭…1400円