cinema eye

『シザーハンズ』

鑑賞日91/8/11(劇場)
 美しい、とにかくファンタジックで素敵な物語、それが『シザーハンズ』でした。愛する者を抱きしめることさえかなわない、悲しいエドワード。彼の悲しみをただ物語る、それだけの映画ですが、その悲しみを表現するために監督は全てを費やして努力します。例えば町の様子、わざわざ画一的に、舞台装置のように作られていて、この映画に余分な現実感を持ち込まないようにしています。

 ヒロインのウィノナ・ライダーが黒髪を金髪に染めているのも、モノトーンのエドワードとの対比を表すためでしょう。美術が、衣装が、全てのアートが現実を離れ、象徴的に表現され、エドワードを、彼の悲しみを際立たせます。特にお城の中のセットのアートディレクターの仕事は見事です。もちろん、表情に乏しく動きもユーモラスなジョニー・ディッブの演技はより一層、人造人間の悲しみを引き立てています。

 ただ最後にエドワードが人を殺してしまうのは行き過ぎだと思いますが。見る人によってはバカバカしいおとぎ話でしょうし、ハサミの手なんてギャグだと思うことでしょうが、この映画は本当に純粋なファンタジーです。子供のような無垢な心で素直に見ればとても楽しい、そしてジーンとくる物語だと思います。

今回の木戸銭…1400円