cinema eye

『恋愛小説家』

鑑賞日98/5/8(劇場)
 アカデミー賞であの『タイタニック』を押しのけて主演男女優賞を獲得した恋愛映画『恋愛小説家』を見ました。果たして『タイタニック』より良いのか?この比較はかなり難しいです。同じ「恋愛映画」という範疇には入るのかも知れませんが、片や大金をかけて作ったパニック映画風味の若者のメロドラマ、片や日常の中で淡々と展開する大人の小粋なコメディタッチの恋愛ドラマ。これでは同列に比較することはできません。

 映画は意地悪で冷血漢の恋愛小説家が、行きつけのレストランのウェイトレスに恋をすることで、徐々に人間としての優しさに目覚めていくというストーリーです。特に派手な仕掛けもなく、パソコンや携帯電話も登場しない、30年前の映画でも不思議はないくらい地味で、でもクスッと笑えるヒューマンな映画です。

 際だつのはやはり主演の2人、ジャック・ニコルソンとエレン・ハントのうまさ。ロバート・デ・ニーロの臭みやロビン・ウィリアムスの力みを思うと、同じ演技派でもジャック・ニコルソンは軽みがあって見ていて肩が凝らないところが良いです。ただのイヤな奴が、徐々に不器用で憎めない奴に見えてくるあたり、まさにジャック・ニコルソンの演技力が光ります。これではディカプリオが相手にもならないわけです。仕掛けで見せている『タイタニック』に比べ、役者の演技力で魅せる『恋愛小説家』と言えるでしょう。

 あまり欠点の見あたらない、本当に良くできた映画です。ただ大きな感動、大きな笑い、大きな興奮はありません。良い映画だけどエポックメーキングな映画ではないのです。だから映画史に残るような名作かと言われると、ちょっとそのあたりが弱い気がします。娯楽超大作として映画史に残るであろう『タイタニック』との一番の違いはそこかも知れません。

今回の木戸銭…1400円