cinema eye

『ザ・インターネット』

鑑賞日971/13(ビデオ)
 サンドラ・ブロック主演のサスペンス。日本でも話題のインターネットを舞台にした作品ということで話題になりましたが、ヒットというほどには至らなかったのは、やはりまだまだ日本人にはこの映画で描かれている世界が現実感が薄いのか、それとも有名な役者が出ていないせいでしょうか。

 サスペンスなので、あまりストーリーに詳しく触れてしまうのは避けますが主人公のアンジェラは、コンピュータのプログラマー。親しい友人も少なく唯一の肉親の母親はアルツハイマーで入院中。アンジェラのことも覚えていない。アンジェラが休暇をとってカンクンへ旅行しようとしていた直前におかしなプログラムがフロッピーディスクで彼女の元に送られてきた。。。

 ということで、この先は映画を見てのお楽しみなのですが、全てをコンピュータのデータで管理された社会では、自分のアイデンティティもデジタルデータでしかない。したがってそのデータを誰かの管理下に置かれたら社会的に抹殺されることも容易にあり得る、という危機意識が、この映画のベースになっています。実際、映画の中のアンジェラは自分が何者であるかを証明するために戦い続けます。自分を社会的に喪失しながら、それでも自己回復のために戦い続けるという意味では『逃亡者』などを想起させますが、この映画の場合、本当の敵がネットワーク上にしかいないわけですから、より戦いは奇妙さと不気味さを増します。もっとも、映画の中では意外と肉体によるアクションが多く、僕にはちょっと中途半端な気もしました。もっとネットワークでの戦いに絞った方が面白かったのではないか、と思いますが、表現的に難しかったのかコンピュータに関心のない一般のファンを思ってのことでしょうか。

 アメリカ社会ではここまでコンピュータにによる個人情報の管理が進んでいるということなのでしょうし、ヨーロッパや日本でもすぐに同様のレベルにまで至ることでしょう。それはどういう社会なのか、特に鈍感な人には、この映画はそれなりの警鐘となることでしょう。映画はちょっと特殊なケースで、設定には難がありますが、見て損はない映画です。

今回の木戸銭…1300円