cinema eye
鑑賞日94/5/9(ビデオ)
人気コミックの劇場用映画第2弾。前作にも増して緻密でリアルな近未来東京を描き、その映像を見るだけでも一見の価値があると言えます。
物語は前作のストーリーの延長線上にあるようですが、映画の中では詳しくは語られません。舞台背景や人間関係も紹介のようなものはほとんどなく、そういう意味ではファンでないと、それだけでとてもついていけないと感じるかもしれません。でもきっとそれでいいのでしょう、この映画の場合は。
で、まあ前作から見ていて、一応人間関係などは頭に入っている程度の理解があれば、前作よりはわかりやすくなっていると思います。事件の首謀者、それを引き起こした動機、全体の事件の流れなどは、饒舌な登場人物2人(後藤&荒川)によって常に語られ続けられるので、今回の物語そのものはクリアに見えてきます。僕はこの点だけでも、この映画を前作よりも評価したいと思います。
肝心の物語は、相変わらず荒唐無稽の域を出ませんが、緊密感のある画面構成、締まった演出、登場人物たちの際だったキャラクターゆえに、その荒唐無稽さが、映画的な緊張感あるフィクションへと高められています。このフィクションとして楽しい、というのは、日本映画には珍しい資質でどちらかというとハリウッドっぽいものだと思います。そういう意味では、この原作をハリウッドのスタッフに実写で撮らせたら(もちろんお金をたっぷりかけて)、かなり期待できる近未来SFサスペンス映画が生まれるのでは、と思わせます。逆に日本ではアニメでしかこの世界は表現できないだろうな、と感じずにはいられないのが残念です。
この映画に「戒厳令下の東京」というものが出てくるので、一部ではそういう社会派(笑)の視点から、この映画を語ろうとする論評もあったようですが(確かにPKOとか軍事的貢献とかシビリアンコントロールとか、タイムリーでジャーナリスティックな部分もかなりあるので、それも可能でしょう)、それよりもこの映画は、もっと単純に一種のパニック映画として捉えた方が僕は良いと思います。と言うのも、あくまでもこの映画は後藤警部補を中心とする特車2課の面々や、他の登場人物たちのキャラクターを描くことこそ主眼であり、決して日本という国の体制や国民性、さらには現在の軍事や治安関係の問題点を描こうとしている映画ではないからです。そしてパニック映画として見れば、前述したようにすぐれた娯楽性を備えた質の高いフィクションに仕上がっていると思います。
ただセリフだけはどうもいただけません。これは日本のアニメ映画全般に共通しているような気もするんですが、どうも臭くて頭でっかちの言葉が多すぎます。理屈が勝っていて、まるで作文を読んでいるような言い回しばかり。妙に肩肘張って、カッコいいこと言ってやろう、みたいな感じです。もう少し素直な聞き苦しくない言葉にならないものだろうかと思います。ファン以外にはどうにもわかりにくい設定、暗くて重くて自閉的な雰囲気などはしょうがないにしても、書き言葉のようなセリフだけは、何とかして欲しいと思いました。
全体としてみればかなり面白かったと思います。ただし一部ファン向きであることは否めません。
今回の木戸銭…1100円