cinema eye
鑑賞日96/6/16(ビデオ)
これは基本的にはノスタルジックに日本の里・山・野原を懐かしむだけの、それ以上に見るべき視点があるとは感じられない単純なアニメ映画ですが、狸を主人公にかなり上質なエンターテイメントに仕上がっているところが楽しく嬉しい作品です。
社会派のメッセージを訴えている映画として捉えた場合、あまりにも単純に昔の生活を美化しているように感じられ、少々辟易する部分がありました。トトロのように、もう少し幾重にも包装をほどこして提示してくれるならばいいのですがストレート一本勝負的な描き方は、「鯨を殺すな」運動的単純さセンチメンタルさに反発を感じてしまいます。
しかし、狸たちファンタジックに描いたエンターテイメントとしてこの映画を見た場合は、おのおの狸のキャラクターの面白さや、昔からの伝承をうまく生かした創造力あふれる演出に、思わず拍手したくなるほどの職人的うまさを感じます。特に狸として避けては通れない(?)「八畳敷き」をあれほど効果的にかつ積極的に描いたことは大いに賞賛に値すると思いました。
それにしても、やはり全体の印象が社会派過ぎますね、もう少しメッセージ性を抑えて、より単純に楽しい映画を目指せば、もっと気持ちよくすっきりとした作品になっただろうな、と思い残念です。
声優は本職ではない俳優が多く担当していて、僕は良かったと思います。ああいうリアルで動きの細かいアニメ映像には過剰な声の演技は饒舌過ぎることでしょう。
今回の木戸銭…1000円