cinema eye

『ナッティ・プロフェッサー』

鑑賞日97/10/3(ビデオ)
 最近ヒット作が出ないエディ・マーフィーが、起死回生を狙って作ったコメディ。お得意のマシンガントークも出るし、1人で何役もこなすしで、近来になく獅子奮迅の働きぶりです。まあその割にはイマイチ笑えないのが残念ですけど。

 ストーリーは、180cm180kgという巨大な体と、気弱なハートを持つ生物学の大学教授が、DNAを組み替えて劇的に痩せてしまう薬を発明。自らその薬を飲んで別人に変身してドタバタ喜劇を巻き起こすという罪のないものです。『ジキル博士とハイド氏』をベースにしながら『マスク』のテイストを取り込んだ一種の二重人格ものということができます。見所は薬を飲んで変身した教授が、いきなり強気なプレーボーイに変わってしまうところ。従来エディの魅力とされた部分を、逆に魅力的だけど否定されてしまう人格として扱っているところがポイントです。

 しかし、エディが頑張っている割には、本当に大して笑えないんですよね。『マスク』ほど馬鹿馬鹿しさが徹底している訳でもないし、だからと言ってウェットでヒューマンなコメディになっているわけでもありません。変身の面白さを見せたいのか、デブでも自信を持って生きることが大切だと訴えたいのか、それともエディの芸を見せたいのか。多分どれも見せたいと欲張ったのでしょう。それがかえって作品を中途半端にしてしまったような感じです。演出の切れも悪いし、気の利いたセリフがあるわけでもないし、ストーリーに意外性があるわけではもちろんないし。一番面白かったのは、デブな家族の食卓風景。エディが一人で何役もこなしているところですが(『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』のマイケル・J・フォックスを思い出させるシーンです)、とにかくその下品さがおかしいです。どうせやるなら、このトーンで全てをまとめて欲しかったですね。

 まあ暇つぶしに見るくらいの価値はあります。でもそれ以上ではありません。

今回の木戸銭…900円