cinema eye

『Love Letter』

鑑賞日96/1/13(ビデオ)
 去年の日本映画の各賞を受賞した青春映画。中山美穂&豊川悦司というトレンディドラマのような組み合わせですが、これはフジテレビが制作したということを考えれば無理はありません。ただそのイメージほどにはいい加減な作品ではなく、甘酸っぱい中学時代の恋愛をベースにした青春映画の佳作に仕上がっています。

 物語は中山美穂演ずる神戸の女性が、「藤井樹」という2年前に死んだ婚約者へ宛てて、中学時代に彼が過ごした小樽の住所に手紙を出すところから始まります。ちょっとしたいたずら心から、出したはずの手紙だったのに、実は小樽には彼と同姓同名の同級生の女性(中山美穂2役)がいて、手紙はその女性の「藤井樹」に届いてしまいます。そこから顔も知らぬ2人の思わぬ文通が始まることになります。

 ストーリーのメインは小樽の藤井樹によって綴られる、中学時代の2人の藤井樹(酒井美紀&柏原崇)のせつなく幼い恋愛を中心に進んでいきます。不器用に表現することすらできない中学時代の恋愛感情。小樽の町の中で淡々と描かれるひとつひとつのエピソードが、2人の純粋さを感じさせます。そして、その思い出全てが実はもういない人の話であるところが、また余計にせつないんですよ。ここで中学時代を演じる酒井美紀がまたいいんです。映画の主役はもちろん中山美穂なんですけど、この酒井美紀の方が より印象に残るくらいでして、特にセーラー服での可憐さ・清純さが抜群です。

 映画は思い出の中と現実の世界のエピソードを交互に描きながら、最後は神戸と小樽の中山美穂に、それぞれちょっと暖かい気持ちをもたらせて終わります。とっても叙情的でチャーミングな映画ですから、こういう純粋でせつない恋愛映画が好きな方にはお勧めです。僕は中学・高校時代を描いた日本映画って大好きなんで大いに気に入りました。

今回の木戸銭…1500円