cinema eye
鑑賞日97/6/13(ビデオ)
懐かしの『スパイ大作戦』の映画リメーク版。主演はトム・クルーズ。話題性いっぱいの『ミッション・インポッシブル』ですが、面白いことは面白いけど、所詮リメークというそれ以上ではありません。
現代のスパイものは、いにしえの時代と異なり、面白くするには辛い限界を抱え込んでいます。ひとつは東西冷戦が終わったこと。そしてもうひとつはコンピュータ時代になってしまったために、超人的なスパイと言えどもコンピュータの専門家の協力が不可欠なこと。
東西冷戦の終了は、わかりやすい対立のパラダイムを失ってしまいました。そのために、魅力ある敵を描くためには、その背景をいちいち説明しなければなりません。これは映画の躍動感をそぎます。テンポを悪くします。
またコンピュータの時代は、どんなシステムを破るにも、データを盗み出すにも、その専門家が必要です。しかし、洋の東西を問わずこの「専門家」は基本的に「おたく」系のイメージで、どうやっても女をたぶらかし、洒落た会話を楽しみ、いざとなったら格闘技で敵をぶちのめすタイプにはなり得ません。逆に主人公のヒーローと言えども、コンピュータの専門家にはなれないのです。その結果、ヒーローは頭の悪い体力バカに見えてしまう弊害を生みます。難しいシステムを破る専門家にフォローしてもらわなければ、なにもできないんだから。
『ミッション・インポッシブル』も、現代のスパイものの限界に打ちのめされています。過去の『スパイ大作戦』をパロディすることで、なんとか現代風に生き返らせようと努力しているのは認めますが、所詮くすぐりに過ぎません。楽しめるけど、それだけ。新たな発見はなかったリメーク版でした。
今回の木戸銭…1000円