cinema eye

『櫻の園』

鑑賞日90/12/20(劇場)
 僕の大好きな漫画家、吉田秋生の同名の原作を元に映画化された一部で話題の『櫻の園』。4月、女子校の創立記念日にチェーホフの『櫻の園』を上演する演劇部員の朝2時間の話を一切回想シーンなしで、リアルタイムで描いた実験的な作品です。出演している女の子も、つみきみほを除けばほとんどが無名の子かオーディションで採用された素人の女子高校生。それがかえって、演劇部という独特の空間を描くのにピッタリはまっています。

 非常に低予算で作られていますが、全編に渡って緊張感があり美しい映像とともに見応えのある傑作に仕上がっています。リアルタイムでドラマが進んでいくこと、演劇部、学校という狭い空間、それらが舞台芝居を見るような緊張感を生み出すのでしょうね。もちろん、あの年頃の女の子の気持ちを巧みにすくいとった原作の素晴らしさも大きく貢献しています。

 『夢』や『天と地と』ではなく、これが今年の邦画の最高の収穫、という評論家がいたのもうなずかせる、まさにやればできるじゃない、という映画でした。ただ、日本映画の傑作が最近ではマイナーからしか生まれないのが悲しいですが。

 映画のクライマックス・シーン(だと僕は思いました)である二人の女生徒が記念写真を撮るところ。少女の無邪気さと女の艶やかさが同居する女子高生の姿を写しだしていて、凄い反面、怖い、と思ってしまいました。背筋がゾクゾクしちゃったもんねぇ。



今回の木戸銭…1800円