cinema eye

『ジャッカル』

鑑賞日98/3/23(試写会)


 1973年の名作『ジャッカルの日』は、ド・ゴール大統領暗殺を企む“ジャッカル”の行動をドキュメンタリータッチに描いたサスペンスアクションですが、この『ジャッカル』は、その名作にインスパイアされて作られたそうです。見ればわかりますが、“ジャッカル”という名前しかわかっていない暗殺のプロが、ロシアのマフィアに依頼されてあるアメリカの大物を狙う、そのプロセスを丹念に描く展開は『ジャッカルの日』と同じです。タイトルを『ジャッカル2』としてもいいくらいです。

 主演のジャッカルにはブルース・ウィリス、彼を追うために刑務所から出てきたIRAの闘士マクランにリチャード・ギア。この2大スターの白熱のバトルは、まさに手に汗握るものがあります。ブルース・ウィリスは、さすがにアクションは貫禄十分。今回は冷酷な悪役ですが、今までのダイハード的つぶやきシロー的な演技とは全然違って凄みがあってハードボイルドしていて感心しました。対するリチャード・ギアも、かつての2枚目の軽いアンちゃんが、よくぞここまで渋く成長したな、というハリソン・フォードばりの熱演。さらにシドニー・ポワチエがCIAの副長官役で絡み、厚みを加えています。

 一見不可能に見える犯罪を着々と可能にしていくジャッカルの様子が丹念に描かれ、クライマックスに向かって計算された演出は、監督の手腕を評価していいでしょう。映像もキレイですし、モスクワ・ヘルシンキ・モントリオール・シカゴ・ワシントンと少しずつジャッカルがターゲットに近づいてくる時の、各都市でのロケも効果的に使われています。

 完璧に近い映画ですが、僕としては惜しいと思ったのはラスト。ちょっと類型的な終わり方に不満が残りました。途中までは見事なサスペンス映画なのですが、最後に単なるアクション映画になって終わってしまった、というところでしょうか。残念です。

今回の木戸銭…1500円