cinema eye

『千と千尋の神隠し』

鑑賞日01/11/21(劇場)
 もはや誰も知らぬ者のないスタジオジブリ渾身の一作。興行収入では邦画トップの『もののけ姫』を抜き、洋画トップの『タイタニック』さえ抜き、今や日本映画史上最大のヒットとなった作品です。

 しかし、映画の価値はどれだけ売れたかだけではもちろんありません。その数字に相応しい内容を伴っているかどうかこそ重要です。『千と千尋の神隠し』は、摩訶不思議な世界を舞台にした少女の成長物語。甘やかされて育った少女千尋が「千」となって厳しい環境の中で自立していく様子を描いた作品です。

 少女の成長物語、不思議で魅力的ななキャラクターたち、空飛ぶ爽快感、アクション、温かさ、懐かしさ。全てがいかにもジブリ作品共通の匂いが満ちていて、ジブリファンには十分満足の作品に仕上がっていると思います。

 いつも違和感を覚えることが多い声優への有名俳優の起用ですが、今回も夏木マリ、菅原文太、内藤剛志、沢口靖子らが起用されていましたが、イメージ的にピッタリだったせいか、あまり妙に浮いた感じはありませんでした。

 過去の宮崎アニメと比べてこの作品が最高かと問われると、少々疑問が残ることは確かですが、クオリティの高さは十分に納得がいきますし、個人的趣味からは『もののけ姫』よりも好きなタイプの作品です。

 強いて文句を言えば千尋の両親にあまりに見せ場がなかったことが不満と言えば不満でしょうか。豚にされた単なる愚かな大人としてしか描かれておらず、あれでは救いがなく納得できません。多くの大人の観客のためにも、もう少し大人の知恵や勇気も描いて欲しかったと思います。


  今回の木戸銭…1500円