cinema eye

『熱帯楽園倶楽部』

鑑賞日95/9/26(ビデオ)


 いま日本映画界で次々と話題作を発表している監督・滝田洋二郎&原案・脚本・一色伸幸コンビの『僕らはみんな生きている』に続く東南アジアシリーズ(笑)です。公開時は思ったほど話題にならず、興行的にも成功したとは言えないようですが、これが結構面白かったです。

 ツアーコンダクターの清水美砂が、タイで騙された詐欺師コンビ・風間杜夫&萩原聖人と組んで、やくざ相手に詐欺を企む、という日本版(というかタイ版というか)『スティング』です。P.ニューマンが風間杜夫でR.レッドフォードが萩原聖人ですね。本家『スティング』は大傑作なので、さすがにあの面白さには及びませんが、それでもかなり頑張っています。随所に登場する細かいだましのテクニックは、いちいち笑わせますし、タイ人とのハーフに扮した風間杜夫が、なかなか味のあるいい役で楽しませてくれます。ギャグありアクションありロマンスありの痛快娯楽活劇映画に仕上がっています。

 それとこの映画、タイに対してすごく視線が優しいんですよね。滝田・一色コンビはこの国をよっぽど気に入っているのでしょう。映画の中で清水美砂が「タイは肌が合う」と言いますが、まさにスタッフがそう思っているんだなと感じましたね。

 その清水美砂ですが、この映画といい『おこげ』『しこふんじゃった』と男に囲まれるマドンナ的な美味しい役どころが多いのですが、どうしてこう起用されるのでしょうね。アクが強くなくて、収まりやすい女優なのかもしれませんが、どうしても優等生的にこなしているだけに見えてしまいます。どの映画でも周囲の強烈な個性的キャラクターをを受けて演技するマドンナ役に過ぎないのが惜しいですね。特にこの映画では、もっと彼女がハイテンションで引っ張れば面白くなったと思うだけに残念です。

 総合的にはかなり楽しい映画です。滝田・一色コンビ独特の現代日本に対する皮肉な視線と毒は今回少々弱められていますが、そのぶん娯楽性が表に出ているので、損した感じはしないのではないでしょうか。

今回の木戸銭…1000円