cinema eye

『河童』

鑑賞日95/9/16(ビデオ)
 米米クラブのカールスモーキー石井こと石井竜也が初監督したことで話題になった作品ですが、ようやくビデオで見ることができました。公開時に『ET』との類似性を指摘されていましたが、確かに『ET』がなかったら生まれた作品かどうか疑問です。しかし、それはそれとして作品単体で見れば、最近の日本映画としては良心的でしっかりと作られていると感じました。

 物語は、現代と戦後間もない昭和28年の40年の時の流れの中を前後しながら進みます。一人の少年と河童とおぼしき生命体の出会いを描きながら、父と子のつながりとは何かを主題として展開していきます。

 脚本はいまいち練り込み不足な感がします。もう少しこなれていてもいいと思いますが、少々セリフが生硬、ストーリーも強引。また俳優の演技も従来の日本映画の枠を越えるものではありません。陣内孝則も藤竜也も頑張ってはいますが、ちょっとオーバーでわざとらしいと思いました。

 しかし、4代に渡る父と子の伝承というテーマがあるだけに、全体としてはしっかりとした骨格の太さが感じられます。もっとも、SFXに力を入れすぎたせいか、そのあたりの描き込みもまた少々不足している気はしましたが。

 特筆すべきは、やはり低予算の中でよくぞここまでSFXのレベルを上げたという点ですね。スピルバーグ映画あたりに比べれば確かに劣りますが、日本映画としては画期的なほどきちんと河童が生き生きと動きます。デザイン的には、かなりエイリアンやETの影響を感じますが、それでもここまで頑張ったことは認めなくてはならないでしょう。

 初監督作品としては敢闘賞、というところでしょうか。SFXのみならず、風景の映像の美しさや、音楽の心地よさなど随所にいいところが見られるので次回作に一応期待したいと思います。

今回の木戸銭…800円