cinema eye

『ラストソング』

鑑賞日95/7/18(ビデオ)
 すでに邦画としては古くなってきてしまった杉田監督の話題作だった『ラストソング』をようやくビデオで見ました。

 内容はご存じのように音楽業界を舞台にした恋と友情と夢の青春ストーリーです。いかにも九州的(武田鉄矢的?)な暑苦しさ・押しつけがましさ・人生訓垂れまくりのうざったさが、ともすれば鼻につくのですが、それを我慢しても楽しめるだけの魅力がある映画です。

 魅力のひとつはやはりモックンの存在感ですね。何をしても絵になる傑出した俳優ですね、彼は。良い意味でハリウッドのスター的な大根役者ぶりが、彼の強さです。大根でいい俳優こそ本当のスターだと僕は考えています。

 魅力のふたつめは、吉岡秀隆の繊細な演技ですね。彼の演ずる役柄は天才のきらめきと、それゆえのナイーブさを表現しなければならないので、生半可な若い役者でできないと思いますが、うまくこなしています。問題は、どうしても「純クン」が重なってしまうことです。

 みっつめの魅力は日本の自然と四季の美しさを描いた映像です。まるでディスカバー・ジャパンのキャンペーンのように、次々と美しくてエキセントリックな日本の映像が展開され、思わず旅に出たくなるようなロード・ムービーに仕上がっています。日本映画の可能性を示した映像美であると思います。

 トータルに見ると、いまひとつ脚本・演出が弱い気がしますし、キャスティングも少々甘いと思いますが、青春映画の佳作として記憶してもいい作品ですね。

今回の木戸銭…1100円