cinema eye

『(ハル)』

鑑賞日97/3/9(ビデオ)
 昨年公開されて(一部で)話題になった森田芳光監督の映画『(ハル)』をビデオで見ました。ご存知のようにパソコン通信で知り合った2人の男女のラブストーリーです。基本的な映画のパターンは『めぐり逢えたら』などと同じで、出会うまでのじれったいやり取りを見せる映画ですから、2人が会った時にはもうドラマは完結してしまいます。いかに2人が出会うまでを盛り上げるかが監督の腕の見せ所。ところが、この忙しい現代日本でそんなシチュエーションはなかなかあろうはずもなく、そこで電子メールでのやり取り、という設定をした妙味が生きてくるわけです。

 ただ、ストーリーの基本的な部分は、ほとんど青いバックに通信のテキストが流れるだけの画面でできていますから、この世界に慣れている人はともかく、それ以外の人には退屈な映画かも知れません。映画は映像で語ってこそナンボやろ、と思っている映画好きには邪道とすら思われる可能性もあります。ま、そのあたりのケレン味こそが、森田芳光独特の才気とも言えるわけですが。

 で、この映画、通信にはまっている人には、ようやく自分たちの世界をちゃんと描いてくれた(細かいところでリアリティに欠けるにせよ)映画だ、という思いが強くなりがちですし、逆に全然縁のない人には、そんなもんで本当に人間同士の交流ができるのか、なんて抵抗感を感じてしまうことでしょう。そういう色眼鏡を外してみれば、不器用な若者のちょっとせつない恋と成長の物語に過ぎないんですけどね。素直な青春恋愛ドラマとして、僕は結構好きな映画のタイプです。役者も深津絵理以外に有名な人はほとんど出ていませんが(後に内野聖陽は「ふたりっ子」でスターになりましたが)、その初々しさがまた良かったりして、ちょっと良い気持ちにさせてくれる映画でした。

今回の木戸銭…1200円