cinema eye

『プリティ・ウーマン』

鑑賞日91/1/25(劇場)
 ぼくはこの映画、実はあんまり期待していなかったんですよね。なんていうか、貧乏で粗野な女の子を金持ちのスノッブなおじさんがレディに仕立て上げるなんて、シンデレラ・コンプレックスの強いアホな女の子向けの映画でバカバカシイ、イヤラシイ、なんて偏見を抱いていたわけです。

 ところがどっこい、見はじめたら思わず座り直してしまったくらい、意外にしっかりとした話じゃありませんか。この映画、女性向けの姿を借りて受けを狙っていますが、なかなかどうして、たいしたものです。

 最初、礼儀しらずのストリート・ガールが、だんだんに洗練されて社交界に出ても恥ずかしくない淑女に変身する、というふうに女性と下層階級を差別的に描くだろうと予想していたのは見事にはずれ、いやらしいのは気取った上流階級であり、真に人間的に生きているのは、実は娼婦たちのほうなのだ、という話なのです。

 そして、その娼婦を演じるジュリア・ロバーツの魅力的な事!これは男性にとっての理想の女性は淑女などではなく、娼婦であり、天使である不思議な生き物こそ理想なのだ、ということを雄弁に語っています。かつて『時には娼婦のように』というヒットソングがありましたが、娼婦性と天使性を兼ね備えた女性こそ男の心を 狂わせるのでしょう。

 この映画、もっとハードな性描写とかがあれば、立派に男性向け映画にもなり得る素質をもっています。昔の日活ロマンポルノなんかで時々そういう実験的な映画を才能がある監督が撮っていたものです。

 て、いうわけで、期待を良いほうに外されたので、ちょっと甘口の批評になりました。それにしてもリチャード・ギアが、こんなにオジサンの役が似合うなんてお互い年をとったものです。

今回の木戸銭…1300円