cinema eye

『おいしい結婚』

鑑賞日91/6/11(劇場)
 危惧していたほどTVドラマぽくはなく、まあ許せるかなという印象でした。森田芳光らしさを感じさせたのは、徹底的にこだわっていた絵作り。全てのシーン、斉藤由貴の会社にしても家にしても競輪場のシーンにしろ、とにかく現実感・生活感を排除して、ひたすら綺麗にファショナブルに、ある意味では人工的でいかにも嘘臭く撮っていくことによって、一種独特な世界を作り出していました。

 そのリアリティのない映像の中で繰り広げられるドラマが、これがまた結婚をめぐるドタバタという、いかにもありがちな話。だからこそ、これで絵が普通だったら、本当にテレビドラマになってしまいますから、このテーマを映画的に(もしくし森田的に)成立させるにはこの人工的な世界がやはり必要だったのでしょう。

 主役二人はまあそこそこでしたが、やはり脇役陣(小林棯恃・橋爪功・斎藤晴彦・田中邦衛ら)が厚みがあって楽しませてくれました。ラストシーンがいかにも甘ったるく、よくある「女性向映画」的で情け無かったですが、三田佳子が人と話す時に必ず相手の体を触って話す危ない奴だったり、斉藤由貴が何かと言うと妙な理屈をこねる偏屈さを持っていたりと、登場人物のエキセントリックなところなどいかにも森田映画で、『家族ゲーム』なんかに比べれば食い足らないものの、最近の日本映画としては合格点の部類でしょうか。

今回の木戸銭…600円