cinema eye

『のど自慢』

鑑賞日00/1/2(ビデオ)
 井筒和幸監督がNHKの「のど自慢」を舞台に様々な人間模様を描いたヒューマン・コメディ。ちょっと寅さん映画的エッセンスが入っていて、良くも悪くも、いかにも日本映画という感じです。

 それぞれの登場人物はお互い同じ町の人間というだけで、相互に関係はありません。同時進行的に別々の物語が進行していくスタイルです。主役は売れない演歌歌手(室井滋)。キャンペーンで訪れた故郷で行われる「のど自慢」に出てしまうゴタゴタが描かれます。彼女と同等の重みで描かれるのが、何をやってもダメな四十男(大友康平)のチャレンジ。その他にも女子高校生や老人、タクシードライバー、建設作業員など、さまざまな人が「のど自慢」にチャレンジし、それぞれの人生が描かれます。

 キャストは良くテレビドラマなどで見かける役者が多く、かなり2時間ドラマ的テイストです。テンポは悪くありませんが、切れが良いというほど演出が冴えているわけではありません。と言うか、敢えて野暮ったく撮っているのではないかとさえ感じます。それもこれも「のど自慢」という余りにも日本的な空間を通して、いかにも現代の普通の日本人を描こうとする試みのためではないかと思うからです。

 笑いあり涙ありの楽しいお気楽な映画ですが、劇場で高い料金を払って見るほどでもありません。ビデオ向きの作品だと思います。

 

今回の木戸銭…800円