cinema eye

『パトリオット・ゲーム』

鑑賞日92/8/15(劇場)
 ハリソン・フォードの新作『パトリオット・ゲーム』を見てきました。あのクランシー原作ということで、さすがに世界を股にかけての気持ち良い娯楽作に仕上がっています。ハリソン・フォードもアクションさせるとやっぱり生き生きしますね。もう立派な中年の割には、かっこ良く決めてくれました。

 ただ一見この映画はCIAやIRAやらスパイ衛星やら北アフリカやら海軍やら英国王室やらがぞろぞろ出てきて、落合信彦的国際陰謀映画かと思わせますが、実は西部劇なのですね。つまりアメリカ映画の基本。正義と家族を愛する父である強い主人公が、悪党グループから愛する者を守るため戦い勝利する物語。まさにアメリカ映画の一番お得意なパターンです。衛星を使った安全な戦いより、生身の肉体による直接対決。結局そうでなければ真の決着がつかないところなど実にアメリカ的。勲章を与えるしか能がない頼りない王族や、それより情けない役たたずのSPと言った英国蔑視(?)もアメリカっぽい。

 しかし冷戦が終わったのは、やはりこの手の映画には痛手ですね。国家レベルの戦いではなく家族を守るための(敵も弟の仇討ちしか考えていないし)戦いになってしまうのでは、どうしてももう一つスケール感が得られません。話の作りの大げささに対する動機の弱さがこの映画の弱点であり、見る者が拍子抜けして「結局西部劇か」と思わせてしまうのです。もちろん、面白ければ西部劇でも何でもいいんですがね。

 そういう訳で、この『パトリオット・ゲーム』は期待していたタイプの映画とはちょっと違いましたが、西部劇だと思えば面白かったと思います。見ている間退屈だけはしません。それだけでも立派なもんです。

  今回の木戸銭…1200円