cinema eye

『Shall weダンス?』

鑑賞日96/12/30(ビデオ)
 あまり映画を見ることができなかった96年、最後に見たのが、今年最大の邦画の収穫と評判の『Shall we ダンス?』でした。もっとも周防監督の作品ですから、評判はどうあれ僕は見るに決まっているのですが、それにしても噂に違わぬ面白い、そしてハートフルなコメディでした。

 過去の周防監督の映画と言うのは面白くても、どこかマニアックなところがありました。特に『ファンシィダンス』は顕著で、マニアックな原作に負けないカルト映画の趣がありましたが、それが作品ごとに洗練されてきて、遂にこの映画では誰にでも楽しめるような見事な作品になっていました。

 まずキャストがいいですね。いつもの周防映画の常連、竹中直人や柄本明を配しなががらも(モックンにもう少し出番が欲しかったけど)、主演には時代劇系の役所広司。これがいいです。冴えない真面目だけが取り柄の中年サラリーマンが、徐々に輝いていく様をこれだけ見事に表現できる俳優は日本では少ないでしょう。生まれついての役者、というような華のある俳優ではかえって難しい役です。遅咲きの無名塾出身役所ならではの演技でした。

 そしてヒロインの草刈民代。立ち姿の美しさは無類です。透明感・気品・知性・色気。日本女性の美しさを体現していました。演技は決して上手いわけではありませんが、彼女がそこにいるだけで中年男が参ってしまう、その魅力は十分に伝わってきました。

 この2人のキャスティングが成功したことで、この映画は決まったと言ってもいいでしょう。後は周防監督のいつものコメディセンスで味付けをしていけばいいだけです。今年の他の日本映画をあまり見ていないので軽々しい比較はできませんが、確かに96年ベストの評判は決して間違っていないという印象でした。

今回の木戸銭…1500円