cinema eye

『ジュラシック・パーク』

鑑賞日93/12/14(劇場)
いまさらですが、ようやく今年の話題作『ジュラシック・パーク』を見てきました。スピルバーグが作った恐竜映画・驚異のSFX技術、と世間では喧伝されていましたが、なるほどそのSFX技術の高さには驚嘆します。しかし、この映画で感心したのは、その優れた技術が技術のための技術に終わっていないことでした。

 かつて同様にSFX技術を誇った映画に『T2』がありましたが、こちらははっきり言って「ここまでできるぞ、凄いだろう」という制作側の自信がちらついて、本来の映画以外の部分で話題をさらってしまった感が否めませんでしたが、この『ジュラシック・パーク』ではSFXはあくまでも映画の臨場感を高めるために使われていて、技術を ことさらに誇ろうという感じを受けませんでした。それだけスピルバーグには、映画それ自体に対する自信があったのでしょう。ま、確かに見ていて飽きない、面白い映画ではありました。さすがにスピルバーグ印です。

 で、この映画、パニック映画のジャンルに入ると思うのですが、面白くはありましたが、パニック映画として必ずしも傑作とまではいかなかった、という感想です。確かに迫真の恐竜たちの演技によってハラハラドキドキはしますが、すべてが予定調和の輪の中で収まっていて、そこから一歩も外に出てはいません。つまり、あらゆる展開が読めてしまうのです。

 恐竜たちは必ず野生化して人間を襲うだろうし、コンピュータは必ずいざという時には当てにならないし、裏切り者のSEは必ず恐竜に食べられるだろうし、ティラノに食べられるのは子どもではなく博士たちでもなく、きっと脇役顔の弁護士だろうし、1万ボルトの電流を流しても必ず子どもは助かるだろうし、社長は最後には必ず改心するだろうし。。。

 ご都合主義が必ずしも悪い映画になるとは思いませんが、ここまで予想通りだと、やはりパニック映画としては淋しいですね。同じ類の映画の傑作である『エイリアン』と比べてみればよくわかるのですが、明らかに『ジュラシック・パーク』はお子様向けであると言えます。

 それと例によってスピルバーグの悪い癖で、わかりやすくも低俗なメッセージが映画の中にまき散らされていますが、これもお子様向けと思えば腹も立ちません。とは言え、やはりもう少しメッセージするならオブラートに包んでできないものですかねぇ。正論をそのまま言われても良い大人が頷けるというものではありません。            

今回の木戸銭…1200円